近年、ループ・ペダルはポップスからアカペラ、ヒップホップ、エクスペリメンタル・ミュージック、フォークまで、さまざまなジャンルで爆発的な人気を集めています。なかでもループ・ステーションは、声ひとつで楽曲制作からライブ・パフォーマンスまでこなせるツールとして、ソロ・アーティストの表現を大きく変えてきました。歌だけで曲を作り、ひとりでライブを成立させ、まるでバンドのようなサウンドをつくり出す。そんなことが、ループ・ペダルひとつで可能になります。「ループ・ペダルに興味はあるけど、何から始めればいいかわからない」「どんな機種がボーカルに向いているの?」といった疑問を持つ方に向けて、この記事ではループ・ペダルの基本から仕組み、ボーカリスト向けの使い方、そしておすすめのBOSS Loop Stationsまで、わかりやすく丁寧に解説していきます。
無限に広がる可能性
ソロ・パフォーマーにとって、ループ・ペダルはトラック制作、ライブ演奏、ソング・ライティングの可能性を一気に広げてくれる心強い味方です。特に楽器が弾けないという方にとっては、新しい曲作りの世界を切り拓く創造的なツールにもなります。中でも、ボーカリスト向けの優れたループ・ペダルは、声だけで何層にもトラックを重ねたり、エフェクトを加えたりすることで、まるでバンド全体が演奏しているかのようなサウンドを作り出すことができます。つまり、自分ひとりだけで音楽の世界を思いのままに広げられるのです。

ループ・ペダルの基本について
ループ・ペダルは、リアルタイムでオーディオの録音・重ね録り・再生ができるデバイスです。ボーカリストにとっては、ハーモニーを作ったり、声を使ったパーカッシブな音でビートを組み立てたり、声とルーパーだけでその場で曲全体を構築することもできます。使い方はシンプルです。マイクに向かって歌いながらペダルをオンにすると、そのセクションが録音されます。もう一度ペダルを踏めば、その音がループとして再生されます。それを繰り返していくだけです。
ループペダルの基本的な仕組み
- 録音する:手元のスイッチかフットスイッチを押して、フレーズや伴奏を歌い始めます。音楽的な区切りのタイミングで再度スイッチを押すと録音が終了します。
- 再生する:録音を止めると同時に、そのフレーズが自動的に再生され始めます。ループは繰り返し再生されるので、その上に自由に即興を重ねていくことができます。
- 重ねる(レイヤー):ここからがループ・ペダルの醍醐味です。最初のループが再生されている間に、もう一度フットスイッチを踏むと、その上に別の音やフレーズを重ね録りできます。もう一度スイッチを押せば、両方の音が同時に再生されるようになります。この作業を繰り返せば、声だけで新しいトラックをどんどん構築することができます。
フロアタイプと卓上タイプ
- フロア・タイプのルーパー: BOSS RC-500のように足で操作するタイプで、ギターを使うライブ・パフォーマンス中のハンズ・フリー操作に最適です。
- 卓上タイプのルーパー:BOSS RC-505mkIIのように手で操作するタイプで、ビートボクサーやプロデューサー、スタジオ使用に最適です。以下のAriana GrandeやSam Perryを参考にしてください。
ボーカリストの場合、ループ・ペダルの接続は次のようになります:
マイク → ループ・ペダル → スピーカー/PAシステム
ループ・ペダルは、各音楽ジャンルによってさまざまな使われ方をしているユニークな機材です。ビートボクサーとギタリストでは、ループ・ペダルで得られる効果は大きく異なります。これから、ボーカリスト向けのルーピングについて詳しく見ていきましょう。
ボーカリストのためのループ・ペダル活用術
ハーモニー
ボーカリストがループ・ペダルを使う方法の一つはハーモニーを重ねることです。これは、バック・シンガーが必要なソロ・アーティストにとって特に便利です。
- 複数のボーカル・ラインを重ねて、大きな合唱のようなサウンドやバック・シンガーのようなサウンドを作る。
- リアルタイムでハーモニーを試しながら、曲の印象を変えるような空気感のあるテクスチャを作る。
Ariana Grandeの動画シリーズでは、BOSS RC-505 Loop Stationを使って、まるで複数のシンガーが彼女を支えているような非常に幻想的なサウンドを生み出しています。
Ariana Grandeはループ・ペダルを自在に操るアーティストで、10年以上にわたりBOSSのループ・ステーションを使用しています。初期の写真では、BOSS RC-300を使っている彼女を見ることができます。最近では、RC-505のテーブル・トップ型ループ・ステーションを使用しています。パフォーマンスで見られるように、RC-505のレイアウトは、ライブ・パフォーマンスでのボーカル・ループにおいて非常に信頼性の高いシームレスな操作性を提供します。また、音質が非常に重要な状況でも対応できる高忠実度のオーディオを再生してくれます。
「RC-505mkIIのレイアウトは、ライブ・パフォーマンスでのボーカル・ループにおいて非常に信頼性の高いシームレスな操作性を提供します。」
リズムとビート
もう一つ、ボーカリストがルーパーを使う方法は、ビートやリズムを作り出すことです。以下の利点があります:
- ビートボクサーやパーカッシブなボーカル・サウンドを使ってリズムを作成する。
