ディレイ・ペダルのユニークな使い方5選

ディレイ・ペダルのユニークな使い方5選

数あるギター用エフェクトの中でも、ディレイほど様々な方法で使われ、ギター・サウンドに影響を与えてきたものは多くありません。この記事では、ディレイ・ペダルを最大限に活用する秘訣をいくつかご紹介します。

1 min read
Start

数あるギター用エフェクトの中でも、ディレイほど様々な方法で使われ、ギター・サウンドに影響を与えたものは多くありません。ロカビリーやカントリーでよく聞かれるスラップバックから、80年代のギター・ソロで頻繁に使われたリズミカルなエコー、ポスト・ロックにおける幻想的なサウンド・スケープなど、ディレイは時代やジャンルを特徴づける要素の1つとなっています。RolandとBOSSは黎明期からその普及に大きな役割を果たしており、1974年にRoland Space Echo をリリースし、1978年にはBOSS初のペダル型ディレイ・エフェクターとなるDM-1 Delay Machineを発売。現在もアナログ・タイプからデジタル・タイプまで、あらゆるミュージシャンの希望に応えるラインナップを取り揃えています。

ディレイはどう作用しているのか

ディレイの原理は非常にシンプルです。ギターの信号がペダルを通過するとき、決まった間隔と減衰率でその信号を何度も繰り返します。

繰り返す間隔の設定によって、エフェクトの効果が劇的に変わります。短く設定すればスラップバック・ディレイと呼ばれる、リバーブに近いエコー・サウンドを作ります。反対に長く設定すると、おぼろげで幻想的なサウンドを生み出します。

ディレイを効果的に用いたアーティスト 

ディレイは現代の音楽ジャンルを特徴づけるエフェクトであり、多くのミュージシャンや楽曲のサウンドを形作っています。Chet Atkinsの”Blue Ocean Echo”やU2の”Where The Streets Have No Name”を聴けば分かる通り、その活用法は無限大です。

Eddie Van Halen ”Cathedral”の弾むようなうねりや、David Bowieのアルバム”Let’s Dance”でNile Rodgersが繰り出すハードな八分刻みのパルス、Eric Johnson ”Cliffs of Dover”から聴こえるクリーミーなエコーなど、ディレイの使い方に決まりはないのです。

ディレイの種類

テープ・エコー

ディレイと一口に言ってもその構造や機能は多岐に渡り、様々なバリエーションが存在します。テープ・エコーは文字通り、テープをループ走行させてギター・サウンドを録音し、素早くダビングして再生することでエコーの効果を作り出します。

テープ・エコーで調整できるパラメーターは多くはなく活用法も限られていますが、その独特のビンテージ・サウンドは60年代のロックやポップ・サウンドの象徴になっています。RE-2、RE-202、そしてDDシリーズは、そのクラシックなトーンを再現する機能を搭載しています。

アナログ・ディレイ

もう1つのクラシックなディレイとして、アナログ・ディレイがあります。テープ・エコーに代わるコンパクトで信頼性の高いディレイとして登場したアナログ・ディレイは、BBD素子という電子部品を用いて、複数のコンデンサの間で信号を受け渡すことで音を遅延させています。

テープ・エコー同様に操作できるパラメーターは限られており、正確なコントロールも困難ですが、その温かみのある独特のトーンが好まれ、今でもDM-2Wのようにアナログ・ディレイは普及しています。

「タップ・テンポ、タップ・ディビジョン、正確なプレイバックといったデジタル・ディレイ特有の機能は、リアルタイム・パフォーマンスに最適です」

デジタル・ディレイ

現代的な進化を果たしたデジタル制御によってテープ・エコーやアナログ・ディレイよりはるかに精密な設定を可能にしています。従来のディレイよりミリ秒単位でより短く、より長くインターバルを設定することができるため、より短いエコーも、より長いループも実現できます。

