Simon Neil tosses guitar to Richard Pratt, Credit - Carla Mundy

Behind the Board:Richard PrattとThe Prodigy、RAYE、Biffy Clyro

エフェクター愛好家がコンパクト・エフェクターを扱うための特別なヒントを教えてくれました。プロがどのようにして世界に通用するギターの音色を作り上げるのか、見ていきましょう。 Header photo by Carla Mundy, all other photos Richard Pratt

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イングランド北西部プレストン出身のRichard Prattは、その類まれな技術力をイギリスのトップ・アーティストたちに共有してきました。20年以上にわたりライブ音楽の最前線で活躍してきた彼は、RAYE、Biffy Clyro、Kasabian、Oceansize、Cat Burns、Sugababes、Stormzy、Daveといった数多くの一流アーティストたちと仕事をしています。最近では、UKグライム・アーティストのStormzyや、受賞歴のある英国人ラッパーDaveのショーを手掛けました。今年の夏は、The Prodigyとのツアーを予定しています。

ロック、ダンス、ラップ、ポップ——どんなジャンルのライブでも、BOSSのペダルはステージ上に欠かせません。自他ともに認めるペダルの愛好家Prattは、ツアーに出ていないときは、自宅で半田こてを手にコンパクト・エフェクターを制作しています。本格的なブティック・スタイルで、彼はGone Fishing Effectsというブランド名で小規模でありながら非常にコレクターズ・アイテムとなるペダルを製作しています。彼の手作りペダルには、KasabianのSergio PizzornoやBiffy ClyroのSimon Neilといったアーティスト向けの貴重なシグネチャー・モデルも含まれています。

Richard Pratt

ツアーを通じて

ギター技術者としてのキャリアはどのように始まりましたか?

90年代後半から2000年代前半にかけて、姉のバンドFi-Lo Radioが勢いを増していました。そこで私はツアーに同行して、バンを運転し、グッズ販売の仕事をすることにしました。Fi-Lo RadioはイギリスでのツアーでOceansizeのサポート、その後にはOceansizeと一緒にヨーロッパを回っています。また、Biffy Clyroのサポート・バンドを務めていたこともあり、その時私はBiffyに仕事をくれるよう懇願しました。そして願いが叶ったんです。

「姉のバンドFi-Lo Radioが勢いを増していました。そこで私はツアーに同行して、バンを運転し、グッズ販売の仕事をすることにしました」

Stormzyのペダルボード

Stormzyのベーシスト、Levi YardeのペダルボードにはどのBOSSが搭載されていますか?

Leviのペダルボードは全てBOSS製です。OC-5 Octave、BB-1X Bass Driver、BC-1X Bass Comp、NS-2 Noise Suppressor、LS-2 Line Selector、TU-3W Chromatic Tuner、MS-3 Multi Effects Switcherを使用しています。その構成はシンプルで、Leviはいつでも確実に動作することにはとても信頼しています。最近では、O2アリーナでの3夜連続公演でも使用されました。また、SugababesのベーシストであるArran Powellも、ほぼ同じペダルボードを使用しています。

Stormzy bassist Levi Yarde’s pedalboard
Stormzy bassist Levi Yarde’s pedalboard

「The Prodigyでは、Twin PedalシリーズのDD-20 Giga Delayを今でも使用しています。これはRobが何年にもわたって使い続けているペダルと同じものです」

The Prodigyの要となるペダル

The ProdigyのギタリストであるRob HollidayのペダルボードでもBOSSは使われていますか?

The Prodigyでは、Twin PedalシリーズのDD-20 Giga Delayを今でも使用しています。DD-20なしでは彼らの音楽は成り立ちません。これはRobが何年にもわたって使い続けているペダルと同じものですが、彼はこれが確実に動作することを気に入っています。このペダルには非常に長いディレイとオンボード・メモリが搭載されています。私が気に入っている点は、BPMを直接調整できるところです。The Prodigyでは、BPMは常に一定ですね。このペダルは決して故障しませんよ。

また、RobはBOSS NS-1X Noise Suppressorも使用しています。これも素晴らしいペダルです。本当に動作が速くて、ゲートが閉じる音さえ聞こえません。特にメタルコア、デスコア、ハードコア等で使われるチャグ(高速で細かい刻み)とも相性がよく、フィードバックはもちろん、電磁波干渉も全くありません。非常にシンプルなギター・リグです。

「BOSS NS-1X Noise SuppressorはCHUGの音とも相性がよく、フィードバックはもちろん、電磁波干渉も全くありません」

Dime itして、生まれるサウンド

スタジオでは、BOSSのペダルをどのように使用していますか?

スタジオの魅力は、音を思い切り上げられることです。Rich Costeyは「dime it」と表現していましたが、これはアンプやペダルの設定をすべて最大の10にして、どんな音が出るか試してみるという意味です。自宅やライブでは絶対にしないような音量で試すことで、驚くほど素晴らしいサウンドが生まれることがあります。

あなたのペダルボードにはどんなBOSS機材がありますか?  

私のスタジオにペダルボードはありませんが、ペダル棚があります。本棚にペダルを並べておいて、インスピレーションが湧いた時にすぐ手に取れるようにしているんです。BOSSのHM-2W Heavy Metalや30周年記念モデルのMetal Zone、それからDD-3以降のDigital Delayコンパクト・ペダルを全種類揃えています。

Digital Delayシリーズはそれぞれ微妙に違う特性を持っていますが、私のお気に入りはDD-6です。これはSimon Neilが特に気に入っていたモデルで、HOLD機能をよく使っていました。この機能を使って、曲と曲の間でギターを切り替える際の音をうまくカバーしていたんです。

Richard Pratt pedal workshop
Simon Neil's Metal Zone pedals

「スタジオの魅力は、音を思い切り上げられることです。自宅やライブでは絶対にしないような音量で試すことで、驚くほど素晴らしいサウンドが生まれることがあります」

お気に入りのペダル

あなたのお気に入りのBOSSペダルは何ですか?  

