今年、V-Guitar誕生から30周年を迎えます。先見の明を持つクリエイティブなミュージシャンのニーズに応え続け、絶え間ない進化を遂げてきた画期的な旅路の30年と言えるでしょう。V-Guitarは、1970年代のRolandによる革新的なギター・シンセサイザー技術に始まり、BOSSによる最新の刺激的な進化を経て、常に音楽の可能性を切り拓いてきました。今回は、その歩みを振り返りながら、BOSSのV-Guitar Modeling Systemの最新モデル、2025年登場のVG-800 V-Guitar Processorに至るまでの進化をたどっていきます。
目次
はじめに

V-Guitarについて
もしかすると、あなたはRolandの先駆的な「V」シリーズ製品、例えばV-Drums、V-Stage、V-Piano、V-Accordion、V-Synthなどに馴染みがあるかもしれません。そしてこの記事を読んでいるということは、革命的なV-Guitarに触れたことがある可能性が高いでしょう。しかし、そもそもV-Guitarとは何なのでしょうか?
1995年にRolandのVG-8 V-Guitar Systemとして初登場したV-Guitarのコンセプトは、ギタリストに向けた高度なデジタル・モデリングの新時代を切り開きました。その中心にあったのは、Roland独自のデジタル信号処理(DSP)技術であるComposite Object Sound Modeling(COSM)でした。略称のCOSMとして知られるこの技術は、ミュージシャンに新たなサウンドの可能性を切り拓く道を提供しました。
COSMにより、V-Guitarはギター本体、チューニング、ピックアップ、エフェクト、アンプ、スピーカー、マイク、部屋の音響空間といった実世界の要素を驚くほど正確にモデリングすることが可能になりました。それだけでなく、これまで想像の中にしかなかったまったく新しいサウンドの扉も開いたのです。こうした機能を強力なDSPアルゴリズムとして融合させたV-Guitarは、単なる一つの方法論を超え、無限の創造的選択肢へとつながる入り口となりました。
「RolandのVG-8 V-Guitar Systemは、ギタリストに向けた高度なデジタル・モデリングの新時代を切り開きました」
V-Guitarではないもの
V-Guitarについてよくある誤解の一つは、「MIDI技術に基づいている」または「MIDIピックアップを使っている」というものです。確かに一部のV-Guitar Processorは、演奏信号をMIDIデータに変換して多彩な表現を可能にしていますが、これはV-Guitarの核となる機能ではありません。
MIDIベースのシステムとは異なり、V-Guitarは高度なDSP技術を使ってリアルタイムで動作します。これにより、レイテンシーのない演奏が可能です。BOSSのCOSM技術を用いたFZ-5 FuzzやAC-3 Acoustic Simulatorのようなデジタル・モデリング・エフェクトと同様に、V-Guitarは音を瞬時に生成し、知覚できる遅れはありません。MIDIやサンプル・トリガーではなく、実際のピックアップ信号を強力にリアルタイム処理することがポイントです。
V-Guitarの機器は各自の演奏スタイルや個性の微妙なニュアンスを忠実に捉え、演奏のリアリティを損なうことなく表現します。この革新的なモデリング技術により、豊かで繊細、そして時には異次元的なトーンをリアルタイムに生み出します。V-Guitarはプレイヤーと楽器の間の重要な結びつきを強固にし、卓越したレスポンスと弾きやすさを実現しました。
「この革新的なモデリング技術は、豊かで繊細、そして時には異次元的なトーンをリアルタイムで生み出します」



ディバイデッド・ピックアップについて
V-Guitar技術の可能性を最大限に引き出すには、ディバイデッド・ピックアップ(Divided Pickup)を搭載した楽器が必要です。「ヘックス・ピックアップ」とも呼ばれるこの革新的な設計は、各弦ごとに独立した信号をピックアップして出力し、それぞれを個別に処理できるようにします。標準的なギター・ピックアップを使えるV-Guitar製品もありますが、最新のV-Guitar機能や性能をフルに活用するためには、シリアルGKシステムの使用を強く推奨します。
ディバイデッド・ピックアップは長年にわたり大きな進化を遂げてきました。現在のシリアルGKのモデルには、ギター用のGK-5とベース用のGK-5Bがあり、最先端のパフォーマンスを提供します。6弦ギター、7弦ギター、4弦・5弦・6弦ベースのGKピックアップ内蔵に対応した取り付けキット も用意されています。
※GK5-KITシリーズの国内における単品販売の予定はございません。
以前のディバイデッド・ピックアップは13ピン・ケーブル・システムを使い、やや大きめのデザインでしたが、現在のシリアルGKのユニットはコンパクトで洗練された形状になっています。さらに、BOSSはこれらのシステム間で前後互換をスムーズに行うためのコンバーターも提供しています。
GK-5とGK-5Bは、標準TRSジャックを備え、接続も簡単でスマートで薄型のデザインです。ユーザー自身で購入・取り付けも可能ですが、内部にピックアップ・キットを取り付けるなど複雑な作業が必要な場合は、BOSSとギター/ベース・ブランドのパートナーに相談することをおすすめします。
「V-Guitarの技術を最大限に活用するには、分割ピックアップを搭載した楽器が必要です」
初期の革新
V-Guitar誕生の背景
V-Guitarのコンセプトは、Rolandがギタリストとギターの新たな関わり方を革命的に変えたいというビジョンから生まれました。ピアノが何十年にもわたって進化してきたように、ギターもその伝統的な枠を超えて新たな可能性を広げられると考えたのです。Rolandは、豊かな進化を遂げてきたギターにまだ革新の余地があると信じ、伝統と最新技術を融合させたまったく新しい音の探求方法を目指しました。
Rolandの最大の目標は、ギターの音響的な可能性を拡大しつつ、その表現力を保つことでした。そのために、当時最先端だったDSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)技術をV-Guitarの設計に取り入れました。これにより、楽器の音をかつてないほど細かくコントロールできるようになり、クラシックな音色を再現したり、全く新しい音色を創り出したりできる道が開かれました。V-Guitar Systemは単なる機能の追加ではなく、ギターの可能性を根本から再定義する大きな飛躍でした。
1995年に発売された初代VG-8 V-Guitar Systemの核となる技術は「Variable Guitar Modeling(VGM)」です。これは、伝説的なギター、ピックアップ、アンプ、さらには楽器自体の物理的な素材までもデジタルでモデリングし再現する技術です。これにより、従来は複数のギターや複雑な機材が必要だった多彩な音色を、1台の楽器で手軽に使えるようになりました。VGMは伝統的な音色を忠実に再現しつつ、幅広い音作りを可能にする強力なツールとなったのです。
「HRMはギターの弦の振動から、ピッチやアタック、ビブラートといった微妙な情報を抽出し、まったく新しい音の質感を生み出しました」

