1980年代。まだ子供だった私は、その存在を認識するずっと前からコーラス・サウンドが心の中に渦巻いていました。BOSSのCE-2 Chorusに出会うのは数年後のことですが、艶やかなコーラス・サウンドが耳に飛び込んできたのです。それは、携帯式のカセット・プレイヤーでTears for Fearsを聴いていた時のことでした。
キング・オブ・コンパクト・コーラス
当時、やや物議を醸したこのエフェクト効果は、筋骨隆々で長い髪をなびかせながら、大音量でソロを奏でるギタリストたちを支えました。しかし、私がライブを始めた1990年代、ある特定のシーンではこのペダルを卑下する傾向があったのも事実。パンクやグランジ、ハードコアのミュージシャンからすれば、コーラス・ペダルを持つこと自体が“ダサい”ことだったのです。
しかし、Nirvana、The Jesus Lizard、Killing Joke、The Cureなどはどうでしょう? 彼らは動きのあるコーラス・サウンドを取り入れることで、象徴的なサウンドを構築しました。私はこれらのバンドが大好きだったため、コーラス・ペダルを毛嫌いする集団から抜け出したのです。しかし、この波のようにうねるトーンを使いこなすために、私は途方もない道のりを歩むことになります。いずれにしても、サウンドに甘味な効果をもたらす理想のコーラス・ペダルを見つけることが目標でした。
運命的な出会い
運命に導かれるように、BOSSのCE-2が私を待っていました。私の人生に降って湧いたビンテージのDM-2 Delayのように、近所のビンテージ・ギター・ショップのガラス・ケースの下に、ボロボロになった古いベビー・ブルーの箱が鎮座していたのです。このCE-2には2つのツマミと銀色のネジが装備されており、数多の戦いを経験したような傷跡を持ち、まるで私にギターを接続するよう頼んでいるようでした。いざ鳴らしてみると、探し求めていた音がそこにありました。RATEを9時方向に設定し、DEPTHを12時方向から少し過ぎたところで、TSOL(True Sounds of Liberty)と南カリフォルニア・デス・ロックの領域に足を踏み入れたような感覚を味わいました。私の探求は、終わりを迎えたと思ったのです。
繊細で絶妙な働き
CE-2はどのような設定でも決して威圧的ではなく、芯のあるアルペジオを引き立てる絶妙な働きをします。まるで、高音域が生き生きとするようなイメージです。私は長年、この小さな青い相棒を“常時オン”にして、モノラルのサウンドにステレオ感を与えていました。しかし、Roland JC-120でその圧倒的な空間の広がりを体感した私は、もう1つ出力があればいいのにと常々思っていました。願い事が叶うまでは往々にして時間がかかるものですが、その時はやって来たのです。
“2000年代のブティック・ペダル・ブームを経ても尚、CE-2Wは至高のコーラスである”
2テイクで奏でるオーケストラ
2015年にイギリス・シェフィールドにあるToolmakers Studioで行われた、The Sub-Gentsのレコーディングまで話を先に進めます。そこではCE-2Wをエフェクト・ボードに固定。ブースでは2台のVictory Ampを用い、分厚い壁の様なギター・サウンドを素早くレコーディングする必要がありました。そこで私は、CE-2Wから両方のアンプへと直接信号を送り、ツマミを10時方向と2時方向にセットします。
ステレオ・サウンドにおいてより深いピッチ・モジュレーションとダークなキャラクターを持つ、私のお気に入りである新たなCE-1モードに切り替えました。すると、たちまち躍動的な音の壁を作ることに成功しました。ステレオで録音し、チャンネルをパンして、エフェクトがかかっていない素の音(ドライ音)が真ん中にくるようにスペースを空けておきます。たった2回のテイクで、頭の中に思い描いたサウンドを収録することができました。
“CE-2Wにループやサンプルを通すと、古びたカセット・テープを彷彿とさせる魔法のようなサウンドをシミュレートできる”
ステージのその先へ
このステレオ・セッティングをライブで再現するためには、大きなステージが必要です。しかし、モノラルでの使用しかできない時は、お気に入りのクラシックなCE-2セッティング(スタンダード・モード)に戻せるので、問題ありません。VIBRATOモードは、演奏に彩りを与え、聴く者の意識を惹きつけます。CE-2Wでサイケデリックな楽曲を演奏する時は、特定のフレーズをVIBRATOモードでサウンドを過激にうねらせて楽しんでいます。
ループやサンプリングをCE-2に通すことで、古びたカセット・テープを彷彿とさせる魔法のようなサウンドをシミュレートすることが可能です。楽しくて、触感が良くて、直感的で、しかも驚くほどシンプルなペダル。2000年代のブティック・ペダル・ブームを経ても尚、私にとってCE-2Wは至高のコーラスなのです。