私が選ぶなら、Metal Zoneです。大きなアンプを通した時に得られるあの低音は他に代えがたいものがあります。その瞬間に、このペダルの真価が発揮されるんです。本当に素晴らしいです。Simon NeilはMarshallの1959 Plexiアンプを使ってMetal Zoneを鳴らしていますが、アンプの設定はあえて超クリーンにしてあります。

BOSSの名作を復活してほしいと思いますか?

TU-2 Chromatic Tunerの復活はぜひ見届けたいですね。Siがライトの見え方を気に入っているので、ステージではTU-2しか使っていないんです。TU-3がダメというわけではありませんが、これが私のツールボックス事情です。

「レコーディングでは、曲がライブよりも少しきれいに聴こえることがよくあります」

BOSSのペダルはこれで決まり

BOSSペダルのレコーディングで特に好きな瞬間はありますか? 

Nirvanaが初期の作品で使っていたDS-1 Distortionの音は本当に最高です。私の演奏のミスを何度もカバーしてくれています。Biffy Clyroがレコーディングした曲のほとんどにBOSSのペダルを使っています。アルバム『Puzzle』の「Who’s Got a Match? 」のようにディストーションが中くらいかかった音には、SD-1 Super OverDriveを使用しました。常にエフェクトは全開でかける必要はありません。レコーディングではライブよりも少しクリーンなサウンドになることがよくあります。

BOSSのペダルを3台のみ選ぶとしたら?

まずはTU-3 Chromatic Tuner。チューナーなしでは何もできません。それからMetal Zone、DD-6 Digital Delay。これで決まりです。Metal Zoneからはいろいろな音が出せます。DD-6もいろいろと遊べます。私はSHORT DELAY MODEをスラップバックの音に使うのが好きです。

Simon Neil's Metal Zones 3, Credit - Richard Pratt
Simon Neil's Metal Zone pedals, Photo by Richard Pratt

「好みのサウンドを選び、あまりいじりすぎないこと。できる限りシンプルに」

Simon Neil's Metal Zones, Credit - Richard Pratt
Simon Neil's Metal Zone pedals

ディレイを組み合わせた音作り

ゲイン・ペダルを使うときのコツはありますか?  

好みのサウンドを選び、あまりいじりすぎないこと。できるだけシンプルに保つことが大切です。アンプ・モデラー用に何千もの音をダウンロードする必要はあるのでしょうか。それよりも、BOSSペダルを実際のアンプに繋いで、その音を楽しんでみてはどうでしょう。結局、演奏次第でリグの音がクールに聞こえます。

ペダルやアンプ以外にも、音に影響を与える要素はたくさんあります。たとえば、ギター・ピックひとつで音が劇的に変わることがありますし、弦でも音を大きく変えることがあります。細かいディテールにこだわりすぎて、大局を見失ってしまうのは簡単です。細部にのめり込みすぎる人もいますが、一歩引いてこう自問してみてください。「この音はかっこいいだろうか?」と。

ディレイ・ペダルの使い方のヒントはありますか?

Mike Vennartから素晴らしいアドバイスをもらいました。デジタル・ディレイをセットアップして、リピート回数、レベル、ディレイの長さを適切に調整したら、それをアナログ・ディレイに繋げるんです。こうすることで、ディケイがちょっと乱れた、でもとてもクールなサウンドが得られます。つまり、デジタルからアナログへのルートを試してみることです。この方法で得られる音は驚くほど素晴らしいものがありますよ。これがMikeの秘密兵器なんです。

「思い切り楽しんで、大胆にリバーブを使ってください。大きくて力強いステートメントを作るんです」

Mistakes, Myths, and Views

リバーブ・ペダルの使い方に関するヒントはありますか?

リバーブはライブで使うのが少し難しいエフェクトです。大きな会場で演奏する場合、通常は自然なリバーブが十分にあります。それでも使いたいなら、思い切り楽しんで、大胆に使ってみるのが良いと思います。大きくて力強いステートメントを作ることが、とてもクールだと思いますね。特に、リバーブとファズを組み合わせるのが大好きです。

ペダルボードに関して、よくある誤った解釈などはありますか?

トゥルー・バイパスが必ずしも最良の選択とは限りません。場合によっては適していますが、そうでない場合もあります。また、スルー・ホールの半田付けが表面に実装されているPCB設計より優れているという誤解もあります。私の意見では、実際に聞こえる音には全く影響しません。それどころか、表面実装の方が部品の許容範囲が狭いため、一貫性が高いと言えるでしょう。

Richard Pratt and Levi Yarde
Screenshot

「年を取ったら、自分の作業小屋でエフェクト・ペダルを作り続けることが夢です」

Richard Pratt making pedals, Credit - Neil Bedford

Gone Fishing

現在のエフェクト・ペダル市場について、全体的な意見を教えてください。

次のペダルを出したときにお知らせしますよ。Biffy Clyroのペダルをリリースするたびに、約3分で完売してしまいます。文字通り、需要に追いつけないんです。年を取ったら、自分の作業小屋でエフェクト・ペダルを作り続けるのが夢ですね。

Rod Brakes

BOSSのブランド・コミュニケーションおよびコンテンツ企画担当。過去にはGuitar WorldやMusic Radar、Total Guitarを始めとする数々の音楽メディアでの執筆経験があり、アーティストや音楽業界、機材に関する幅広い知識を持つ。彼自身も生粋のミュージャンである。