VG-8のもうひとつの画期的な機能が、「ハーモニック・リストラクチャー・モデリング(HRM)」です。これは従来の楽器では不可能だったサウンドを生み出すために設計されました。HRMはギターの弦の振動から、ピッチやアタック、ビブラートといった細かな情報を抽出し、まったく新しい音の質感を作り出します。この技術はギター本来の自然な反応性を保ちつつ、プレイヤーが未知の音色の世界を探求できるようにしました。
Rolandはさらに「コンポジット・オブジェクト・サウンド・モデリング(COSM)」という技術でこれらの革新を進化させました。複数のモデリング技術を組み合わせることで、伝統的な音色と未来的な音色の新しい融合を実現したのです。VG-8 V-Guitar Systemは、先進技術とギター演奏の永遠の芸術性を融合させた大胆な一歩であり、Rolandはミュージシャンが創造性を新たな高みへと押し上げつつ、自身の表現の本質を保つことを可能にしました。
「複数のモデリング技術を組み合わせることで、COSMは伝統的な音色と未来的な音色を新たに融合させました」
V-Guitarの起源
V-Guitarの物語は、1970年代後半のRolandによるギター・シンセサイザーの先駆的な取り組みから始まります。この革新的な分野への最初の挑戦は、1977年に発売されたアナログの傑作、GR-500 Paraphonic Guitar Synthesizerでした。これは、伝統的なギター演奏とシンセサイザー技術を融合させる画期的な一歩となりました。
GR-500は、ギター・ヘッドに特徴的な「GR」ロゴが入った専用コントローラー、GS-500 Guitar Controllerと組み合わせて使われました。このコントローラーは、Rolandと名高い日本のギター・メーカーであるフジゲンとの共同開発によるもので、ギターの可能性を再定義する道具として生まれました。
GR-500は独自のアナログ・チップを中心に設計され、ギター、ポリ・アンサンブル、ベース、ソロ・メロディ、外部シンセの5つのセクションを備え、かつてない幅広いサウンドの可能性を提供しました。各セクションはギタリストに複数のパラメーターをコントロールする自由を与えました。Jeff BaxterやMike Rutherfordといったアーティストたちは、伝統的なギター演奏と豊かなシンセサイザーのテクスチャーを融合できるGR-500の能力を高く評価し、ライブやスタジオの両方で積極的に取り入れました。

「Jeff BaxterやMike Rutherfordといったアーティストたちは、伝統的なギター演奏と豊かなシンセサイザーのテクスチャーを融合できるGR-500の能力を高く評価し、積極的に取り入れました」
1980年、Rolandは画期的なGR-300 Polyphonic Guitar Synthesizerを発売しました。これはギタリストにポリフォニックと強化されたアナログ・シンセシスを提供し、1本の弦に2つのオシレーターを持つ6音のポリフォニックにより、豊かな倍音と優れた表現力を実現しました。Pat MethenyやAndy Summersといった伝説的なプレイヤーがGR-300を使用し、豊かな音の広がりや、実験的なサウンドを生み出す力を発揮しました。
同じ年、RolandはGR-33B Polyphonic Bass Guitar Synthesizerを発表しました。これは基本的にGR-300のベース版で、ベーシストに新たなサウンドの可能性を届けています。また、複雑なヘキサフォニック・ディストーションを求めるプレイヤー向けにGR-100 Electric Guitarも登場しました。GR-100は各弦に1つずつ計6つのローパス・フィルターを備え、アナログ・コーラスやビブラート効果も搭載し、驚くべき音色の柔軟性を実現しました。
1980年はまた、さまざまなプレイヤーの好みに応えるギター・コントローラー・モデルも登場しました。G-303、G-808、G-202、G-505などがギタリストに多様な選択肢を与え、ベーシストのためのG-33やG-88コントローラーも発売されました。Rolandとフジゲンの継続的なパートナーシップによって、これらの楽器は高い品質で作られ、Rolandのシンセ技術ともスムーズに連携できるようになっています。
「Pat MethenyやAndy Summersといった伝説的なプレイヤーたちがGR-300を使用し、豊かな音の広がりや、実験的なサウンドを生み出す力を発揮しました」
1984年、Rolandはさらに飛躍し、GR-700 Guitar Synthesizerを発売しました。このモデルはRoland初期のギター・シンセサイザー設計の頂点と評されることも多く、Jimmy Pageのような伝説的ギタリストにも支持され、彼は広告にも出演しました。GR-700はRolandのクラシックなJX-3P/MKS-30を基盤とした、6音デュアル・オシレーター・シンセ・エンジンを搭載しています。
GR-700はギター・シンセシスの新基準を打ち立て、未来的なデザインのG-707 Guitar Controllerと組み合わされました。その洗練された角ばったデザインは、視覚的にも機能的にも非常に印象的でした。1985年にはRolandがGR-77B Bass Guitar Synthesizerを発表し、ベーシストはG-77 Bass Guitar Controllerとともに同じ体験をできるようになりました。
1980年代半ばまでに、Rolandはギター・シンセサイザーのリーダーとしての地位を確立しました。これらの革新は、後のV-Guitarシステムの基盤を築いただけでなく、ギタリストとベーシストにとって可能性の概念を再定義しました。伝統と新たなサウンド、最先端技術を融合させるRolandのビジョンは、世代を超えて多くのミュージシャンに影響を与え、その結果として楽器自体の進化にも大きく貢献しました。
「GR-700はギター・シンセシスの新たな基準を打ち立て、未来的なデザインのG-707 Guitar Controllerと組み合わされました。その洗練された角ばったデザインは、視覚的にも機能的にも非常に印象的でした」
広がる音の世界


