BOSSは、1976年にCE-1 Chorus Ensembleを発表して以来、エフェクト・ペダルの世界を開拓してきました。中でも最も親しまれているのは、1977年に登場したコンパクト・ペダルのデザインでしょう。そのため、BOSSペダルはスタジオやステージでカラフルかつ象徴的な存在であり続けています。BOSSペダルは一般的にギタリストと結び付けられることが多いですが、その高音質、信頼性、スペックの高さ、バリエーション、使いやすさ、そして常に安定したパフォーマンスは、キーボーディストにとっても大きな魅力です。BOSSペダルが何十年も続いている理由がそこにあります。
創造力と表現力
ステージでキーボードを弾くときやスタジオで演奏するとき、バンドで練習するとき、実験的にサウンドを模索するときなど、BOSSのペダルはあなたの演奏を実現するカギとなります。
言い換えれば、範囲が広いと表現できるでしょう。ロータリー・スピーカーのシミュレート、リバーブ、ディレイ、ディストーション、ありとあらゆるモジュレーションにLoop Stationまで、全てを網羅することができます。
この記事では3つのカテゴリーに分けて、BOSSのペダルがどのようにキーボード演奏に新たな創造と表現をもたらすのかを紹介します。
「ステージでキーボードを弾くときやスタジオで演奏するとき、バンドで練習するとき、実験的にサウンドを模索するときなど、BOSSのペダルはあなたの演奏を実現するカギとなります」
スピンの世界へ:ロータリー・エフェクト
オルガンやギター、あるいはボーカルで、どこか神秘的で揺らめくような効果音を耳にしたことがあるかもしれません。それはモジュレーション系のエフェクトによるものですが、フランジャーでもフェイザーでもトレモロでもありません。あなたが耳にしたのは「ロータリー」、つまり回転するような揺らぎのエフェクトです。その甘く広がりのあるサウンドを、BOSSの最新コンパクト・ペダル、RT-2 Rotary Ensembleなら思いのままに操ることができます。
ロータリー・エフェクトの起源は、1930年代後半にDonald Leslieがオルガンの音質向上のために開発した「Leslieスピーカー」にあります。Leslieはアナログ回路だけでなく、物理的なメカニズムに依存して音を作り出すのが特徴です。つまり、Leslieはスピーカーそのものが回転する構造を持ち、このスピン動作によってピッチ(ドップラー効果)や音量の揺れが生まれ、独特のロータリー・サウンドが生まれます。
最も有名なモデルであるLeslie 122には、低域用のウーファー・ローターと高域用のホーン・ローターという、独立して回転する2つの部分が搭載されていました。当初はオルガンとの組み合わせを想定して作られましたが、熟練のプレイヤーたちはスピード・コントロールを巧みに操り、色彩豊かで奥行きのあるダイナミックな演奏効果を生み出していました。
ビンテージ・トーンを求めている人も、モダンなサウンドを探している人も、RT-2は憧れのLeslieのサウンドを1台のコンパクト・ペダルに凝縮しています。キーボードをこのペダルに通せば、広がりのあるステレオ感と渦巻くような温かみを伴った、さまざまなワイルドで魅力的なモジュレーション・サウンドが得られます。さらに、ドライブ、ディレイ、リバーブなどのペダルと組み合わせれば、サウンドを一段上の次元へ引き上げることができます。
「キーボードをRT-2に通すことで、あらゆる種類の驚くべきモジュレーション・サウンドが得られます」
雲の上へ:リバーブ・エフェクト
多くの人が、キーボード(特にシンセサイザー)と組み合わせるエフェクトとして最初に思い浮かべるのは、リバーブでしょう。音に空間的な広がりを与え、より自然に感じさせてくれます。リバーブは、ほとんどあらゆる音を魅力的にしてくれます。さらに創造的に使えば、まったく新しいサウンド・デザインの世界を切り拓くこともできます。
BOSSのリバーブ・ユニットの探索は、コンパクトながら豊かな空間を生み出すRV-6から始めるのがおすすめです。シンプルでありながら洗練された設計で、HallやPlateなど定番のアルゴリズムから、Shimmer、Dynamic、+Delay といった現代的で贅沢なモードまで、8つの高品位なサウンド・モードを搭載しています。
より自由なサウンド表現を求めるなら、12のモードを備えたRV-200へのステップ・アップがおすすめです。たとえば、豊かなリバーブとアルペジオのような動きを融合させたArpverbなど、想像を超えるようなエフェクトも楽しめます。