DD-8やDD-500が搭載しているタップ・テンポ、タップした間隔を4分音符として異なる音価でディレイ・タイムを設定できるタップ・ディビジョン、そして設定したディレイ・タイムの正確なプレイバック。これらデジタル・ディレイならではの機能はリアルタイム・パフォーマンスに適しており、他のミュージシャンと一緒に演奏するとき、その都度BPMに合わせてディレイ・タイムを調整することができます。また、デジタル・ディレイはアナログ・ディレイとは異なり、リピート音が繰り返されるとき高音域を損なうことなく音量のみが下がるという特徴もあります。

5つのディレイ活用法

ビンテージ・サウンドを再現するスラップバック

スラップバックは、ディレイのクラシックな活用法の1つです。ギター音を厚くするとともに、短いリバーブをかけたような空気感をサウンドに付与します。

スラップバックのトーンを得るには、原音の直後に鳴るような短いディレイ・タイムを設定します。フィードバック音は小さく設定し、エコーが何度も繰り返されるのではなく、素早く残響がかかるようにします。これで、ビンテージ・サウンドの完成です。

「ギター音を厚くするとともに、短いリバーブをかけたような空気感をサウンドに付与します。」

リバース・ディレイ

音を反転させて特徴的なうねりを生み出すリバース・ディレイは、アンビエントな音空間を作りたいときに最適な手法です。逆回転した音がギター本来のサウンドから切り離され、幻想的なリバーブを生み出します。ロング・ディレイは自身の演奏とフィードバック音がぶつかってしまうことがありますが、リバース・ディレイはそのサウンドが原音から大きく変化するため、自由な演奏ができるのも特長です。

未来的なサウンドを生み出すオクターブ・ディレイ

繰り返す度にオクターブ上の音を重ねていくことで荘厳かつ煌びやかなサウンドを生み出すオクターブ・ディレイは、シマーとも呼ばれ、ここ10年間で大きく人気を得てマスロックやポスト・ロックなどのジャンルを特徴づけるものとなっています。

この用法は、単純なコード弾きやトレモロ・ピッキングを壮大なサウンド・スケープへと変化させます。リバース・ディレイと同様、この使い方では細かく数値を設定しなくても、リバーブのような厳かな背景音がギター・プレイに存在感と個性を与えます。

「オクターブ・ディレイは、繰り返す度にオクターブ上の音を重ねていくことで荘厳かつ煌びやかなサウンドを生み出します」

演奏中にペダルを音楽的にコントロールする

ディレイ・ペダルは、それ単体でも音楽的な演奏が可能なことも覚えておきましょう。演奏中にフィードバックとタイムコントロールを逆方向に動かすことで、ワイルドな効果を生み出します。タイムコントロールでリピート音のピッチを自在に操り、音を急降下/急上昇させることもできます。発振を避けるため、フィードバックのコントロールには注意してください。

Play Video

ディレイを使ってグリッチ・サウンドを生み出す 

ユニークな使い方としてディレイで音を刻むことができ、Tera MelosのNick Reinhartなど曲中で効果的に用いているプロ・ギタリストもいます。DD-8のGLTモードのように専用の機能が搭載されているものを使うか、あるいはディレイ・タイムを短く、フィードバックを高くすることで、同じ効果を得ることができますが、この方法は発振が起きやすいため、注意して試してみてください。

「ディレイはピッチを獣のように激しく揺らし、この世のものとは思えない音に変貌させることもできます」

便利な相棒として

ディレイの真価はその汎用性であり、ペダルボードの中で最もギタリストの想像力を刺激するツールです。サウンドにアクセントを加えて重みと存在感を付与することも、ピッチを激しく揺らしてこの世のものとは思えないサウンドに変貌させることもできます。このダイナミックなエフェクトを、ぜひ使いこなしましょう。

Joe Branton

JoeはポッドキャストGuitar NerdsのMCを務め、10年間に渡って毎週放送を続けてる世界で最も配信を行っているギタリストの一人です。