新たな音のフロンティア
1980年代半ばから1995年のV-Guitar登場まで、Rolandは音楽シーンを進化させ続けました。あらゆるジャンルのミュージシャンが新しい音の可能性を探求できるよう、技術を積極的に取り入れていきました。エレクトロニックやダンス・ミュージックが一般に浸透し始める中で、実験的なアーティストは最先端の機材から刺激を受け、ギタリストたちはMTV時代に独自性を打ち出すための斬新なアプローチを模索しました。
シンセサイザーはより手に入りやすくなり、シンセ・ポップがチャートを席巻し、音楽制作のスタイルを変えていきました。1983年のNAMMショーでMIDIが初めて登場し、RolandとSequential CircuitsがJUPITER-6とProphet 600を接続したことは有名です。RolandはこのMIDIの可能性にいち早く気づき、ギターにも応用しました。ギター・シンセを広めるため、ユーザーが自分で取り付け可能なGR Guitar Controller Assemblyのピックアップ・キットを発売しました。ストラトキャスター型用のSTK-1(Mark Knopflerが使用)やレスポール型用のLPK-1(Steve Howeが使用)などがあり、ミュージシャンが自分の楽器をシンセ対応にできるようにしました。1985年にはベーシスト向けにBAK-1キットも登場しました。
1986年には、RolandはMIDIの普及を受けてGK-1 Synthesizer Driverを発売しました。これによりギターでシンセサイザーを操作できるようになりました。GM-70 GR-MIDI Converterとともに広告されたGK-1はRolandの革新性を示しましたが、このことがGKシリーズ・ピックアップが「MIDI専用ピックアップ」という誤解を生む一因にもなったかもしれません。
「RolandはMIDIの普及を受けてGK-1 Synthesizer Driverを開発し、ギターでシンセサイザーを操作できるようにしました」
GK-1の後継機であるGK-2 Synthesizer Driverは、1988年によりコンパクトな13ピン・フォーマットを導入しました。これはそれまで一般的だった長方形の24ピン接続に代わる、現代的で標準的なシステムとなりました。同じ年、Rolandの伝説的シンセサイザーD-50をベースにしたGR-50 Guitar Synthesizerラック・ユニットが登場し、Linear Arithmetic Synthesisをギタリストに開放し、ギター機材の歴史の中で、大きな節目となりました。
1992年には、200種類のPCM音色(最大400音に拡張可能)を搭載したフロア型のGR-1 Guitar Synthesizerが発売され、より親しみやすい形態で高度なギター・シンセサイザー技術を実現しました。1994年には、改良版のGK-2A Divided Pickupと、180音(最大360音に拡張可能)を搭載した手頃な価格のGR-09 Guitar Synthesizerが登場し、Rolandの革新への不断の取り組みを示しました。
そして1995年、RolandはV-Guitarの土台を築き、ギター・シンセサイザーのパイオニアとしての地位を確立しました。彼らの革新的技術は、ミュージシャンの創造力の限界を押し広げるとともに、伝統的なギター演奏と未来的な可能性を橋渡ししました。1995年のV-Guitarの発売は、ギター演奏の未来を大胆に切り開く画期的な転換点となりました。

「GK-2 Synthesizer Driverは1988年によりコンパクトな13ピン・フォーマットを導入しました。これは現代的で、標準的なシステムとなりました」

1995年:V-Guitar革命の始まり
1995年は、Rolandの革命的なVG-8 V-Guitar Systemの登場により、ギター技術における画期的な年となりました。GK-2A Divided Pickupと連動して設計されたVG-8は、ギタリストが成し得る表現の幅を大きく広げました。高品質な楽器、アンプ、エフェクト、マイクのシミュレーションに加え、カスタマイズ可能なチューニング機能を備え、かつてない創造的自由をもたらしました。MetallicaのKirk Hammettはその性能を称賛し、「VG-8のパワーに匹敵するものはない」と語りました。このスラッシュ・メタルの先駆者からの支持は、さまざまな音楽ジャンルに渡って広く受け入れられたことを示しています。
1995年はVG-8だけでなく、もう一つの大きな革新もありました。FenderがRolandと提携し、13ピン GKシリーズのディバイデッド・ピックアップを搭載したAmerican Standard Stratocaster 「GR」 Readyをリリースしました。これは、おそらく世界で最も象徴的なギターに、この革新的技術が工場出荷時に初めて組み込まれたものでした。ディバイデッド・ピックアップの普及により、この提携はV-Guitar技術をより幅広い層へ届けることに貢献しました。同じく1995年には、GI-10 Guitar MIDI Interfaceも登場し、ピッチからMIDIへの変換機能を強化、さらなる創造的可能性を拡げました。
「FenderはRolandと提携し、13ピン GKシリーズのディバイデッド・ピックアップを搭載したAmerican Standard Stratocaster "GR" Readyをリリースしました」
伝説的なミュージシャンたちはすぐにVG-8の変革的な可能性に気づきました。特に多用するオルタネイト・チューニングで知られるJoni Mitchellは、ほぼ専用のようにVG-8を採用し、Ken Parkerが特別に製作したギターと組み合わせて使っていました。Parkerはこう説明しています。「私は1996年にJoan(Joni Mitchellの愛称)のためにこの特別なギターを作りました。RolandのGKピックアップを搭載し、新しいVG-8を駆動するためです。VG-8は弦のピッチを電子的に変えるほど強力なシグナル・プロセッサーです。」数十年後の2022年、Mitchellは歴史あるNewport Folk FestivalのステージでBOSS GP-10 Guitar Processorを使用しており、V-Guitar技術が彼にとって欠かせない存在であることがよくわかりました。
VG-8は幅広いプレイヤーに対応していましたが、その多様性はRolandの広告キャンペーンからも読み取ることができます。ある広告ではKirk Hammettに加え、Vernon Reid、Al Di Meola、Steve Warinerが出演し、このシステムの幅広い魅力を示しました。広告には「史上最高のエレクトリック・ギターとアンプ、さらにはオープン・チューニングやアコースティック・ギター、12弦ギター、ベース、シンセ・タイプの音色…それが始まりに過ぎない」とうたわれていました。VG-8は単なるツールではなく、最先端技術で可能になる未来の象徴でした。
RolandはV-Guitarのシステムの革新と拡大を続けました。1995年にはVG8D-1 TraditionalやVG8D-2 Modern 1などのデータ・カードが登場し、多様なジャンルに対応した追加サウンドを提供しました。1996年にはVG8S-1 System Expansion Cardが発売され、ホロウ・ボディ・ギターのモデリングや、VGMとHRMを組み合わせたまったく新しい楽器「VIOギター」などの機能が加わり、音色の選択肢がさらに広がりました。1998年にはVG-8EX V-Guitar Systemがオリジナルの革新的機能を洗練・拡張しました。ギタリストたちが新しい時代を受け入れる中、Rolandの絶え間ない革新への取り組みは、V-Guitar技術の未来を確かなものにしました。
「VG-8は単なる道具ではなく、最先端技術で実現可能な未来の象徴でした」
新たな時代


