現在では、デジタル・モデリング技術は一般的となりつつありますが、インパルス・レスポンスと最新のキャビネット・シミュレーターの精度、品質、そしてその汎用性が更なる技術革新に繋がっています。これらで生成されたサウンドは創造性を広げ、セッティングの合理化や入手困難な機材の特性をもセットアップすることが可能です。さらにインパルス・レスポンスにより自宅やスタジオ、ステージ上を問わず、どこででも一貫したギター・サウンドが再現可能です。つまり、これらは様々なギタリストやベーシストにとって、まさにゲーム・チェンジャーと言うべき変革でしょう。
IRペダルとキャビネット・シミュレーターに関するこのガイドでは、以下について説明します。
- インパルス・レスポンス(IR)ペダルとは?
- インパルス・レスポンスとキャビネット・シミュレーターの違い
- インパルス・レスポンス・ペダルのメリット
- インパルス・レスポンス・ペダルの使い方
インパルス・レスポンス(IR)ペダルとは?
インパルス・レスポンスは、ギターのアプリケーションと考えると、ギター・アンプ全体のセットアップで得られるサウンドを測定した、音のスナップ・ショットです。これには、スピーカー・キャビネット、マイクやその配置場所、部屋の状況及び周辺機器が含まれます。このスナップ・ショットは、ヘッドホンでの練習やステージ上での演奏など、あらゆる状況をIRで再現してくれます。
IRは現実にある機器のデジタル・キャプチャーであること認識しておくことが重要です。多くのアンプ・タイプが内蔵されたエフェクター・ペダルのようなキャラクターを似せたものとは大きく異なります。これらは、20Hzから20kHzの周波数帯域全体でセットアップされた音質と特徴をキャプチャーしたオーディオ・ファイルです。IRローダーは、このオーディオ・ファイルを解析し音響特性を再現します。
BOSSのIR-2やIR-200のようなインパルス・レスポンス・ペダルは、インパルス・レスポンスとキャビネット・シミュレーターを組み合わせることで、ステージ・パフォーマンスやレコーディング、自宅での練習でも自己完結型でサウンドを構築するソリューションを提供します。IRペダルは、小さな筐体ながら膨大なアンプ・トーンを提供します。音色を作成した後は、ステージ上のアンプやPA、DAWへ出力することも簡単に行えます。
IRとキャビネット・シミュレーターの違い
IRとキャビネット・シミュレーターは、ギタリストが行うセットアップにおいては、同様の役割を果たすように思えますが、実際には意味合いは異なります。まず、キャビネット・シミュレーターは、特定のアンプ・キャビネットで得られるサウンドを模したものになります。そのシミュレーションでは、スピーカーやキャビネットのサイズ、マイクやその配置場所が考慮されます。ただし、これはそれらの機能が反映されるにすぎません。
IRは物理的に収音・測定され、IRローダーによって再構築されます。これは、実際に存在する機器を科学的かつ高い精度で複製したスナップショットです。例えば、キャビネット・シミュレーターがOrangeのクローズド・バック4×12を選択した場合、IRはリファレンスとして使用される特定のOrangeのクローズド・バック4×12のサウンドを忠実に再現します。
さらに、IRはキャビネットのサウンドを再現するだけではありません。様々な接続された機器の状態でレコーディングも可能です。IRは、キャビネット、マイクの種類および配置場所、ラックにセットアップされた機器、エフェクト・ペダル及び部屋の残響を再現します。これらは、世界的に人気のあるギター関連機器を正確に再現するためのソリューションとなります。
IRの存在は、ギター機器以外にも応用できることも注目のひとつです。IRは、特定の部屋の自然な残響など、さまざまなものをキャプチャできます。例えば、ロンドンのAbby Road Studioでは、Reverb Chambersのインパルス・レスポンス・キャプチャーを提供しています。これらのIRを通じてギター、ボーカル、パーカッションを仮想的にリアンプし、世界で最も有名なスタジオのエコー感をシミュレートすることができます。
「柔軟性に優れたIRにより、時間に追われてサウンドの最終調整する必要がなくなります。」
インパルス・レスポンス・ペダルのメリット
ギターのサウンド・セットアップについてIRを使用するメリットは非常に大きいです。素晴らしいギター・サウンドを構築するには、常に一定ではない要素を考慮する必要があります。それは、アンプのボリュームからマイクの種類、位置など多岐に渡り、ライブハウスやリハーサル・スタジオ、自宅練習といった場所で一貫したサウンドを再現するのは容易ではありません。しかし、IRを使用することで、自宅で慎重に作成したサウンドをどこで演奏しても再現できるようになります。
ビンテージ・アンプや高級レコーディング機器も手に入る
IRを使用すると、高額なアンプから高級なRoyer R-121リボン・マイクに至るまで、希少な製品やサウンドの膨大なデータを手に入れることが可能です。またIRは、世界で最も権威のあるレコーディング・スタジオの空間もキャプチャーできます。その品質と再現性により、あらゆるミュージシャンに世界中で評価されたギター・サウンドの一部分を完璧にシミュレートする機会が与えられるようになりました。
さらに、レコーティングするまでに大変だった、マイキングを含めたアンプのセッティングも完了しています。マイク配置のノウハウ、専門知識やレコーディング・エンジニアも必要ありません。創造性と素晴らしいサウンドにただただ集中できます。
アンプレスでギター・サウンドを構築
