Serial GK Partners: FREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCH

Serial GK Partners: FREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCH

1998年、東京都・荒川区で産声を上げたFREEDOM CUSTOM GUITAR RESEARCH。創業者である深野真氏は専門学校ESPミュージカルアカデミーの前身「日本ギター製作学院」の第1期生であり、卒業後はKid's Guitar木戸宏氏のもとで12年間師事。木材の状態から完成に至るまでの全行程を下町の工房で行なっており、“100年間”という保証期間がその物作りにおける絶対的な自信を表している。フェンダーやギブソンといった深野氏が愛したブランドに敬意を表しながら、表現のさらなる自由度を約束するラインナップが充実。今回、シングルコイル・サウンドとハムバッカー・サウンドをで両立させ、あらゆる音楽にマッチする「RRS BRAVERY」にGK5-KITを組み込んだモデルが完成した。

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1977年、記念すべき世界初のギター・シンセRoland GR-500が発売。エポックメイキングな製品の登場により、先鋭的なプレイヤーたちによってギター表現は新たなステージへと突入することになる。その後、初のポリフォニック(和音)に対応、さらにシンセサイザー・ドライバーGK-2の登場によって自身のギターに搭載可能となるなど、正統な進化を遂げてきたギター・シンセ。2023年、新たに新方式のデジタル伝送を採用した「シリアルGK」の登場によりギターやベース本体に内蔵できるGK5-KITシリーズがラインナップ。音源コントロール用スイッチとボリューム、ノーマル・ギター出力機能の追加、7弦ギターへの対応など普遍性も追求。多様化する現代の音楽シーン、制作環境に対応するアイテムへとビルドアップしている。この記事では、GK5-KITシリーズを導入するギター/ベース・メーカーを取材。導入を決めた理由やGK5-KITシリーズが秘める可能性について話を伺った。

◾️ブランドが掲げるポリシー

ESPに入り、工場でバイトができるという話になったので当時の担任でありギター作りの師匠、木戸宏さんの舎弟的なノリで動いていました(笑)。ESPを卒業することになり、どうしてもアメリカで仕事がしたかったので半年ほどボストンに行ったんです。三味線を作るなら日本だろうっていう感覚で「エレキを作るならアメリカでしょ」って。何とかなりそうだったので荷物をまとめに帰国したんですけど、木戸さんがESPをやめて工房(Kid’s Guitar)を始めるという話を聞いて、すぐにアメリカ行きをやめて木戸さんのもとで働き始めました。1人、2人、3人…とスタッフも増え、リペアからウッドワークから塗装、最終的には営業まで任されて、28歳の時に「俺の道はもうこれだ」と。Kid’s Guitar で12年間働かせてもらって独立したのが98年。ギター作りは18歳からなので、かれこれ41〜42年になります。

設立時から塗装ブースも含めた工場設備を入れていましたが、当然すぐにはオリジナル・モデルを製造、販売することはできなくて、最初は修理で飯を食っていました。年間で2,600〜3,000本、すさまじい本数を修理していましたね。上は北海道から下は沖縄、個人客から楽器店さんまで、皆さんからご活用いただきました。場所が荒川の町屋で、秋葉原、御茶ノ水、池袋、新宿まで車で20〜30分で行ける便利な立地だったこともあって、都内の楽器屋さんの修理などもやらせていただいていました。2000年ぐらいに初のオリジナル・モデルのプロットを作り、試行錯誤しながらPepperシリーズとRRシリーズを2003年の楽器フェアに初めて出展したんです。

有限会社フリーダムカスタムギターリサーチ 深野真氏

うちの特徴のひとつに、特許を取ったArimizo & One Point Jointというネック・ジョイントがあります。日本の建築技法の蟻溝を取り入れたもので、ネックとボディをスライド・インで接合し、大きなブラス製のワッシャーにボルト1本で止める。ネジを締めたり緩めることで、楽器のキャラクターを自分で簡単に調整できるのが特徴です。まさか、エレキギターのジョイント方式で特許を取るなんて思いもしなかったですけどね(笑)。

Pepper、Hydra、RRシリーズがメーカーの中でも最初のオリジナルモデルで、その後、主体になっていくのはHydra、EZa、Shakerシリーズ。EZaやShakerはソリッドでArimizo & One Point Joint(日本の建築技法の蟻溝を取り入れ、ネックとボディをスライド・インで接合。大きなブラス製のワッシャーに、ボルト1本で止めるネック・ジョイント。特許取得)などの機能は持たず、スタンダードな方向でうちの物作りの本質的な良さを知ってもらいたいというコンセプトです。僕はギターに関してはレスポールとストラトで育ってきたので、そこが土台というか。また、ステンレスフレットを自社で開発しています。もともとステンレス・フレットが大嫌いだったんですよ。硬過ぎるから打つのが大変だし、道具もダメになるし、これだけ苦労してこの程度の音かと(笑)。ただ技術屋としてサビないのはめちゃラブなので、柔らかいステンレス・フレット(Eternal Fret)を開発しました。世界広しと言えど、自社でフレットまで開発して使う会社なんてないだろうと自負しています。