新千年期のV-Guitar
20世紀から21世紀への移り変わりの中で、Rolandは2000年にVG-88 V-Guitar Systemを発表し、V-Guitarの価値をさらに高めました。革新的だったVG-8の後継機であるこのモデルは、COSM技術を新たな高みへと押し上げ、これまでの楽器では実現不可能だったサウンドの創出を可能にしました。音楽誌Sound on Soundも「真剣に楽しめて、真剣なサウンドを等しく提供する」と評しています。
VG-88は進化を示す多くの機能を備えていました。直感的なインターフェース、内蔵エクスプレッション・ペダル、13ピンGK入力に加え標準ギター入力も搭載し、より使いやすく多用途な体験を提供しました。COSM技術の改良により、ナチュラルな真空管アンプ・モデリングやオーバードライブ・トーン、そして幅広いエフェクトが実現されました。ナイロン弦ギターのモデリングや卓越した音色の多様性は、伝統的なギタリストだけでなく、境界を超えるプレイヤーにも大きな感銘を与えました。
技術的な進歩だけでなく、VG-88はギタリストたちの革新と創造性の高まりをも反映していました。200のプリセットと100のユーザー・パッチ、新しいHRM(ハーモニック・リストラクチャー・モデリング)によるブラス系の音色、独特なヘクサ・パン効果など、VG-88はミュージシャンにこれまで以上の音の探求を促しました。VG-88はまさに、ギターの本質を大切にしながら限界を押し広げるというV-Guitarの精神を体現していました。
「ナイロン弦モデリングのような新鮮なサウンドや比類なき音色の多様性は、伝統的なギタリストだけでなく、枠にとらわれないプレイヤーにも大きな感銘を与えました」
V-Guitarの拡張
2000年、RolandはGR-33 Guitar Synthesizerを発売し、GKシステムの拡張を続けました。1996年に発売されたGR-30 Guitar Synthesizerの後継機となるGR-33は、業界標準のシンセ・モジュールJV-1080に由来する次世代のサウンド・クオリティを提供しました。内蔵エクスプレッション・ペダルと豊富なマルチ・エフェクトを備え、シンセ機能をギター・セットアップに統合したいギタリストにとって多用途な選択肢となりました。これまでのGRシリーズ製品同様、GK用13ピン・ピックアップが必要であり、GK規格が業界標準として定着していることを示しました。
同じく2000年には、GK-2AHのバリエーションであるGK-2AH Divided Pickupも導入されました。機能的にはGK-2Aと同一ですが、取り付け用ブラケットが追加されており、さまざまな楽器への装着が容易になりました。この革新は、Rolandがディバイデッド・ピックアップ技術の改良に注力し、互換性と使いやすさを広げていることを示しています。GKピックアップはV-GuitarおよびGRシリーズの体験において中心的な役割を果たし、伝統的なギターとRolandのデジタル・システムが持つ未来的な可能性との架け橋となっています。

「GKピックアップはV-GuitarおよびGRシリーズの体験において中心的な役割を果たし、伝統的なギターとRolandのデジタル・システムが持つ未来的な可能性との架け橋となり続けました」