よりハイグレードなリバーブを試したければ、BOSSの中で最高のリバーブ・ペダル、RV-500を手にとってみてください。スタジオ・クオリティの32ビットAD/DA変換と32ビット/96kHz浮動小数点処理により、驚くほど美しいサウンドを鳴らすことができます。その内部には十分な処理能力があり、12モード・21種類のリバーブ・タイプを搭載。さらに詳細な編集が可能で、モジュレーション付きの独立したデジタル・ディレイも内蔵しています。
もちろん、BOSSのリバーブ3機種すべてが広がりのあるステレオ信号経路に対応しています。
「リバーブは、ほとんどあらゆる音を魅力的にしてくれます。さらに創造的に使えば、まったく新しいサウンドデザインの世界を切り拓くこともできます」
エコー・ロケーション:ディレイ・エフェクト
リバーブと並んで、ディレイも欠かせない定番エフェクトのひとつです。リバーブが濃密で霧のような効果を持つのに対し、ディレイにはデジタルとアナログの両方にさまざまな種類があります。そして、どのタイプもキーボードとの相性は抜群です。
BOSSディレイの世界を探るなら、まずはDD-8から始めましょう。デジタル・ディレイの系譜の最新モデルで、クラシックなアナログ・ディレイやテープ・エコーのシミュレート・サウンドから、ピッチシフトのかかったシマーやマシンガンのようなGLTといった最新アルゴリズムまで、あらゆるディレイを試すことができます。パンニング・モードを使えば、ピンポン・ディレイがステレオ空間を満たすような効果も楽しめます。
もうひとつの優れたコンパクト・モデルが、タップ・テンポ機能を搭載したDD-3T。これは名機DD-3 Digital Delayにタップ・テンポが追加されたモデルです。もし80年代的なデジタル・サウンドに惹かれるなら、新たにラインナップに加わったSDE-3 Dual Digital Delayも必見です。これは、先駆的なラック機SDE-3000 Digital Delayに着想を得ています。さらに細かくコントロールしたいなら、DD-200やDD-500のような上位モデルが、スタジオ・レベルのパワーをペダルの形で提供してくれます。
アナログ・ディレイは近年、再び注目を集めています。もし、電子ピアノに加えるエフェクトのようなビンテージの雰囲気を求めているなら、DM-2W Delayがおすすめです。これは、伝説的なDM-2W Delayを、BBDを使用した完全アナログ回路で再現したWaza Craftモデルです。
そして究極のアナログ・ディレイを求めるなら、DM-101 Delay Machineは憧れの1台となるでしょう。これは、8つのBBDしたアナログ回路をスマートなCPU制御で動かすという贅沢な仕様になっています。さらにRE-202はダブ・サウンドの名機、RE-201 Space Echoをモダンなデジタル・ペダルとして蘇らせたモデルです。
「RE-202はダブ・サウンドの名機、RE-201 Space Echoをモダンなデジタル・ペダルとして蘇らせたモデルです」
濃厚かつ豊かに:モジュレーション・エフェクト
BOSSがこの壮大なエフェクトの物語をスタートさせたのは、モジュレーション・ペダルでした。つまり、初代CE-1 Chorus Ensembleの存在を思えば、BOSSがモジュレーション系エフェクトで他を圧倒するのも当然です。
音を厚く豊かにし、ステレオ感を広げるコーラスは、モジュレーション・エフェクトの入り口として最適です。本来のヴィンテージなBOSSコーラスは非常に高価ですが、Waza Craft CE-2W Chorusは1970年代後半から80年代初頭のアナログCE-2 Chorusを忠実に再現しています。CE-1のコーラスとビブラート・サウンドもスイッチで切り替えられる仕様になっています。
より柔軟なコーラス・ペダルを求めるなら、CE-5 Chorus Ensembleがおすすめです。モダンな定番モデルで、CE-1の音のキャラクターを受け継ぎつつ、独立したハイカット/ローカット・フィルターでサウンドの幅を広げています。
フランジャーもまた、クラシックなモジュレーション・エフェクトのひとつです。2002年にBOSSがリリースしたBF-3 Flangerは、フランジャー・エフェクトの新たな基準となりました。名前の通りのシンプルなFlangerのペダルですが、今もなお愛される定番で、厚みのあるうねるようなステレオ・テクスチャーを提供するほか、Slicer風のリズミカルなカッティング効果も搭載し、創造力をさらに刺激してくれます。
