BOSS LOOP STATIONを使った演奏を初めて見た時、楽器経験のあるオーディエンスならば、感動を抑えることができないでしょう。そして、次の反応は、自分でもやってみたいという衝動です。エド・シーランからサム・ペリーまで、さまざまなアーティストが作り上げた壮大なソロの交響曲を目の当たりにすると、ループ・パフォーマンスは決して習得できない音楽的なダークアートのようなものだと感じるかもしれません。しかし、この記事は、経験、楽器、技術的能力、音楽の好みに関係なく、誰でも今日からループ演奏を始めることができることを解説します。
あなたのループ演奏の旅はここからスタートします。このハンズオン・ガイドでは、BOSS LOOP STATIONのコア機能を紹介し、基本的なテクニックと次のレベルに進むためのプロのヒントを共有します。
目次
不可欠なクリエイティブ・ツール
BOSS LOOP STATIONは手にしたその日から、ループしたコードの進行にメロディーを乗せて演奏を楽しむことができます。その一方で、数年経った後も、信頼できる相棒として不可欠なクリエイティブ・ツールであり続け、アコースティック・ギター、ソング・ライティング、ビートボックス、パーカッション、DJプレイ、制作において、常にインスピレーションを刺激し続けてくれるでしょう。
他にも、LOOP STATIONの歴史や最新のラインナップを深掘りした特集が掲載されています。しかし、この記事では、ループ演奏の実践的なガイドとして、革新的なユニットを最大限に活用するためのアドバイスを提供します。
LOOP STATIONとは?
すべてのBOSS LOOP STATIONに、現代ミュージシャンの音楽ライフをクリエイティブにするための高度な機能が搭載されています。それらの詳細を確認する前に、まずは、基本からおさらいしていきましょう。ルーパーは、演奏した一連のフレーズを録音、再生、およびオーバーダビングできます。典型的な例として、4つのコードで構成されたバッキングを録音し、繰り返し再生することで、その上にソロ・リードを重ねることができます。また、録音したフレーズをユニットの内蔵メモリに保存して、いつでも呼び出すことが可能です。
このプロセスを繰り返し、メロディー、パーカッション、ベースライン、ボーカル、ハーモニー、ビートボックスなど、好きなものを重ねていくことで、ソロ演奏とは思えないような壮大で複雑な音楽作品ができあがります。アイデアを形にする練習を積み重ねることで、ベーシックなモデルでも、ソロ・パフォーマーをデュオや5人組バンド、さらには合唱団やオーケストラのようなアンサンブルを生み出すことができます。
「アイデアを形にする練習を積み重ねることで、ベーシックなモデルでも、ソロ・パフォーマーをデュオや5人組バンド、さらには合唱団やオーケストラのようなアンサンブルにすることができます。」
何のためにLOOP STATIONを使うのか?
現代のミュージシャンならば、多様な音楽的バックグラウンドに囲まれていることに気付くでしょう、そして、あなたがどんなスタイルであっても、BOSS LOOP STATIONは果たすべき役割を持っています。練習において、正確なリズムを刻むためのタイム感を養い、繰り返し再生されるアンサンブルにトリッキーなソロー・リードを重ねれば、ステージを意識したスキル・アップにも繋がります。
また、BOSS LOOP STATIONは、新曲を書くためのアイデアを出しのためにも、手元に置いておきたいものです。他のバンドメンバーがいなくても、複数のパートを積み重ねたり、思い浮かんだメロディーを試したり、アレンジや展開を考えたり、容易に完成した曲がどのように聞こえるかをイメージすることができます。
LOOP STATIONは、プロのスタジオやデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)のレコーディング・セットアップの基礎としてよく使用されます。しかし、間違いなく、最もよく知られているアプリケーションは、ライブのソロ・パフォーマンスをするためのものです。バンドを結成したり、腕一杯の楽器を抱えて街中を移動したりすることは、必ずしも現実的または経済的に実現可能ではありません。しかしながら、LOOP STATIONさえあれば、あなた一人でバンドたり得るのです。ギグバッグにルーパーを滑り込ませ、会場まで身軽に移動でき、プラグを差し込むだけで、ソロでありながら驚異的なサウンドスケープを作り上げることができるので、すべての成果はあなただけのものです。
LOOP STATIONの構造
LOOP STATIONシリーズのハイ・エンド・モデルにおける、ボタン、ダイヤル、フットスイッチの操作がいかに洗練されシンプルであるかに驚かれることでしょう。まずは、ルーパーの基本的な操作性を知るために、手頃なエントリー・モデルでもあるBOSS RC-1の基本機能からチェックしてみましょう。
