BOSS Slicer:アイデアがひらめく瞬間

BOSS Slicer:アイデアがひらめく瞬間

音をスライスして新しいリズム・パターンを作ることができるSlicer。この革新的なオリジナル・エフェクターについて解説します。

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BOSSのSlicerは、音楽のインスピレーションをより豊かにしてくれます。コンパクト・ペダルSL-2を初め、BOSSとRolandの多くの機種に内蔵されるこのエフェクトは、不思議な感覚を呼び起こしてくれるユニークなアイテムです。どんな音でも切り刻むことができ、ドライブ感のあるグルーヴとカラフルなリズム・テクスチャーが、ユーザーの創造力を即座に刺激します。Johnny Marr、Noel Gallagher、Omar Rodríguez-López、Jamie West-Oramなど、多くのギタリストが愛用するSlicerの秘密を覗いてみましょう。

スライサーとは?

Slicerは、トレモロから派生したエフェクトで、ミュージシャンの間で高い人気を誇るエフェクトの一つです。入力信号の振幅を可変レートで変調し、パルス状の音量調節を行うトレモロの登場は、1940年代にまで遡ります。当初は初期の電子ピアノで使用されていましたが、エレキ・ギターの人気が高まるにつれて、ギター・アンプの標準的なエフェクトとして知られるようになりました。

「トレモロのソウルフルで安定した躍動感に加えて、ステップ・シーケンスと精密なデジタル・クロッキングを使用することで、数々のリズム・パターンを生み出すことが可能になりました」

1990年代後半、BOSSとRolandが初めてSlicerを開発しました。トレモロのソウルフルで安定した躍動感に加えて、ステップ・シーケンスと精密なデジタル・クロッキングを使用することで、数々のリズム・パターンを生み出すことが可能になりました。これによりトレモロ本来の可能性が広がり、洗練されたパルス信号をコントロールすることで強烈なグルーヴとエネルギッシュなサウンドを作ることに成功しました。

1998年にRoland MC-505 GROOVEBOX、1999年にはBOSS GT-3 Guitar Processorに搭載されてからというもの、SlicerはRolandやBOSSの製品に欠かせない重要なエフェクターの一つとなりました。

トレモロのパターン

2008年にSL-20 Slicerペダルが発表されたことで、Slicerはさらなる進化を遂げます。BOSSのエンジニアはツイン・ペダル・シリーズのサイズを活かすことで、当時のコンパクト・ペダルでは搭載できなかった多彩な音色や機能を追加しました。

SL-20には、Slicerエフェクトの波形特性を直接コントロールできるATTACKノブとDUTYノブがあります。また、音色や音の動きを変化させるフィルター・エフェクトなど、50種類のパターンを内蔵。ステレオ出力を使ってパンニングや3D空間の処理を施せば、立体的なサウンドを作り出すことも可能になりました。MIDIクロックを通じて、SL-20をドラム・マシンや他の外部機器と同期すれば、印象的なテンポ・シンクのバイブスを様々なスタイルに吹き込むことができます。

「エレクトロニック・ミュージックとグルーヴ重視の音楽がメインストリームでブレイクした当時、SL-20は時代の一歩先を行く存在でした」

エレクトロニック・ミュージックとグルーヴ重視の音楽がメインストリームとなった当時、SL-20は時代の一歩先を行く存在でした。新しいサウンドを追求するミュージシャンからの熱狂的な支持も集めながらも、2018年には生産終了となりました。未だに人気を博すSL-20は、中古市場でも注目されているエフェクターです。

Slicer Pedalの復活

2022年後半に登場したSL-2 Slicerは、新世代のギタリストやクリエイティブなミュージシャンに、新たなグルーヴのアイデアをもたらしています。この機種では最新のDSPにより、SL-20の機能全てをコンパクト・ペダルに搭載することができました。

音質は48kHz/32-bitにアップグレード。88種類のパターンを選択でき、バラエティに富んだサウンドを生み出すことができます。また専用PCアプリBOSS Tone Studioを使用すれば、ライブラリに用意されているスライス・パターンも利用可能。本体に内蔵されたパターンをお気に入りのタイプに入れ替えることもできます。

「88種類のパターンを選択でき、バラエティに富んだサウンドを生み出すことができます」

SL-20の6つのステレオ出力モードは、SL-2でも使用することができます。さらにダイレクト・サウンドとスライサー・サウンドを異なるアンプやミキサーに送るための新しいモードも追加。エフェクト・サウンドのゲインを最大±12 dBまで可変できるため、エフェクトとダイレクトのバランス・コントロールが大幅に改善されています。

また、SL-2はドラム・マシンやDAWとの同期を可能にするTRS MIDI端子を備えています。ペダルのMIDI仕様はSL-20より進化し、ユーザーはCC(コントロール・チェンジ)によりタップ・テンポ、レベル、バイパスをコントロールすることができます。ハードウェア・コントロールも拡張され、外部フットスイッチやエクスプレッション・ペダルの接続に対応しています。

Slicer搭載の他機種 

近年、SlicerエフェクトはあらゆるBOSSやRoland製品に搭載され、機種によって調整できるパラメーターの範囲が異なっています。BOSS MD-500やMD-200のモジュレーション・ペダル、GT-1000やGT-1000COREといったマルチエフェクト・プロセッサー、そしてリアルタイムでループを切り刻むRC Loop StationなどでSlicerを使うことができます。Rolandシンセ、SPサンプラー、GROOVEBOX製品のMFXセクションにも搭載されています。

スタジオでの用途

ギターやあらゆる楽器を演奏する際に便利なSlicerですが、現代的なスタジオでの作業においても素晴らしい威力を発揮します。ボーカル、シンセサイザー、音源にエフェクトをかけることで、未知なるサウンドを生み出してくれるでしょう。

INSPIRATION ZONE

Slicerがいかにクールなペダルか、言葉では簡単に説明できません。そこで、SL-2ペダルをフィーチャーしたビデオをいくつか紹介します。それぞれのクリップでは、様々なプレーヤーがSlicerのクリエイティブな可能性について追求しています。

McRocklin  

唯一無二の速弾きギタリストでSL-2のパターン作成者でもあるMcRocklinがペダルの特性について紹介。さらにゲインや外部エフェクト、DAWを用いたペダルの使用方法についても解説しています。

Nick Reinhart  

カリフォルニア発のロックバンド、Tera MelosのNick ReinhartがSL-2を開封。シンセ・ギターのトーンとリバーブを駆使して、サウンド・デザインの奥深くまで追求します。

ペダル・コレクター Jorb  

あらゆるペダルを試奏するYoutuber、JorbがSlicerの歴史を紹介しながら、ビンテージのRoland JUNO-106アナログシンセサイザーと最新のTR-8S Rhythm Performerを使ってSL-2を演奏します。

Pedalboard of the Day  

トークなしの実践的な解説ビデオ。SL-2を使ってSY-1のシンセ・ギター・サウンドを加工し、クリーンとファジーのギター・トーンを加えています。

Cyberattack  

上級者向けのテクニックを紹介する「How to Be Advanced」シリーズ。今回はCyberattackがSL-2の強力なAttackとDutyコントロールについて詳しく解説します。Slicerを様々な用途で使うための5つのヒントをチェック。

Jim Bybee

BOSSとRolandのシニア・グローバル・コンテンツ・ライター。ギターから、編曲、プロデューサー、オーディオ・エンジニアまでこなす、機材オタク。