IRを使用してギター・サウンドを構築することで、プレイヤーは演奏だけに集中できます。IRは、アンプ、キャビネット、マイクの種類や配置といったセットアップまでも再現し、それらを簡単に出力することができます。たくさんの機材のセッティングや入れ替えなどが不要となり、運搬もはるかに合理化されます。ペダル・ボードに搭載したり、ギグ・バックに入れて持ち運んだりすることも容易です。
「IRを使用すると、プレイヤーは機材をレンタルしたりすることなく、自分のサウンドを完璧に再現できます。」
サウンドの一貫性を実現する
柔軟性に優れたIRにより、プレイヤーは出番前に時間に追われてサウンドの最終調整する必要がなくなります。環境や周囲の状況に関係なく、常にセッティング通りのサウンドを再生可能です。さらにBOSSのIRシリーズ、GTシリーズ、GX-100及び WAZA Tube Amp Expander に搭載されている豊富なIRのオプションは、人気のあるアンプやマイク、周辺機器を高品質で再現しています。
移動も簡単
IRは遠征ツアーにも最適です。これにより、ツアー・プレイヤーは機材をレンタルしたりすることなく、自分のサウンドを完璧に再現できます。遠征中のミュージシャンにとって、曲ごとに様々なアンプやキャビネット、マイクや設置場所も簡単にセッティングできます。プロ・クオリティのサウンドを簡単に付け加えたり、切り替えたりすることができます。これは、どこで演奏していても常に同じサウンド品質を持っていることを意味しています。
ケーブル配線を増やさない多彩なルーティング
IRペダルを使用すると、ペダルボードとセッティングをシームレスに統合できます。IR-200などのペダルにはステレオ出力を装備しています。これにより、ギタリストは2台目のアンプを購入してセットアップすることなく、たくさんの組み合わせを試すことができるので、どのセットアップを採用するかも容易に判断できます。アンプの組み合わせも一覧を参照するだけで、満足のいくサウンドの組み合わせを簡単に見つけることができます。
インパルス・レスポンスを使用する方法とその理由
Live
ギター・サウンドは、キャビネットのマイキングやドラム、その他の楽器のからの音に影響されることなく、パフォーマンスをライブ会場に届けることができます。さらに外出先へ持ち出すのに躊躇するようなビンテージ・アンプの所有者にとっては、IRによってシンプルにセットアップが行えます。これにより、ギタリストはアンプを安全な環境を保ちながら、今までと変わりないサウンドが得られます。
小さな会場でライブを行う場合、PA担当者がギタリストに対して音量を下げて欲しいと要望されることは良くある話です。そんな時でもIRを使用するとモデリングされたアンプを歪みや音質を変えることなく、出力される音量だけを下げることができます。
「BOSS IR-200のようなIRペダルは、オーディオ・インターフェイスに直接接続が行えます。これにより、スタジオや防音対策、音量は気にしなくても上質なサウンドを手に入れて直接DAWに取り込めます。」
Studio
IRは、常に安定した高音質サウンドを手に入れることができるので、スタジオ環境を気にする事なく、音楽制作が行えます。BOSS IR-200のようなIRペダルは、オーディオ・インターフェイス機能も搭載しています。これにより、スタジオや防音対策、音量は気にしなくても上質なサウンドを手に入れて直接DAWに取り込めます。
お気に入りのIRデータでレコーディングしてみてください。保存したお気に入りのIRデータは簡単に呼び出すことができるので、楽曲制作もスムーズに行えます。IRデータを切り替えれば、様々なギター・トーンを試しながらレコーディングを行えます。また、IRデータは多くのミュージシャンがオンライン上にデータを公開しているので入手も簡単です。
練習
IRは、自宅でヘッドホンを使用した練習にも最適です。ライブのために作成したアンプ・サウンドを小音量で演奏でき、サウンドが正確に再現できない小型の練習用アンプを使用する必要はありません。IRでは、完成されたサウンドがどのような状況でも同じサウンドが得られます。
インパルス・レスポンス・ペダルの選択
インパルス・レスポンス・ペダルの品質は?
ハードウェアとソフトウェアの両方で使用する場合でも違いは生じます。市場には数多くのインパルス・レスポンス・ペダルが存在します。IRローダーの性能によりIRの再現性に違いが出てきます。IRをシステムに導入するとギター・サウンド全体を大幅に強化できるので、最先端のテクノロジーを備えたペダルを選択することをお勧めします。BOSSのIRペダルは、堅牢な設計に加え、クラス最高峰のIRデータの再現性を備え、最大500msのIRデータを取り込むことができます。
「BOSSのIRペダルは、堅牢な設計に加え、クラス最高峰のIRデータの再現性を備え、最大500msのIRデータを取り込むことができます。」
BOSSのインパルス・レスポンス
BOSSからもたくさんの製品がラインナップされています。特にIR-2やIR-200は、エフェクター・ボードへ追加するだけでスペースを最小限に抑えつつも高品質かつ豊富なIRデータからサウンドを構築できます。
IR機能を備えたBOSS製品
GX-100やGTシリーズは、エフェクト・セクションとアンプ・セクションを1つのパッチ内で完結して管理できます。Tube Amp Expanderを使用すると。所有している真空管アンプで奏でるサウンドを最大限に活用できます。ME-90は、簡単操作でエフェクトのセッティングが行えることで人気ですが、手頃な価格ながらインパレス・レスポンスも同時に楽しむことができます。