フットスイッチ
BOSSの世界的に有名なコンパクト・ペダルを使ったことがある人なら、このタフで安心感のあるフットスイッチは馴染み深いはずです。ただし、一般的なコンパクト・ペダルが単純にオン/オフを切り替える操作なのに対し、RC-1は少し異なる動作をします。まず、ループの録音を開始するには、一度を押します。録音を停止して再生を開始するには、もう一度を押します。オーディオを完全に消去するには、すばやく2回押してホールドします。最後に録音したフレーズだけを消去する(アンドゥ)には、2秒間押し続けます。ひとつのペダルスイッチですが、機能的にデザインされています。
ループ・インジケーター
薄暗いステージ上でも、色分けされたLEDのサークルは、ループの状態を一目で教えてくれます。録音中は、ループ・インジケーターが赤く点灯します。オーバー・ダビング中は、赤と緑になり、再生中は緑に点灯します。録音されたループが再生されると、24セグメントのサークル・インジケーターが音楽と一緒に徐々に光り、視覚的にフレーズの進行がわかるため、タイミングに迷うことはありません。
レベル・ノブ
RC-1 LOOP STATIONはミニ・ミキサーでもあります。実用的なレベル・ノブから、再生中のループ・オーディオの音量を調節できるので、実際に演奏するフレーズとのバランスを簡単にとれます。
INPUT A/B端子
エレキ・ギターなどモノラルの楽器をしようして演奏する場合は、標準の1/4インチ・ケーブルを使用して、INPUT Aに接続してください。もし、LOOP STATIONの前段にステレオ出力に対応したエフェクターを接続する場合は、INPUT AとINPUT Bの両方を使用することで、より広がりあるサウンドが得られます。
OUTPUT A/B端子
LOOP STATIONは、すべての機種でステレオ出力に対応しているので、アンプだけではなく、スピーカーにも接続することができます。シンプルなモノラルのセットアップを使用していて、例えば、一台のアンプで鳴らす場合は、標準の1/4インチ・ケーブルでOUTPUT Aに接続するだけです。広がりのあるステレオ・サウンドを実現したい場合は、OUTPUT AとOUTPUT B、両方を使用して、2台のアンプもしくはPAに送信しましょう。
「薄暗いステージ上でも、色分けされたLEDのサークルは、ループの状態を一目で教えてくれます。」
STOP/UNDO端子
RC-1は、ペダル単体でもすべての機能を活用できますが、STOP/UNDO端子にFS-5U、FS-6、FS-7などの外部フットスイッチを接続すれば、ループの停止、アンドゥ、リドゥを個別にコントロールできるようになります。
CHECKインジケーター
ライブを始める前に、この丸いLEDが真っ赤に点灯していることを確認しましょう。電源が正常に入り、開演の準備ができていることを示しています。ちなみに、リグの電源を入れていく際には、ギター・アンプを最後にオンにすることを忘れないでください。
LOOP STATIONに求める機能は?
すべてのLOOP STATIONにおいて、オーディオを録音し、レイヤーしていくという基本原理は変わりませんが、7つのモデルにはそれぞれ異なる特徴を持っています。試奏のために楽器屋を訪れる前に、自身のスタイルや実現したい音楽、予算、そしてルーパー(練習またはパフォーマンス)をどのように活用するかを想定して、どの機能が自分には欠かせないのかを予め検討しておくことが重要です。
フォーマット
演奏する楽器とどのように演奏するのかで、まずはフロア・ペダルかテーブルトップ・ルーパーのどちらが適しているかが決まります。多くのギタリストは、リフに集中し、足元でループをコントロールすることを好むでしょう。一方で、DJやビートボクサー、プロデューサーがDJブースに設置して手元で操作するために、最適にデザインされたテーブルトップのRC-505もラインナップしています。
トラック数
RC-1やRC-5のようなシングル・トラック・ルーパーは、親しみやすく、操作性も簡潔で、例えば、ギター・パートをシンプルに重ねたいシンガー・ソングライターには十分です。一方で、ボーカル、キーボード、パーカッションなど様々な楽器をレイヤーし、リアルタイムに展開やアレンジを作りあげていくような、よりダイナミックなパフォーマンスを実現したい場合は、RC-505MkIIまたはRC-600の複数のトラックに個別に録音できるモデルをおすすめします。
録音容量
初めてルーパーに触れる際は、おそらく短いフレーズの録音からスタートしていくと思います。その場合、多くのプレーヤーは、RC-1の録音時間(12分)でこと足りるでしょう。しかし、大きなアイデアがあり、将来的に発展した使い方をしていきたい場合は、1.5時間(1トラック)または13時間(全メモリーの合計)の録音が可能なフラグシップモデルがおすすめです。