そのSlicerに関連して言えば、ネオ・サイケデリックやダンス・ミュージック系のサウンドを手がけるなら、アンプリチュード・モジュレーション(振幅変調)系エフェクトは欠かせません。SL-2 Slicerはシグナルをリズミカルに切り刻み、クラシックなトレモロからゲートのようなスライス効果、ピッチシフト、3Dステレオ・モーションまで、幅広いサウンドを生み出します。
「音に厚みを加え、ステレオ感を広げるコーラスは、モジュレーション・エフェクトを始めるにはぴったりの選択です」
限界までドライブ:ディストーション・エフェクト
ディストーション系のエフェクト、オーバードライブといえばギタリスト向けのものと思われがちですが、キーボーディストにとっても十分魅力的なエフェクトです。
まず試すべきは、オーバードライブ・ペダルです。真空管アンプを限界までドライブさせたサウンドを再現するオーバードライブは、シグナルがクリップすることで生まれるスリルや興奮を味わわせてくれますが、歪みすぎて手に負えなくなることはありません。
SD-1 Super Overdriveは、1977年に登場した伝説的なOD-1 Over Drive(BOSS初期のコンパクト・ペダル3機種のうちのひとつ)の回路を基にしています。トーン・コントロールに加え、中域の存在感と引き締まった低域のレスポンスによって、より柔軟な音作りが可能です。オルガン、シンセ・リード、さらにはRoland TB-303 Bass Lineなど、あらゆるキーボード・サウンドにマッチします。
さらに一段階上を目指すなら、Waza Craft SD-1W Super Overdriveがおすすめ。クラシックなSD-1のサウンドを忠実に再現しつつ、CUSTOM MODEでは音作りの自由度が高く、こだわる音職人たちに愛されています。
「真空管アンプを限界までドライブさせたサウンドを再現するオーバードライブは、危うさと興奮をもたらしてくれるエフェクトです」
フレーズを繰り返そう:Loop Station
ここまで紹介してきたBOSSのエフェクターは、音に何らかの彩りを加えるものでした。一方でLoop Stationは、フレーズやオーディオの断片を録音して繰り返す装置です。練習からDAWを使わないジャム演奏、ひとりでのライブ・パフォーマンスまで、用途は多彩で非常にパワフルです。
BOSS Loop Stationの最上位モデルはRC-600。6つのステレオ・フレーズ・トラック、自由にアサインできる9つのフットスイッチ、3種類のペダルモード、さらに多彩な内蔵エフェクトセクションを備え、リアルタイムで音楽を次々と作り出せます。
6チャンネルは多すぎる、という場合は、2トラック仕様のRC-500 Loop Stationが最適です。直感的な操作でリアルタイムに曲を構築できます。リズム・トラックで作曲や練習をサポートしたり、時間をキープしたりも可能。13時間分の録音ができ、99個のフレーズ・メモリーも搭載されているので、手放せないクリエイティブな相棒になるはずです。
あのアイコニックなBOSSのコンパクト・エフェクターの見た目を備えたRC-5 Loop Stationは、コンパクトな筐体に強力なループ機能を詰め込んだモデルです。録音時間は最大13時間。7種類のドラム・キットと、A/Bバリエーション付きの57のプリセット・リズム、さらに99個のフレーズ・メモリーも内蔵。逆再生機能も搭載されており、ユニークなテクスチャーも作り出せます。
キーボードで音楽を手で触って楽しみたいプレイヤーには、RC-505mkIIがおすすめです。テーブルトップ型の操作レイアウトで直感的に扱え、豊富な機能が指先で操れる設計です。アイデアを驚くようなライブ・ループへと昇華させるための、まさに理想的なツールです。
「Loop Stationは非常に多用途でパワフルなツールです。練習、DAWを使わないジャム、ひとりでのライブパフォーマンスなど、活用の幅は無限です」
世界を巡る旅へ
まだハードウェア・エフェクト・ペダルの魅力を知らないなら、目の前にごちそうがあるのに味わっていないのと同じです。YouTubeのインフルエンサーたちがシンセ、オルガン、電子ピアノにペダルを載せているのは、見た目がクールだという理由だけではありません。
手の届くところにコントロールがあることで、リアルタイムで操作・演奏でき、まるで楽器の一部のように感じられるのです。そして「ギタリストが足で踏むためのものだから」といって、手で操作してはいけない理由はありません。BOSSのペダルはシンプルで直感的な設計なので、指での操作にもぴったりです。
「ギタリスト向けに足で操作するよう設計されていても、手で操作してはいけない理由はありません」