ディストーションは世界で最も人気のエフェクトの1つで、BOSSはこのカテゴリーにおいて様々なペダルを世に送り出しています。シンプル、信頼性、安定性を兼ね備えるDS-1の音色は、1978年のデビュー以来、世界中のプレイヤーに愛され、彼らのサウンドを支えてきました。伝説的なBOSSのディストーション・ペダルは、DS-1だけではありません。1991年に製造されたMT-2は太くてアグレッシブなドライブ・トーンが特徴的で、その音色は業界標準として親しまれています。また”スウェディッシュ・チェンソー”という音色で知られるHM-2は、ヘビー・メタルというジャンルを形作りました。このペダルは並外れたアグレッシブさで、今でもギタリストたちに重宝されています。
ディストーション・ペダルの仕組み
オーバードライブと似たような効果を持つディストーションですが、生み出されるサウンドの印象は全く異なります。ディストーションはアンプのゲインに頼らず、エフェクト内部で信号を処理し、サチュレーションとコンプレッションが加わることで小音量でも厚みがありドライブかかったトーンを鳴らします。より一貫性があり、高いゲインのトーンを作り出すアンプの組み合わせに影響されないのもディストーションの特徴と言えるでしょう。
ディストーションの応用
様々な楽しみ方を発見できるエフェクトで、汎用性が高く、ジャンルに捉われないディストーションは、ギター・トーンの形成に欠かせません。しかし、それぞれのペダルには多くの違いがあるため、適切なペダルを選ぶために使用用途について考える必要があります。
音色が荒々しく変化するワイルドなエフェクターですが、他のペダルでは鳴らすことのできないサウンドを作ることが可能です。アンプ、ピックアップ、ペダルボード上のエフェクター、そしてギターのチューニングさえ、ディストーション・ペダルの反応に影響を与えます。都度、セットアップに合ったベストな調整を理解することで、最大限にディストーションの魅力を引き出すことができます。
アンプとギター
真空管アンプ
ディストーション・ペダルと組み合わせるアンプの種類は、ペダルのトーンに大きな影響を与えます。真空管アンプはオーバードライブやディストーションに対して非常に反応しやすく、ゲイン・ペダルのトーンを飽和させ、変化させる傾向があります。
ハイ・ゲインに設定された真空管アンプでは、アグレッシブで飽和した音色を鳴らすためにディストーション・ペダルを強く踏み込む必要はありません。エフェクトは自然とアンプのオーバードライブに溶け込んでいきます。この場合、ディストーション・ペダルのEQをより積極的に活用することで、好みの歪んだ音を作ることも可能です。
クリーン・アンプ
クリーン・アンプを使用する場合、ディストーション・ペダルのゲインをさらに押し上げることで、太くて全体にドライブが掛かった音色が完成します。アンプの音色を変えながらも、ボリュームのみアンプに依存する状態です。Limp BizkitのWes Borlandが素晴らしい例でしょう。彼はRoland Jazz Chorusのクリスタルのようなクリーンと脅威的なディストーションを組み合わせ、足元でトーンを作り出しています。
「出力の高いハムバッキング・ピックアップは、ディストーション・ペダルから最も厚みのあるサウンドを作り出します」
ギターとピックアップ
ディストーションの効果の変化を楽しむなら、ピックアップを試してみましょう。出力の高いハムバッキング・ピックアップは、ディストーション・ペダルから最も厚みのあるサウンドを作り出します。Telecasterのようなシングル・コイルを搭載したギターなら、細く甲高い音色になり、ディストーション・ペダルから更なるゲインとローエンドなブーストを必要とします。これは必ずしもマイナスの結果になるわけではありません。より細く、突き刺さるようなサウンドが魅力的に聞こえる場合もあるので、あなたの好み次第となるでしょう。
5つのディストーション・ペダルの使い方
1.エキサイターとして使用する