メモリーとストレージ
RC-1のようなエントリー・モデルは、演奏中のループ・シーケンスのみを保存するため、曲間で都度メモリーを消去する必要があります。予め録音、保存したフレーズをライブで使用する場合、内蔵メモリーまたはSDカード経由の外部ストレージを備えたハイスペックなLOOP STATIONが必要になります。
エフェクト
ループ・フレーズのサウンドを曲の展開と共に切り替えたい場合は、内蔵エフェクトを備えたルーパーがおすすめです。利便性や費用対効果の面だけでなく、新たなインスピレーションを提供してくれます。LOOP STATIONの利点は、1973年以来、BOSSが積み上げてきた、高品位なリバーブやディレイから斬新なビート・スキャッターのようなDJスタイルのエフェクトまで、多くの象徴的なサウンドを同時に手に入れることができることです。
「内蔵エフェクトを備えたモデルを選ぶことは、利便性や費用対効果の面だけでなく、新たなインスピレーションを提供してくれます。」
内蔵リズム
フルバンドのようなサウンドを構築したい、もしくは常に正確なリズムを保ちたいソロ・アーティストにとって、リズム・パターンが組み込まれたルーパーがあることも知っておくべきです。スラッシュ・メタルのためのダブルキック・ドラムからゆったりとしたジャズ・グルーヴまで、音楽のスタイルに応じたリズムで、演奏を盛り上げることができます。
電源
ルーパーをライブ・ハウスで使用する予定はありますか?もしくは、路上でのパフォーマンスに使う予定はありますか?LOOP STATIONは、すべてのラインナップにおいて推奨のPSAアダプターを使用して駆動できます。さらに、RC-1、RC-5、RC-500は、アルカリ電池でも駆動できるため、ストリート・パフォーマンスにももってこいです。
コントロール
すべてのLOOP STATIONは、本体だけで直感的かつ安心して操作できるように設計されていますが、プレーヤーによっては、外部コントロールを追加して、個別に機能を操作したい方もいるでしょう。フットスイッチを追加して停止やアンドゥの機能をアウトボードしたり、エクスプレッション・ペダルを追加してループの音量を足元でコントロールしたりすることができます。
接続性
ステレオもしくはMIDIのセットアップを構築したい場合、必要な入力と出力があることを確認してください。同様に、DAWに接続する予定がある場合は、USBオーディオや録音データ・バックアップの機能を搭載したモデルかを確認しておきましょう。
最適なLOOP STATIONのモデルは?
現在、LOOP STATIONシリーズには7つのモデルがあり、それぞれに特徴があります。ここでは、各モデルの基本的な機能、個性、および対象ユーザーの概要を簡単に説明します。
RC-1
値段も手頃で、最もシンプルな操作性のコンパクト・ペダルRC-1は、初めてのルーパーに最適です。録音、再生、オーバーダブ、ループのアンドゥ/リドゥは、足元でペダル・スイッチをタップするだけですべて操作できます。12分間のステレオ録音時間で、アイデアをすべてキャプチャーでき、視認性の高い24セグメントのLEDループ・インジケーターにより、パフォーマンス中でも一目で状態を確認できます。
- 最適なプレイヤー:ギタリスト、ベーシスト、キーボディスト
- スキル・レベル: 初級
RC-5
RC-1のコンパクトなフォーマットを維持しながら、RC-5はよりクリエイティブな機能を追加したモデルです。32ビットの高音質サウンド、スムーズな操作性、50の内蔵リズム・パターン、13時間のステレオ録音、99のフレーズメモリーなどの実践的なツールを搭載しています。シンプルなコンパクト・ペダルのフォーマットは、初めてのルーパーとしてもおすすめできますが、USBおよびMIDI端子を装備しており、ステージ・ワークやレコーディングなど、長期的な目線でも最適な選択肢となります。
- 最適なプレイヤー: ギタリスト、ライブ・パフォーマ−
- スキル・レベル: 初級から中級
RC-10R
RC-10R Rhythm LOOP STATIONは、豊富なジャンルをカバーした280以上のリズム・パターンを内蔵しています。いわゆるドラムマシンとは異なり、RC-10Rのリズム・サウンドはループと完全同期します。さらに、2系統のステレオ・トラック、外部フットスイッチとMIDIによるコントロールの拡張性により、作曲からパフォーマンスまで、様々な場面で活躍します。
- 最適なプレイヤー: シンガー・ソング・ライター、ライブ・パフォーマー、ギタリスト
- スキル・レベル: 中級
RC-500