V-Guitarとアンプ
2000年に登場したRolandのVGA-7 V-Guitar Amplifierは、RolandのVG-8やVG-88システムで先駆けて採用された革新的なCOSMテクノロジーを統合し、ギター・アンプの分野で大きな進化を遂げました。このデジタル・モデリング・アンプは、アナログ・ライクな操作性と最新のデジタル機能を融合させ、ギタリストの装備に新たな可能性をもたらし、単体機器で実現できることの基準を塗り替えました。
伝統的なプレイヤーと現代的なプレイヤーの両方を念頭に設計されたVGA-7はハイブリッドなアプローチを採用。標準ギター入力により、アンプとキャビネット・モデリングに直接アクセスでき、さらに13ピンGK入力によってRolandのGK-2A Divided Pickupを装着したユーザーはCOSMによる楽器およびピックアップ・モデリングのポテンシャルを最大限に引き出せました。
VGA-7の革新的な機能は、多彩な音作りとトーン形成で先駆者的存在となり、Roxy MusicのPhil Manzaneraのような著名ギタリストからも注目を集めました。20種類のCOSMアンプモデルを搭載し、ヴィンテージおよびモダンな真空管アンプ、ソリッド・ステート・アンプ、さらにはアコースティック楽器用アンプの音色をキャビネット・シミュレーション付きで再現。各アンプ・モデルはゲイン、ボリューム、3バンドEQ、プレゼンスのカスタマイズが可能で、アナログ・アンプの手触りを忠実に模倣しています。
「VGA-7の革新的な機能は、多様性とトーン形成の分野で先駆者となり、Roxy MusicのPhil Manzaneraのような著名なギタリストの注目を集めました」
COSMインストゥルメント・モデリングにより、クラシックなエレキ・ギターやアコースティック・ギターから、実験的な「ギターとシンセが融合した」ハイブリッドまで、26種類のシミュレートされた楽器タイプにアクセスできました。プレイヤーはピックアップの種類や位置のシミュレーションをブレンドしながら試すことができ、ナッシュビル・チューニングや12弦ギター、ユーザー・カスタマイズのチューニングといった即時のオルタネイト・チューニングも体験できました。65W + 65Wのステレオ出力を持つデュアル12インチ・スピーカーを通して、VGA-7は多彩な音作りだけでなく、その革新的なトーンをクリアかつパワフルに届けました。
2001年に登場した65ワットの1×12 Roland VGA-5 V-Guitar Amplifierは、画期的なVGA-7の後を受け、よりシンプルで伝統的な標準ギター入力を使うプレイヤーに向けた設計となりました。GK対応ギター向けではなく、シンプルさと扱いやすさを重視しながらも、V-Guitarシリーズを象徴する高度なCOSMテクノロジーは維持されました。
VGA-5は11種類のCOSMアンプ・モデルと11種類のスピーカー・キャビネット・モデルを搭載し、Roland JC-120 Jazz Chorusやビンテージ・アメリカン・ツイード、そして英国の有名なコンボやスタック・アンプの音色まで、幅広いトーンを提供しました。また、内蔵のアコースティック・ギターとアコースティック・アンプのモデリングも楽しめます。

「65ワット1×12のRoland VGA-5 V-Guitarアンプは、画期的なVGA-7に続き、よりシンプルで洗練されたアプローチを採用しました」

一方、VGA-5の内蔵エフェクト・セクションには、リバーブ、コーラス、タップテンポ付きディレイ、そして多彩なマルチ・エフェクトが搭載されていました。直感的なノブ操作、プログラム可能なユーザー・メモリー、ライン・アウトも備え、VGA-5は革新と伝統の理想的なバランスを実現し、ステージやスタジオで活躍する多用途なツールとなりました。
2002年に登場したRoland VGA-3 V-Guitar Amplifierは、先代機の革新的なCOSMテクノロジーをよりコンパクトで手軽なパッケージにまとめました。この50ワット、1×12のコンボアンプは、従来のギタリストとGKピックアップ・ユーザーの両方を対象に設計されています。
VGA-7同様、VGA-3はCOSMによる幅広い楽器とピックアップのモデリングを提供し、標準ジャック入力にも対応しているため、GKピックアップを持たないプレイヤーでもアンプの多彩なCOSMアンプ・モデリングを活用できます。
また、VGA-3は豊富な内蔵エフェクトを備え、上級者向けのサウンドとパフォーマンスを実現する多機能で頼れる一台でした。
「VGA-7と同様に、VGA-3もCOSM技術による豊富な楽器およびピックアップのモデリングを提供しました」
限界を押し広げる
BOSSの登場
2001年、BOSSは革新的なCOSM搭載のツイン・ペダル2機種でGKピックアップの選択肢を広げました。どちらのペダルも、頑丈なBOSSペダル形式でシンプルなノブ操作を採用しています。
OC-20G Poly Octaveはポリフォニック・オクターブエフェクトを導入し、各弦ごとに異なるオクターブ設定が可能になりました。これにより、ギターとベースの組み合わせや豊かなオクターブ・トーンを伴うコード演奏など、創造的な表現の幅が広がりました。
WP-20G Wave ProcessorはSaw Lead、Square、Ring Mod、Slow Gear、Sitar、Acousticの6つのトーンを備え、ディレイやコーラスなどのオプションもあり、音の表現力をさらに高めました。
2000年代初頭はV-Guitar技術にとって非常に活発な時期でした。Rolandは常に限界に挑戦し、伝統と革新を融合させたツールを提供し続けました。高度なギター・シンセサイザー、創造的なエフェクト・ペダル、多彩なアンプなどを通じて、GKプラットフォームとV-Guitarは現代ギター文化に欠かせない存在となり、プレイヤーにかつてない音色の可能性をもたらしました。
これらの革新が進化するにつれて、V-Guitarは音楽技術の未来を形作る重要な役割を確立していきました。

「WP-20G Wave Processorは、Saw Lead、Square、Ring Mod、Slow Gear、Sitar、Acousticの6種類のトーンを提供し、さらにディレイやコーラスのエフェクトオプションで音の表現力を高めました」


