Serial GK Partners: ATELIER Z

Serial GK Partners: ATELIER Z

1989年に設立されたATELIER Z。その出発地点は、数々のアーティストのライブ/レコーディングで多大なる功績を残したベーシスト、青木智仁氏のために製作された5弦ベース「M#265」だった。厚みのあるアクリル・ピックガード、弦高と弦のテンション感を整えるZ-TUNING SYSTEM、優れた振動伝達を誇る自社製ブリッジ、Bartolini社製のプリアンプの音圧をさらに上げるためのカスタマイズ「スペクトラム・ブースト」など、プロ・ミュージシャンの要望を満たす数々の名機を生み出してきた。現在ではベースのみならずギターのラインナップも充実。今回、GK5-KITを搭載したモデルとしてリリースされたのはBeta5 GK CUSTOM。多様化する現代の音楽に対応する24フレット、Z-TUNING SYSTEM、オリジナルのピックアップJBZ-5、Bartolini製のXTCTプリアンプなどを採用しつつ、ミニ・スイッチでシンセサイザー・サウンドとアクティブ・ベース・サウンドの切り替え/ミックスが可能な逸品に仕上がっている。株式会社ATELIER Zギターワークス 取締役・マスタービルダーの本橋章光氏に話を聞いた。

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1977年、記念すべき世界初のギターシンセRoland GR-500が発売。エポックメイキングな製品の登場により、先鋭的なプレイヤーたちによってギター表現は新たなステージへと突入することになる。その後、初のポリフォニック(和音)に対応、さらにシンセサイザー・ドライバーGK-2の登場によって自身のギターに搭載可能となるなど、正統な進化を遂げてきたギター・シンセ。2023年、新たに新方式のデジタル伝送を採用した「シリアルGK」の登場によりギターやベース本体に内蔵できるGK5-KITシリーズがラインナップ。音源コントロール用スイッチとボリューム、ノーマル・ギター出力機能の追加、7弦ギターへの対応など普遍性も追求。多様化する現代の音楽シーン、制作環境に対応するアイテムへとビルドアップしている。この記事では、GK5-KITシリーズを導入するギター/ベース・メーカーを取材。導入を決めた理由やGK5-KITシリーズが秘める可能性について話を伺った。 

◾️ブランドが掲げるポリシー

#M265

ATELIER Zギターワークスは私の父である本橋弘吉が始めたブランドで、もともとはベーシストの青木智仁さんのシグネイチャー・モデル「M#265」を開発するために誕生しました。その頃から一貫してJBスタイルを展開しています。ATELIER Zの強みは、サウンドの良さと弾き心地にあります。さまざまなベース/ギター・ブランドがある中で、実戦で使えるサウンドが一番の魅力だと思っています。

ATELIER Zはイコライザーのついたアクティブ・タイプが主流で、パーツ構成に関して言うとピックアップもブリッジもオリジナルで作っています。プリアンプはBartolini製を採用しており、その組み合わせが特徴的ですね。

また、木工と設計にも重点を置いていて、具体的にはヘッドの落とし込みの長さや深さ、弦の角度、弦のテンション感など細部にまでこだわり、アクティブ・ベースでありながらパッシブでも良質な音が出るように設計しています。

弦は20年以上にわたりオリジナルで製造しています。青木さんがご存命のときからステンレス弦を採用しており、ニッケル製よりもさらに金属的な音がするためスラップの音が綺麗に出ます。弦やピックアップ、パーツも含めて、トータル・コーディネートでサウンドを構成しているので、やはり楽器とのマッチングは良好ですね。ATELIER Zのサウンドと弾き心地を気に入った方は、4弦や5弦、24フレット・モデルを追加で購入する方が多く、他のブランドではなくATELIER Zの本数が増えていく傾向にあります。また、スラップをバリバリ弾きたいというユーザーが多く、それがATELIER Zのブランド・イメージにもなっています。