2系統のループ・トラック、マイク/ステレオ入力、内蔵リズム、ダイナミックなループFXを備えたRC-500は、リアルタイムに壮大なサウンドスケープを作成できます。MIDIや外部フットスイッチでコントロールを拡張することもでき、創造性を妨げるものは何もありません。
- 最適なプレイヤー: ギタリスト、シンガー・ソング・ライター、マルチ・プレイヤー
- スキル・レベル: 中級
RC-600
LOOP STATIONのフラグシップ・ラインであるこのモデルは、6系統のステレオ・トラックと32ビットの高音質サウンド、マイクを含む複数の楽器を接続できる入出力をサポートしています。また、RC-600の9つのフットスイッチは自由に機能を割り当てることができ、プレイ・スタイルに応じた操作性を確立できます。さらに、USB接続と豊富なループFXも搭載し、自分だけのサウンドを構築できます。
- 最適なプレイヤー: マルチ・プレイヤー、シンガー・ソング・ライター、ギタリスト
- スキル・レベル: 中級以上
RC-202
RC-505MkIIの主要な機能をコンパクトな卓上ユニットに凝縮したRC-202。4系統のINPUT FXとTRACK FXを搭載し、DJやサンプラー・スタイルのエフェクトを演出できます。リアルタイムのループ録音と内蔵メモリーにセットしたサウンドを組み合わせれば、印象的なパフォーマンスを生み出すことができるでしょう。
- 最適なプレイヤー: クラブ・パフォーマー、電子楽器奏者、ビートボクサー、プロデューサー、YouTuber
- スキル・レベル: 中級
RC-505MkII
オリジナルのRC-505からあらゆる面で進化を遂げた、この次世代のテーブルトップ・ルーパーは、5系統のステレオ・トラック、4系統のINPUT FXとTRACK FX、拡張されたI/O、楽曲構築のため強化されたミキシング・コントロールなど、緻密に計算された機能とワークフローで、最も直感的な音楽制作をサポートします。
- 最適なプレイヤー: ビートボクサー、ボーカリスト、プロデューサー、YouTuber
- スキル・レベル: 中級以上
LOOP STATIONを始めるには?
ループの美しさは、誰もが独自の個性を持っていることです。一方で、共通して、あらゆる演奏はこの簡単な3ステップから始まります。
録音
フットスイッチを押して、演奏や歌い始めましょう。フットスイッチをもう一度押すと、録音が停止します。
再生
フットスイッチを押して録音を停止すると、演奏したばかりの音楽フレーズの再生が自動的に開始され、繰り返し再生されます。
オーバーダブ
さて、ここからが音楽的で楽しい部分です。元のループの再生中に、フットスイッチをもう一度押して、2つ目のフレーズをオーバーダビングします。完了したら、もう一度踏み鳴らすと、両方のループが同時に再生されます。そして、同様に繰り返します。
LOOPSTATIONを使用するための5つのヒント
経験豊富なミュージシャンであっても、ループ・テクニックを完成させるにはある程度の練習が必要であることは否めません。以下の5つのプロのヒントが上達の手助けとなれば幸いです。
クリックに合わせる練習
ループ演奏は、タイミングがすべてです。したがって、LOOP STATIONに内蔵リズムがない場合は、メトロノーム・アプリなどをバックグラウンドで再生して、パフォーマンスをしっかりと適切な長さと小節に収めてください。
一拍目で踏む
ループ・ペダルの録音開始のタイミングはわかりやすいと思いますが、録音を停止するタイミングは、多少慣れが必要かもしれません。4/4拍子の小節を録音している場合は、フットスイッチを踏むと同時に演奏を開始し、フレーズ終わりの次の小節の一拍目でもう一度を踏んで録音を終了します。
録音を開始する前に数回フレーズを弾いてみる
ベテランのループ奏者でない限り、冷静に録音を始めるのは難しいかもしれません。その場合、演奏開始と同時に録音を開始するのではなく、フレーズを数回かき鳴らして感触を掴んでから、録音をスタートするのがよいでしょう。
「人前で演奏する前に、操作を徹底的に学び、目を閉じてそれができるようになるまでループ・テクニックを磨きましょう。」
最初のループが最も重要
期待に胸を膨らませたオーディエンスがあなたを見ていると、プレッシャーを感じて、少しずれていることはわかっているのに、それを修正できないほど動揺してしまうこともあるでしょう。しかし、土台が不安定だと、ループ音は常にがたがたに聞こえ、フレーズを追加しても事態は悪化するだけです。
習うより慣れろ
素晴らしいループ・アーティストは、観客と冗談を言いながら、さりげなくマルチ・トラックの交響曲を組み上げ、さも簡単にやってのけているように振る舞います。しかし、舞台裏の絶え間ない練習を垣間見ることはできません。人前で演奏する前に、操作を徹底的に学び、目を閉じてそれができるようになるまでループ・テクニックを磨きましょう。