V-Bassの革命
2002年までに、革新的なV-Guitar技術は先進的なギタリストの間で確固たる地位を築き、ベーシストにもその革新的な体験の扉を開きました。Rolandはこれに応え、4弦、5弦、6弦ベース用に各弦ごとに個別出力が可能な初のベース専用GKピックアップ、GK-2B Divided Pickupを発表しました。
この革新により、新たに発売されたV-Bassシステムを通じて高度な処理が可能となり、驚異的なベース・ギターのモデリング、マルチ・エフェクト、オリジナルな音色のテクスチャーといった比類なきサウンドの可能性を実現しました。標準的なエレクトリック・ベースへの取り付けも簡単で、GK-2Bは最先端の技術をプレイヤーの手元にもたらしました。また、より統合的な設計を求めるユーザー向けには、洗練された内蔵型のGK-KIT-BG Divided Pickup Kitも提供されました。
このベース革命の中心となったのが、革新的なCOSM Bassテクノロジーを搭載したRoland V-Bassのシステムです。V-Guitarと同様の高度なモデリング技術を活用し、このフロア・タイプのユニットはベーシストにアップライト・アコースティック・ベースやフレットレス・ベースから、象徴的なエレクトリック・トーン、シンセ・ベースまで、多彩なクラシックかつ現代的なサウンドへと楽器を変貌させる力を与えました。
「標準的なエレクトリック・ベースに簡単に取り付けられるGK-2Bは、最先端の技術をプレイヤーの手元に直接もたらしました」
ベーシストはバーチャルのボディ・タイプやピックアップ構成を自由に組み合わせて、自分だけのカスタム楽器を作り出すこともできました。同様に注目すべきは、ピッチ・シフト機能で、各弦ごとのピッチを自在に変えられるため、瞬時に別のチューニングに切り替えたり、実験的な効果を生み出したりできました。
V-Bassシステムはベーシストの創造の幅を大きく広げ、RolandのV-Guitarのビジョンが6弦を超えたものであることを証明しました。
GK-2Bが登場してから、ベース・プレイヤーは早い段階でアップグレードできるようになりました。2004年にRolandはGK-3B Divided Bass Pickupをリリースし、性能と信頼性を向上させました。さらに2005年には内部設置用のGK-KIT-BG3 Divided Bass Pickup Kitが登場しました。
ギタリストにも2004年にGK-3 Divided Pickupが提供されました。これはGK-2Aの進化版です。この頃には、Divided Pickupは冒険心あふれるミュージシャンの間でますます一般的になり、高度なモデリングや革新的なチューニング機能など、多大な創造の可能性を開くデバイスとして認識されていました。


「2004年にRolandは、性能と信頼性を向上させたGK-3B Divided Bass Pickupをリリースしました」
伝説のコラボレーション
2007年、RolandとFenderは再びタッグを組み、アメリカ製のVG Stratocasterをリリースしました。この画期的なギターは内蔵のGKピックアップを備え、オンボード処理と通常のジャック出力を搭載。プレイヤーはスイッチひとつでモデリング楽器やチューニングを瞬時に切り替えられるV-Guitarテクノロジーにアクセスできました。洗練されたデザインと直感的な操作系は、伝統的な職人技と現代の革新がシームレスに融合していることを示しています。
VG Stratocasterの革新の中心には、選択可能なモード・ノブがあり、これにより5つの異なる楽器エミュレーションが解放されました。標準的なStratocasterの音色、デジタル・モデリングされたStratocasterサウンド、本格的なTelecasterの響き、力強いハムバッキング・トーン、そして温かく共鳴するアコースティック・シミュレーションが含まれます。さらに、5ウェイブレード・セレクターは豊富なトーン・バリエーションを提供しました。
楽器モデリング機能を補完するのが、VG Stratocasterのオンボード・チューニング・コントロールです。これにより、弦を物理的に調整することなく、オルタネイト・チューニングに瞬時に切り替え可能でした。
プレイヤーは、標準チューニング、よりヘビーなリフに適したDrop D、スライドやフォーク・スタイルに使えるOpen G、クリエイティブな探求に向くD Modal、深く広い音域のBaritone、そしてクラシックな12弦ギターの煌めきを再現する12弦モードを簡単に切り替えられました。
モデリング楽器と直感的なチューニング・オプションを組み合わせることで、VG Stratocasterは多彩で強力なギターとなりました。
「楽器モデリング機能を補完するのが、VG Stratocasterのオンボード・チューニング・コントロールであり、これにより弦を物理的に調整することなく瞬時にオルタネイト・チューニングに切り替えることができました」
BOSSのLegendシリーズ
Fenderとの画期的なコラボレーションを基盤に、BOSSは2007年にLegend Seriesというコンパクト・ペダル・シリーズを発表しました。このシリーズはギター史上最も象徴的なアンプ2機種を称えたもので、登場したのはFBM-1 Fender ’59 BassmanとFDR-1 Fender ’65 Deluxe Reverbでした。両機種ともV-Guitarの背後にある革新的技術と同じCOSMテクノロジーを搭載しています。
Legendシリーズは2009年にさらに拡充され、伝説的な1963年製Fender Spring ReverbをCOSMで忠実に再現したBOSS FRV-1 Fender Reverbがリリースされました。FRV-1は、この象徴的なサウンドをコンパクトでペダルボードに最適な形でデジタル的に精密にエミュレートしています。販売完了となった現在でも、FBM-1、FDR-1、FRV-1は非常に人気が高く、これらの時代を超えたFenderクラシック・アンプの音色を忠実に再現する能力が高く評価されています。

