EQペダルはギタリストの必要不可欠なアイテムであり、その幅の広い用途により、様々なセットアップで活用することができます。また、ギターの音作りや個性を引き出すにあたり、EQをエフェクトやプリアンプとして使用することも可能です。こうした素晴らしい機能を備えているにも関わらず、華やかさに欠けるEQは見過ごされがちなペダルです。特定の周波数の音量を押し上げたり削ることができるこのペダルは、洗練された音作りを叶えるための第一歩と言えるでしょう。創造的なアイデアを取り入れることで、地味な印象のEQペダルがセットアップ全体を大きくアップグレードすることもあります。一歩進んだギターの音を作るEQの調整方法について見ていきましょう。
EQとは?
EQとはイコライザーの略で、音の周波数帯域を指します。より分かりやすく説明すると、低音、中音、高音の周波数です。いくつかのアンプやペダルを活用して周波数を音域ごとに分類し、特定の音の範囲を持ち上げたり、削ったりすることができます。
例えばアンプでは、低音、中音、高音の3つに分けて調節することができます。この場合、各コントロールが扱う周波数帯域が広範囲に及ぶため、音色を形作る精度には限界があります。一方、グラフィックEQ型のペダルでは周波数帯域をさらに多くのグループに分けることができます。そのため特定の周波数を正確に持ち上げたり、削ったりすることができ、あらゆる状況でも理想的な効果を発揮します。
セットアップに関して
EQペダルは様々な用途で活躍するため、エフェクト・チェーン上でも配置する場所によって違った効果が得られます。エフェクト・チェーンの先頭に配置し、アンプのプリアンプをブーストしてみましょう。特定の周波数を持ち上げることで、追加でゲインのコントロールが可能になります。この設定ではEQがオーバードライブような役割を果たし、セカンド・ブースターとして機能します。
また、ドライブ・エフェクトの後にEQを配置して、オーバードライブの特定の周波数を調節することで、サウンドのキャラクターをより緻密に形作ることができます。アンプのエフェクト・ループに繋いでも同様の役割を果たします。エフェクト・ループにEQペダルを追加すれば、ギタリストはゲインを追加することなく音色を調整することが可能です。
Five EQ Pedal Uses
プリアンプ
アンプの可能性をさらに広げるEQペダルは、常時接続するプリアンプとして使用することで、アンプ本来の特性をさらに引き出すことができます。例えば、中高域を押し上げることでアンサンブルでのリフの音抜けを良くしたり、不要な帯域をカットしたりすることができます。この機能は、引き締まった低域の音作りに効果的です。
ハイゲイン・アンプとEQペダルは、アンプの音を形成するには抜群の相性です。ハイゲイン・アンプのプリアンプを歪ませることで、ペダル・エフェクトでは再現が難しい、太くコシのあるオーバードライブ・サウンドが生まれます。しかし、過激な歪みを生み出すことは、それだけコントロールが難しくなります。アンプの前方にEQペダルを入れることで、暴れやすい帯域を抑制し、アグレッシブでありながら整ったサウンドを形成することができます。
このような場合、中高域の比較的広い帯域(BOSS GE-7の場合、およそ400Hz~1.6kHzのスライダー)をブーストしてみてください。すると、音色に心地よい中域の厚みが生まれ、引き締まった歯切れのよい、明瞭な歪み音に仕上がります。次に、低域の周波数を少し下げて、音色の飽和感を抑えます。BOSS GE-7の場合、100 Hzのスライダーを少し下げます。この設定で十分でない場合は、200 Hzのスライダーを少し下げます。
「EQペダルは、常時接続するプリアンプとして使用することで、アンプ本来の特性をさらに引き出すことができます。」
ソロ・ブースト
ギター・ソロを強調させるために、EQをブースターとして使用する事例は数多く存在します。ヴォーカルのメロディーと同様に、ギター・ソロの役割は他の楽器とアンサンブルを重視するリフと異なります。ソロは他の楽器より前に出て、バンド・サウンドの中央に位置していなければなりません。ブースト・ペダルを使えばギターの音量を上げることができますが、より正確に同じ効果を実現したいとき、EQペダルの出番です。
大半のEQペダルには15dB程度まで音を持ち上げられる、マスター・コントロールがついています。EQの設定をフラットのまま、音量コントロールだけを上げてください。しかしギター・ソロの場合、周波数の帯域全体をブーストする必要はありません。単純に中高域と高音域の周波数を前に出すと、一律に音量をブーストするよりもバンド・サウンド内でまとまった音になります。
セカンド・アンプ・チャンネルの代用
シングル・チャンネルの真空管アンプで多彩なトーンを作り出したい時に、EQペダルは非常に便利です。シングル・チャンネルの真空管アンプを使うと、クリーミーで温かみのあるオーバードライブ音を作ることができます。しかし、クリーンの音が必要な場合にはどうでしょうか?