- リズム・ループとメロディーのレイヤーを組み合わせて、より豊かなサウンドを作る。
Sam Perryの「Brighter Moons」のパフォーマンスは、観客を立ち上がらせて踊らせましたが、そのパフォーマンスではBOSS RC-300を使用して、複数のボーカリストやミュージシャンと演奏しているかのような錯覚を作り出しました。もちろん、彼はビートボクサーのスタイルにより近いですが、これについては別の記事で詳しく触れましょう。Samは自分のループ・ステーションを「自分のセットアップの心臓部」と呼んでいます。
ライブ・パフォーマンス
BOSSのループ・ステーションは非常に使いやすく、その場でトラックを作成することができます。
- ステージ上でリアルタイムにトラックを作成する。
- ループを使って、さまざまなライブにユニークなアレンジを作る。
- ループを作成する行為自体をライブやパフォーマンスの一部にする。これが、Sam Perry、Tash Sultana、Ariana Grandeのようなルーパーのビデオが拡散される理由です。1人の人物が自分の声でループを作り出す様子は、見る者にとって驚くべきものです。
作曲および練習ツール
もちろん、ループ・ペダルを使ってトラックを作成したり、即興で曲を書いたりすることもできます。できることは以下の通りです:
- メロディーをループさせ、アレンジを試して曲のアイデアを発展させる。
- タイミングやレイヤリングを練習して音楽的なスキルを磨く。
- 自宅でトラックを作成し、他のミュージシャンを必要とせず作曲ツールとして活用する。
Ki5がリアルタイムでレイヤリングする様子を動画で見てみましょう。
ボーカリストにおすすめのループ・ペダル
これが絶対に正しい、という答えはありませんが、BOSSやRolandのループ・ペダルの中で、特に人気があり、ベストな選択肢とされているモデルが2つあります。ボーカリストにとって特におすすめなのは、BOSS RC-500 と BOSS RC-505mkII です。どちらもマイク用のXLR入力があり、ボーカリストの使用を念頭に設計されています。以下に、それぞれがボーカリストにとってベストかつ人気の理由を紹介します。
BOSS RC-500
- 適している用途:フロア型のコントロール、ライブ・パフォーマンス、マルチ・インストゥルメント使用
- 主な機能: ステレオ・トラック×2、16種類のドラム・キット、A/Bバリエーション付きの57種類のプリセット・リズム、ファンタム電源対応の内蔵マイク入力。さらに、リバース機能やループFX(リピート、スキャッター、シフト、ビニールフリック)も搭載し、エフェクトや音のバリエーションを追加可能。
- ボーカリストにとっての利点: ハンズフリー操作が可能なので、楽器を弾きながら歌うライブ・パフォーマンスに最適。ボーカリスト向けの設計がなされている。
「ハンズ・フリー操作により、RC-500は楽器を演奏しながら歌うライブ・シンガーに最適であり、ボーカリスト向けに設定されています」
BOSS RC-505mkII
- 適している用途:テーブル・トップでの使用、マイクを手に持つシンガー、スタジオ制作、ビートボクサー
- 主な機能: 5つのステレオ・トラック、高度なエフェクト、拡張されたコントロール・オプション、ファンタム電源対応のXLRマイク入力×2、ステレオ・ライン入力×2ペア、ステレオ・ライン出力×3ペア、200種類のリズム、16種類のドラム・キット
- ボーカリストにとっての利点:プロフェッショナルなボーカル・ルーパーの定番。ライブ・パフォーマンスでの操作がしやすいハンズ・オン・コントロール、マイクや他の楽器用の拡張接続端子、大量のメモリー・バンクとリズムのセレクションを搭載。ボーカリストにとって業界標準のルーパー。
ボーカリストがルーパーを使うべき理由
ルーパーは、ボーカリストにとって非常に便利なツールです。なぜなら、声だけでユニークで重厚なアレンジを作ることができるからです。ライブ中に即興で曲を作りながらパフォーマンスすることもできますし、使い始めるのもとても簡単です。
そのほかにも以下のような理由があります:
- 創造的な表現: ルーパーを使えば、声だけでさまざまなアイデアを試すことができ、エフェクトも加えることで、独自のサウンドを生み出せます。
- ライブパフォーマンス:ステージ上でその場で曲を作ることで、ライブの演出の一部として魅せることができます。
- 自己完結型: 声だけでフル・バンドのようなサウンドを作れるので、一人でパフォーマンスができます。
- スキルアップ: ルーパーを使うことで、タイミング、重ね録り、音楽的センスが鍛えられます。特にライブでは失敗したループが何度も繰り返されるため、集中力と正確さも養われます。
- 経済的: ルーパー・ペダルは価格帯も幅広く、他のミュージシャンを雇ったりDAWソフトに課金するよりずっと安価です。
「最初のループ=土台をしっかり作ること。それが後のすべてのレイヤーの鍵になります」
ルーパーを始めるためのコツ
以下は、ルーパーで良い音を出すためのクイックスタート・ガイドです:
- メトロノームを使う:良いループの鍵はタイミングです。ループ・ステーションにビートが内蔵されていない場合は、メトロノーム・アプリやクリック・トラックを活用してテンポをキープしましょう。