「現在でも、FBM-1、FDR-1、FRV-1は中古市場で非常に人気があります」
大きな飛躍


新たなV-Guitarの転換期
2007年はCOSM技術とV-Guitarにとって多忙な年でした。同年に発売されたRoland VG-99 V-Guitar Systemは、ギター・モデリングとパフォーマンスにおける大きな飛躍を示しました。3つのプロセッサーで駆動され、リボン・コントローラーやD BEAMなどの高度な操作機能を備え、ギタリストにより多様な表現力を提供しました。VG-99のデュアル・モデリング・エンジンは、ギターやアンプのモデルを動的に切り替えたり重ねたりでき、新たなCOSMエレクトリック、アコースティック、ベース・ギター・モデルや、クラシックなGR-300のようなシンセ・ウェーブも搭載。さらに、個々の弦に異なるギター・サウンドを割り当ててユニークなセッティングを作ることも可能でした。
VG-99はまた、オルタネイト・チューニング機能も備え、任意のバーチャル・ギターでカスタム・チューニングを瞬時に切り替えられました。リアルタイム・コントロールにより、ピッキングのダイナミクスに応じた音色変化が可能で、柔らかなアコースティック・トーンからヘヴィなディストーションへの移行も自在です。ライブ・パフォーマンス向けに設計され、スタンドに取り付けて使いやすく、FC-300 Foot Contorollerがステージでの操作性を高めました。ギターからMIDIへの変換、USBおよびS/PDIF対応、プロフェッショナルな出力端子など、多彩な機能が備わり、ライブとスタジオの両方で使いやすい直感的なインターフェースを維持しています。
続いて2008年には、VB-99 V-Bass Systemが2002年のV-Bassを引き継ぎ、「ベースの録音と演奏における驚異的な新可能性」を提供しました。VG-99同様に高度な処理能力を持ち、ヴィンテージやモダン・ベース、アンプ、シンセ・ベース、エフェクトの幅広いCOSMオプションを備え、エレキ・ギターのモデリングも可能にし、ベーシストの音の幅を大きく広げました。
「VB-99 V-Bass Systemは、2002年のV-Bassを引き継ぎ、『ベースの録音と演奏における驚異的な新たな可能性』を提供しました」
技術の融合
2011年に発売された Roland GR-55 Guitar Synthesizer は、高品位なPCMシンセサイザーと COSMモデリング の力を組み合わせることで、ギター・シンセシスに革命をもたらしました。この融合により、両方の特長を生かしたユニークなサウンドの組み合わせが可能になりました。たとえば、標準的なディストーション・ギターにシンセ・リードやオルガンを重ねたり、フルートやシンセ・ベルをアコースティック・ギターに組み合わせたりと、新鮮で刺激的なトーンを生み出すことができます。COSMアンプ や エフェクト・ユニット の膨大なバリエーションにより、クラシックなギター・アンプの音色から実験的なノイズまで幅広く探求でき、これまでにないレベルの創造的自由が得られました。
GR-55 を際立たせたもうひとつの要素は、新たに開発されたギター・ピッチ検出技術です。このシステムは、6本の弦それぞれからの独立した信号を高速で解析し、音源からのレスポンスを素早く正確に実現しました。さらに、ピッキング・ポジションや、ピックと指弾きによるニュアンスの違いまで検出することができ、これはまさに V-Guitarテクノロジー の真骨頂といえる表現力です。この高度な検出能力により、演奏者はより広く自然な表現が可能となり、従来のギター・シンセサイザーの枠を超えたパフォーマンスが実現されました。


「GR-55 は、ピッキングの位置や、ピックで弾いた音と指で弾いた音の違いといったニュアンスまで検出することができました」



V-Guitar、成層圏へ
2012年、RolandとFenderは伝説的なコラボレーションを継続し、2本の新しいギターを発表しました。GC-1 GK-Ready Stratocasterはディバイデッド・ピックアップを内蔵し、GR-55 Guitar Synthesizer と組み合わせることを前提に設計されましたが、通常のStratocasterとしても使用可能でした。2007年のVG Stratocasterと同様、G-5 VG StratocasterはRolandのCOSMテクノロジー を搭載し、クラシックなStratサウンドに加え、新たなエレクトリックおよびアコースティック・サウンド、さらにはオルタネイト・チューニングや12弦モードといった機能も提供しました。2013年には、G-5A-CAR VG Stratocasterが限定版として登場。Fenderの米国コロナ工場で製造され、キャンディ・アップル・レッドで仕上げられ、この革新的なパートナーシップの系譜をさらに広げました。
V-Guitar ペダル
2013年には、Rolandがあまり知られていないV-Guitar用ペダル2種、GR-D V-Guitar DistortionとGR-S V-Guitar Spaceをリリースしました。これらはいずれもGKピックアップを搭載したギター用に設計されており、GK入力端子 により各弦を個別に処理することで、演奏者にユニークなサウンド・シェイピングの可能性を提供しました。
GR-D V-Guitar Distortion は、GK処理によってしか得られない大胆なディストーションとシンセ・トーンで高く評価されました。VG Distortion 1、VG Distortion 2、Poly Distortion、Synthモード を搭載し、ゲイン、カラー、トーンの各ノブで超レスポンシブな音作りが可能でした。Solo機能 によりリード用の音量とプレゼンスをブーストでき、ライブにおける多用途なツールとなりました。
GR-S V-Guitar Space は、広がりのある空間的なトーンを生み出し、Crystal、Rich Modulation、Slow Pad、Brilliant Clean(マルチ・ストリング・エミュレーション) などのモードを収録。カラーとトーン・ノブにより表現力豊かな音作りが可能で、Freeze機能 を使えばサウンドを保持してリードのバッキングやエフェクトとして使用できます。両ペダルとも、V-Guitarの真骨頂であるリアルタイムDSP処理 を実現し、レイテンシーのない操作性 を提供しました。
「GR-S V-Guitar Spaceは、Crystal、Rich Modulation、Slow Pad、そしてBrilliant Cleanのマルチストリング・エミュレーションといった、広がりのある空間的なトーンを生み出しました」
進化の力
BOSSがバトンを引き継ぐ
2014年、BOSSはCOSM搭載のGP-10 Guitar Processorを発売し、V-Guitarの革新をリードする立場となりました。この画期的なプロセッサーはRoland GK対応ピックアップと併用する設計で、ギターをさまざまなクラシックなエレクトリック/アコースティック・ギター、ベース・ギター、さらにはRoland GR-300のようなアナログ・モデリング・シンセサイザーに変身させることができました。
GP-10を使えば、オープン・チューニング、12弦サウンド、そしてモダンなヘヴィロックスタイルに合うロー・チューニングなど、さまざまな変則チューニングに瞬時にアクセス可能でした。高度なインストゥルメント・モデリング・プロセッサーであると同時に、強力なマルチ・エフェクターでもあるGP-10は、類まれな柔軟性を誇ります。また、BOSSのフラッグシップ機に基づいた高品位なCOSMアンプを内蔵し、あらゆる用途に対応するプロレベルのトーン・シェイピングが可能です。
USB接続にも対応し、デジタル制作環境との統合もスムーズ。複数チャンネルのオーディオ(各弦の出力を個別に)をDAWに直接録音できるほか、ギターからMIDIへの変換機能も搭載しており、PCベースのソフト・シンセの演奏も可能です。標準のギター入力とGK対応ピックアップの両方で使用できるため、非常に汎用性が高いのも特徴。GK-3 Divided Pickupとのセットと単体の両方で提供され、あらゆるギタリストに比類なき柔軟性をもたらしました。