株式会社ATELIER Zギターワークス 取締役・マスタービルダー 本橋章光氏

主力製品はM245です。アッシュ・ボディ、メイプル指板のJBスタイルのアクティブ・ベースですね。この5弦タイプが人気で、近年では海外のアーティストにも使っていただいています。これまでは海外の楽器店との取り引きはほとんどありませんでしたが、今ではインドネシア、マレーシア、中国、韓国との取り引きも増えています。特に韓国と中国のベース・プレイヤーは日本のYouTubeをよく見ていて、最近ではATELIER Z ユーザーでYOASOBIのサポート・ベーシスト、やまもとひかるさんが人気なのも支持されている一因です。

実戦で使えるサウンドがATELIER Zの一番の魅力

◾️GK5-KITの導入について

ギター・シンセのシステム自体は、前のモデルから使わせていただいたり取り付けさせてもらっていたのですが、今回は格段に利便性が向上したと感じています。特にアナログ13ピンがなくなったのは大きなメリットです。デジタル化によりレスポンスや音色のクリアさがレベルアップしており、非常に魅力的だと思って導入させていただきました。

ギター・シンセをつけたいというオーダーは弊社でも過去に何度と受けていますし、リチャード・ボナ・モデルのようにGK-3Bを組み込んだこともありました。外付けのGK-3Bを取り付けることが多かったですね。加工費を考えると外付けの方が早いという声もありますが、内蔵することで得られるメリットも多いです。例えば、パッチの切り替えスイッチやシンセのボリュームなど、手元でコントロールできるようになることが大きな利点です。

Beta5 GK CUSTOM

今回、GK5-KITを搭載したモデルとして発売するのはBeta5 GK CUSTOMです。取り付け可能なモデルは、基本的に要望があれば何でも対応可能です。アクティブ・ベースの場合、キャビティにスペースがあるので、そこにGK本体やアクティブの回路を収めるのはそれほど難しくありません。実際にザグリを広げずに収めることができました。ポットの種類を変えて隙間を作るなどの工夫をしましたが、配線穴の加工やジャック部分の拡張が少し大変でした。

実際に弾いた感想は、レスポンスが非常に良くて驚きました。音源もクリアで高性能です。ピックアップとシステムが非常に高性能なので、コードを弾くと非常に気持ち良いです。音源も多彩で、歪みやエンベロープなどのエフェクトにとらわれず、壮大な音を出すことができます。基本的にベースは単音で弾いてコードは弾かない楽器なので、逆にベースのほうが可能性が広がる印象を受けました。特に気に入った音色はピアノ音源です。本物のピアノのようにリアルで正確な音が出ます。

ベースのほうが可能性が広がる印象を受けました

◾️GK5-KITが示す新たな可能性

GK5-KITの魅力は楽器の可能性が広がることです。ベースでメロディを弾いたり、ルーパーを使って一人で演奏する方々にとって最適なモデルですし、そういった演奏スタイルを試してみたい方にとってもGK5-KITを取り付ける価値はとても高い。

おすすめの使い方としては、まずはライブ・ステージでの利用が考えられます。例えばツイン・ベースで演奏するのも面白いですよね。ベース2人とドラム1人という編成で、1人は通常のベースを弾き、もう1人はGM-800を駆使してメロディを弾くスタイル。もちろん、2人ともGKを使用するのも良いですよね。ドラム音源も入っているので、場合によってはドラムが不要になるかもしれませんけど(笑)。

ATELIER Zでは数年前から6弦ベースの需要が高まっています。以前は年間に2〜3本程度しか作っていなかったのですが、現在では毎月作るほど6弦ベースの需要が多い。これは6弦ベースを使うミュージシャンが増えた影響だと思いますが、6弦ベースを使う方々はコードを弾いたりメロディアスな演奏をすることが多いので、6弦ベースの需要の高まりとGK5-KITの親和性は高いと思います。

6弦ベースの需要の高まりとGK5-KITの親和性は高い

現在はSNSなどで何がバズるのかわからないので、そういった意味でもGK5-KITでの演奏動画は多くの人に注目してもらえる可能性がありますよね。以前はバンドを組んでスタジオに入ってライブをするという流れでしたが、現在は自宅でパソコンを使って音楽制作をする方も増えているので、そういう方々にとっても非常に良いモデルだと思います。

(Writing & Photography Motomi Mizoguchi)

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