- タイミングを完璧に:録音の開始・停止は必ず1拍目で行いましょう。頭の中で「1, 2, 3, 4」とカウントして、1拍目でスイッチを押すと、ループがスムーズにつながります。
- 録音前に練習する:クリック・トラックを準備して、フレーズを何度か練習してからループをスタート。準備が100%整った状態でスイッチを踏みましょう。
- 最初のループを完璧に: 最初のループがズレていると、すべてが崩れてしまいます。そのミスは何度も戻ってきます。焦らずに最初のループを丁寧に作ってから、レイヤーを重ねましょう。
- とにかく練習あるのみ: ループが上手くなるには時間が必要です。Tash Sultana、Ed Sheeran、Ariana Grandeも同じです。機材を使いこなし、ライブで自然にループできるまで練習しましょう。

ボーカリストのための上級ルーパー・ペダル機能
ボーカリスト向けに用意された高度なルーパー・ペダルの機能はいくつかあります。すべては紹介しきれませんが、ここでその一部を簡単にご紹介します。
ボーカル・エフェクトで実験する
- リバーブとディレイ: ボーカル・ループに空間的な広がりや雰囲気を加えることができます。BOSS RC-505mkII や BOSS RC-202 には、サウンド実験に適したディレイとリバーブのエフェクトが搭載されています。
- ピッチシフトとハーモナイズ: ベースのようなボーカル・レイヤーや自動ハーモニーを作ることができます。RC-505mkII と RC-500 では、声を低くしたり高くしたりする機能が搭載されています。
- ディストーションとモジュレーション: 電子的なテクスチャやユニークなサウンドを加えることができます。RC-505mkII や RC-600 で使用可能です。
レイヤー重ねる
- ビルドアップ: シンプルなループから始めて、徐々に音を重ねることで、緊張感やドラマを演出できます。RC-505mkII が最適です。
- ドロップアウト: 特定のループやセクションをミュートすることで、曲中の変化やサビへの展開を演出できます。
- マルチトラック・ルーピング:RC-505mkII では、ループを複数のトラックに割り当てて、ヴァースやサビなど曲のセクションごとに切り替えることができます。
楽器やバックトラックとのルーピング
- RC-505mkII や RC-202 のMIDI接続を使えば、キーボードやドラム・マシンなど外部機器とボーカル・ループを同期させることが可能です。
- RC-500 や RC-505mkII では、あらかじめ作成したバック・トラックをトリガーして使用することもでき、ライブ・パフォーマンスに最適です。
DAWとの連携
- USB/MIDI を使って、ループ・ステーションをDAWと接続することで、スタジオ環境でのライブ・ルーピングが可能になります。RC-505mkII、RC-600、RC-500 はすべて USB/MIDI 接続に対応しています。
- ループをエクスポートして、音楽制作やライブ演奏用に保存し、ステージで再生できるように準備することもできます。

Over and Over: Hailey Knox
ソーシャルメディアで活躍するHailey Knoxが、自身の創作活動の核となるLOOP STATIONについて語ります。
ボーカリストのためのルーパー・ペダルに関するよくある質問
声だけでループステーションを使えますか?
はい。BOSS RC-500 と RC-505mkII にはボーカル・ルーピング用のマイク入力が内蔵されています。声だけで複雑なハーモニーやレイヤーを作ることができ、内蔵エフェクトを使えばフルトラックも構築できます!
追加機材は必要ですか?
マイクとスピーカー/PAシステム、またはアンプが必要です。RC-505mkII のように、外部のエフェクト・ペダルがなくてもボーカルを強化できる内蔵エフェクトを備えたループステーションもあります。要するに、マイクとアンプまたはPAスピーカーさえあればOK。スピーカーがない場合は、DAWやコンピューター・インターフェースに直接接続することも可能です。
ボーカリストには、フロア型と卓上型、どちらのルーパーが良いですか?
フロア型は床に置いて足で操作するタイプ。卓上型はテーブルやデスクに置いて手で操作するタイプです。
ギターなど他の楽器を使いながら足で操作したい場合は RC-500 のようなフロア型ルーパーが便利です。一方、RC-505mkII のような卓上型は、手での操作がしやすく、マイクだけを使ってライブ・パフォーマンスをするボーカリストに最適です。
「フロア型ルーパーはハンズ・フリー操作に最適で、RC-505mkII のような卓上型はライブでの手動コントロールに優れています」
クリエイティビティを解き放とう
ルーパー・ペダルは、あなたのパフォーマンスそのものとなり、創造力を引き出し、自分の声だけでボーカル作品を自在に組み立てる力を与えてくれます。演奏に没頭できる楽しさも大きな魅力のひとつです。BOSS RC-500 でルーピングを始めたい方にも、RC-505mkII で限界を押し広げたい方にも、きっとあなたに合ったループ・ステーションが見つかるはずです。
Loop Stationについて詳しく知りたい方はこちらにアクセスして、詳細な情報やヒントなどご覧ください。