東京の気候はギター作りの環境としてハードなので、耐久性を保持するための工程を徹底しています。そのため、うちの保証期間は100年です。どうして耐久が持つものを作りたいかというと、ビンテージ・ギターにやられちゃった口というか(笑)。古くなって朽ちてもカッコいいって、どう表現すればいいんだと。ピカピカじゃないけれどカッコいい、さらに出る音も素晴らしいので、長く持つものを作らないとその入口にも立てない。かつ長く弾いて振動を与え続けないといけないので、徹底的に長く持てる楽器を作ろうと思っています。

徹底的に長く持てる楽器を作ろうと思っています

◾️GK5-KITの導入について

ギター・シンセとの関わりは長いです。Kid’s Guitarにいた頃、GK-2(1988年)が出た当初からそれ自体をギター内部に組み込むっていうことを仕事としてやっていました。GK5-KITが発売されましたけど、ギター・シンセ発売当時はディバイデッド・ピックアップと専用コントローラーをアウトボード化すること自体がめちゃくちゃ画期的だった。

GK-2 DIVIDED PICKUP

僕が一番多くギターにインストールしたのもGK-2で、当時は直接連絡をして質問したらきちんと対応していただいて、ローランドさんと直接お取り引きが始まったのもその頃です。プロ・ミュージシャンやハイエンド・アマの方からの要望でGKをインサートすることが多かったので、それに対して技術的なことをアドバイスいただいていました。

GK5-KITのリリースを聞いて最初に思ったのは、新しく出すということは要するにギター・シンセはまだ進化し続けていると。最初はピンと来なかったんですけど、ローランドさんに行かせていただいて試奏をした時に、真っ先に「えっ!?」と思ったのはデジタル化(デジタル・シリアルGK方式)したケーブルですよね。専用ケーブルではありますけど、この進化は最初わけがわからなかったですね。でも、すごいじゃんって。しかも、GK5-KITではピックアップの音とギター・シンセの音が切り替えできる。ケーブルの中に莫大な情報量が流れているってことですよね。もう驚きだった。

さっきも試していましたけど、弾き出したら止まらない(笑)。BOSS GM-800にはとりあえず100個のプリセットを含む150個のシーンが入っているけど、弾いているとどこかで必ず手が止まるじゃないですか。「和音だとこうなる」とか「この音だとこんなフレーズで」みたいなことが始まると、ひとつのプリセットで15分とか経っちゃう。100個まで行き着くのに何分かかるんだ!という世界が待っています。でも、それくらいハマる音がある。この多様性と幅の広さ、シンセ・サウンドを音楽として使っていくデバイスとしてギターが使える。

昔だとシンセ系、オルガン系、ピアノ系とのミクスチャーという立ち位置ですけど、GK5-KITはその垣根を取っ払ってくれるというか、昔からあったけれど今ここに来てこの進化を遂げる。気に入った音色は、僕はおっさんなので(笑)、ピアノとハープ。001に入っている音がVan Halenみたいだけど、パッと聴いた時、こんなに良いストリングスの音がギターで出せちゃうのかと。

RRS Bravery-11

GK5-KITの発表に合わせて『サウンドメッセ』で展示したのがRRS BRAVERYというモデルです。アウトデザインはRRシリーズで、マテリアルや作り方はフェンダーに寄せてパキッとワイルドな鳴りをします。マーシャル系のアンプでもフェンダー系のアンプでも両方いけちゃう。タップ・コントロール(ノブ)でシングルにしたりハムにしたり、絞って中間の音になったり、完全に絞るとフェンダー系のシングルと相当音の幅が広いので、パフォーマーはもちろんミュージック・クリエイターにも使っていただきたい一本ですね。

ケーブルの中に莫大な情報量が流れていることに驚きがあった

◾️GK5-KITが示す新たな可能性

他のモデルにGK5-KITを載せたいという要望があった場合は随時対応していく予定です。ホームページにはコンフィギュレーターという自動見積もりのシステムが入っていますが、今後はポチっとやるだけでGK5-KIT分のチャージアップがわかるシステムにしようと。

うちはいわゆるレディ・メイド(既製品)で作ることがほぼなくてオーダー屋なので、このRRS BRAVERYをベースに、カラーはオーシャン・ブルーでラッカー仕上げとか、ヘッド形状も6連タイプを選べたり、そういったこともオーダーできるのでぜひお問い合わせください。本当はShakerにもHydraシリーズにも載せたいし、6弦ベースにも載せたいですが…今はオーダーで1年ほどお時間をいただいているので少しずつですね。

新しいジャンルが生まれる可能性を持っている

エフェクターかと思いきやエフェクターではない感覚、それがギター・シンセ。エフェクターはエレキの音を電気的に変えていくデバイスですけど、ギター・シンセは違うもののような気がします。オルガンの音が出るとか、音程までいじれるエフェクターは昔からありますけど、そうではない音色の幅というか、音楽を作る上での視点やアプローチの仕方を変えられる。ギター・シンセを使って今の音楽をカバーしていく使い方があるかもしれないけど、どちらかと言うと「さぁ、次はどんな音楽を作ろう」と意欲に満ちた人がGK5-KITを搭載して、いつも弾いているギターで使ってもらえると驚きが生まれる気がしますね。音楽は作るけどギターは弾けないという人も、ギター・シンセを使えば新しいジャンルが生まれる可能性を持っていると思います。

(Writing & Photography Motomi Mizoguchi)

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