ディストーションを低いゲインに設定してドライブ・アンプのフロントで鳴らせば、倍音とサステインに富んだドライブ・トーンを実現できます。ディストーション・ペダルから適切なゲインを取得し、真空管アンプのプリアンプに押し込むことで、独特の倍音と豊かでオーガニックなサウンドを生み出します。エキサイターは音色を太くしたり、音色のバックボーンとして使用するのに最適です。
「ディストーション・ペダルから適切なゲインを取得し、真空管アンプのプリアンプに押し込むことで、独特の倍音と豊かでオーガニックなサウンドを生み出します」
2. 音色を形作る
しばしば、オーバードライブ・ペダルのEQは音を形作るツールとして役に立ちます。しかしながらHM-2W、MT-2、MD-2、ST-2のように、包括的でダイナミックなEQコントロールを備えたディストーション・ペダルも注目です。このようなペダルを使うことで、ギタリストはEQを操作して、決定的な音色の変化を作り出すことができます。ミックスで歪んだトーンを正確にシェイプするのに有効なので、音楽を引き立てるために適切な周波数をブーストまたはカットすることができます。
3. 他の楽器と組み合わせる
オーバードライブ・ペダルは、ギターの信号をブーストして波形のピークをクリップすることで、ドライブを生み出します。これとは対照的に、ディストーション・ペダルは飽和した歪みの層を作り出し、トーンを強化するのではなく変化させます。オーバードライブは、組み合わせるアンプと楽器によって、どのようなサウンドになるかが決まります。ディストーションもその点は変わりませんが、より独立性が高く、汎用性が高く、様々な状況で使用できるでしょう。
包括的なEQコントロールとペダルを通じてあらゆる信号を歪ませるので、ベース・ギターやシンセサイザーといった他の楽器と一緒に使用すれば更なる発見を得られるでしょう。HM-2WやMD-2のようなペダルは膨大な量のローエンドを備えているため、ダイナミックな音を作り出すのに最適なツールです。
「ベース・ギターやシンセサイザーを使えば、更なるディストーションの効果を発見できます」
4. ペダルを限界まで踏み込む
ディストーションは、ヘヴィ・ロックやメタルのために設計されたアグレッシブなエフェクターです。適切なセッティングを施すことでディストーションはその魅力を発揮しますが、それと同時にペダルを限界まで踏み込むことを躊躇してはいけません。
80年代の後半、スカンジナビアのヘヴィ・メタル界隈ではBOSS HM-2が使われ、この手法によりスウェディッシュ・チェンソー・サウンドが登場しました。全てのノブを時計回りに回し切り、ペダルの能力を最大限に引き出すことによって、数え切れないほどのメタル・ギタリストが夢中になる、刺激的なギター・トーンが生み出されたのです。
5. チャンネル・スイッチャーとしてのディストーション
ディストーション・ペダルにおいて最も重要なのは、ゲインの出力量です。クリーン・アンプと組み合わせてチャンネル・スイッチャーとして使うことで、理想的な結果が得られるでしょう。シングル・チャンネルのアンプでは、ディストーション・ペダルが多くのブーストとゲインを提供し、アンプをクリーン・ペダルのプラットフォームとして機能させることができます。
MT-2やHM-2Wのような総合的なEQコントロールを備えたディストーション・ペダルを使えば、歪ませたトーンをクリーン・トーンと全く異なるものにシェイプすることができます。この用途は、砕けたヘヴィネスを保ちつつ、アンプ本来のトーンを最大限に活かすのに最適です。
「MT-2やHM-2Wのような総合的なEQコントロールを備えたペダルを使えば、歪ませたトーンをクリーン・トーンと全く異なるものにシェイプすることができます」
サウンドに個性を生み出す
ディストーション・ペダルはあらゆるスタイルのプレイヤーに対応してくれます。過激にEQがかかるMT-2から多彩なDS-1まで、ディストーションはどんなエフェクトよりもサウンドを形作るサポートをしてくれるでしょう。実験やユニークなトーンを開発するのにも最適です。それと同時に、このエフェクトはギター・サウンドの骨格を形成し、ジャンル全体を定義するのにも役立ちます。この汎用性を活かすことで、どんなジャンルにも合うディストーションを発見できるでしょう。