EQペダルをアンプの前に接続した状態で、ペダルのLEVELを下げます。そうすることでプリアンプへの負担が減り、真空管のクランク・アップが軽減されます。しかし、これではミュートされたような、盛り上がりに欠ける音になってしまうかもしれません。では次に、中音域のブーストとカットを試してみましょう。中音域をカットすると、高音域が露わになり、輝きが増すことがよくあります。これにより、私たちが求めるクリーンでスクープされたギター・トーンが生み出されます。
「中音域をカットすることで、高音域が露わになり、輝きが増す。これにより、私たちが求めるクリーンでスクープされたギター・トーンが生み出されます」
オーバードライブ
上記とは逆の方法でEQを使用すると、オーバードライブ・ペダルの代用品にもなります。アンプの前にEQを置いてLEVELをブーストし、プリアンプを押し上げた状態でミッド・レンジを持ち上げると、フットスイッチで切り替え可能なオーバードライブ音を作ることができます。アンプの明瞭さと迫力を損なわずに、実にアンプらしい歪み感が得られます。一方で、オーバードライブ・ペダルは細かな帯域の調節が難しいため、アンプと最適なマッチングするペダルを見つけるには、たくさんの試行錯誤を必要とします。EQペダルを活用することは、アンプの音に魅了されたギタリストにとって、完璧な解決法と言えるでしょう。
半止めワウ
半止めワウとは、ワウ・ペダルをリズミカルに使ってギター・パートを強調するのではなく、固定したままワウを鳴らすエフェクトを意味します。この設定はイントロに味付けをしたり、リード・ギターをバンド・サウンドから強調させたりするのに最適で、耳に残る独特な音色を生み出します。このエフェクト音は、Dire Straitsの “Money for Nothing “でMark Knopflerが使ったことで知られています。また、Omar Rodriguez Lopezのユニークなギター音のバックボーンにもなっています。
このようなサウンドはEQペダルのバンド・スライダーを極限まで使う必要があります。400Hz~1.6kHzの周波数を全てブーストし、それ以外をカットしてこの音色を作ってみてください。その時、特定の周波数の音量を上げるとノイズ成分も上がり、アンプにヒス・ノイズが発生することがあります。ワウを開放したような効果を得るには、必要な周波数をブーストすることと同じくらい、不要な周波数をカットすることが重要です。まず他の周波数帯域を全て最小に落とし、次に中音域を上げてみてください。
「ワウを開放したような効果を得るには、必要な周波数をブーストすることと同じくらい、不要な周波数をカットすることが重要です」
音色の調節
EQペダルは、ギタリストが妥協することなく音色をカスタマイズするのに役立つ、多用途でクリエイティブなツールです。追加のアンプ・チャンネルのように使ったり、ローファイでラジオ・スピーカーのような音を作ったり、オーバードライブに置き換えたりと、EQはあらゆるプレイヤーの足元で活躍します。大胆な新しい音色を生み出すなら、EQの幅広い用途はどんなペダルの組み合わせても新たな可能性を秘めているでしょう。