「GP-10はデジタル制作環境にスムーズに統合でき、各弦の出力を含むマルチ・チャンネルのオーディオを、DAWに直接録音することが可能でした」

進歩的なパートナーシップ
2017年、BOSSはスウェーデンのギター・メーカーStrandbergと提携し、超未来的な楽器「V-BDN VG-Strandberg」を開発しました。このモデルは、Strandbergの最先端ギター・デザインとBOSSの高度なV-Guitarテクノロジーを融合させたものです。この革新的なコラボレーションは、すでにその人間工学的デザインとプログレッシブ・ギタリストに支持されていたStrandberg Boden J Standard 6弦モデルをベースにしています。
V-BDNにはモード・セレクターと5ウェイ・スイッチが搭載されており、伝統的なハムバッカーやシングル・コイル・ピックアップの音色から、モデリングされたアコースティック・ギター、ベース、シタール、シンセ・サウンドまで、多彩なトーンにアクセスできます。なかでも注目すべきは、Rolandの伝説的なアナログ・ギター・シンセGR-300の3種のバリエーションで、1980年代の象徴的なシンセ・トーンを、卓越した表現力と反応性で再現していました。
V-BDNで最も革新的な機能のひとつが、チューニング・ノブによる瞬時のバーチャル・リチューニングでした。ダイヤルを回すだけで、セミトーン・ダウン、ホール・ステップ・ダウン、ドロップD、ドロップC#、ドロップCなどのオルタネイト・チューニングに切り替えることができ、幅広い音楽スタイルへの対応力を大きく拡張しました。それでいて、Strandbergらしい快適な弾き心地と洗練された美しさはそのまま保たれています。
「V-BDNの最も革新的な機能のひとつは、チューニング・ノブによって楽器のバーチャル・リチューニングを瞬時に行えることでした」
新たな時代の幕開け
2020年、BOSSはSY-1000 Guitar Synthesizerの発売により、ギター・シンセシスの世界に革命をもたらしました。この画期的なクリエイション・マシンは、ギタリストとベーシストのためのサウンドデザインの限界を押し広げています。数十年にわたる研究開発と最新のソフトウェア・ハードウェア技術を融合させたSY-1000は、新たに開発されたダイナミック・シンセと刷新されたモデリング技術を組み合わせ、音楽表現の新たな章を切り開きました。
専用設計のDSP、高度なサウンド・エンジン、次世代GKインターフェースにより、比類なきオーガニックな演奏体験を実現。SY-1000は3つの同時発音楽器を搭載し、それぞれが強烈なアナログ風リード、温かいパッド、動きのあるシンセ・テクスチャー、そして豊かにモデリングされたエレキおよびアコースティック・トーンを作り出せます。これらの楽器はレイヤー、パンニング、チューニングを独立して設定でき、幅広く複雑なボイシングが無限のインスピレーションを生み出します。
BOSSとRolandの革新の遺産を受け継ぎつつ、SY-1000は歴史的なサウンドの刷新バージョン、例えばクラシックGR-300などを収録し、高度なギター・ベース・モデリングを実現。プレイヤーはエレキ、アコースティック、ベースギターの膨大なライブラリにアクセスでき、それぞれ独立したチューニング、EQ、バーチャル・アンプ設定を行えます。また、VIO Guitar機能により、ギター信号を弓で奏でる楽器のような音色に変換可能です。
フラッグシップのGT-1000 Guitar Effects Processor由来の高品質エフェクトとアンプを備え、最適なサウンド・メイクをサポート。大型LCD画面、割り当て可能なフットスイッチ、カスタマイズ可能な出力端子により、直感的な操作性と柔軟な設定が可能です。さらに、BOSS TONE STUDIOソフトウェア・エディターの補助により、SY-1000はミュージシャンの創造性を新たな高みへと導きます。


「BOSS TONE STUDIOソフトウェア・エディターの補助により、SY-1000はミュージシャンの創造性を新たな高みへと導きます」


V-Guitarの革新、30年
30年にわたるV-Guitarの革新は、2025年のVG-800 V-Guitar Processorのリリースで新たな頂点を迎えました。VG-800は、最先端のシリアルGKインターフェースとBOSSの卓越したモデリング技術およびエフェクト技術を融合させた、ギター&ベース・テクノロジーの画期的な進化です。
コンパクトでペダルボードに最適なこのパワフルな機材は、レイテンシーのないパフォーマンスと独立した弦ごとの処理を可能にし、ミュージシャンが理想の楽器サウンドを自在に作り出せます。エレキやアコースティック・ギター、ベース、バンジョー、シタールの超リアルなモデリングからオリジナルのVIOサウンドまで、多彩な音色を無限に提供。さらに、クラシックなRoland GR-300アナログ・ギター・シンセの見事なエミュレーションも搭載し、懐かしいヴィンテージ・サウンドと現代の革新を融合しています。
さらにVG-800は、Dual GuitarおよびDual Bass機能により、異なる2つの楽器の要素を組み合わせて使用可能です。クリーンなシングル・コイル・トーンと歪んだハムバッカーを弦ごとに分けたり、それらを強力なハイブリッド・サウンドに組み合わせたりできます。
サウンドデザイン愛好者向けに設計されたVG-800は、バーチャル楽器をカスタマイズできる直感的なツールを提供。弦ごとのピックアップ位置、共鳴、チューニングなどのパラメーターを細かく調整し、個性的なトーンを作り上げられます。フラッグシップBOSS製品由来の豊富なアンプ&エフェクト・ライブラリは、複雑な信号チェーンにも対応し、あらゆるセットアップにスムーズに組み込めます。
「さらなる限界突破として、VG-800のDual GuitarおよびDual Bass機能は、異なる2台の楽器を同時に使用することを可能にします」
遺産と未来
V-Guitarの遺産
RolandのV-Guitarのシステムはギター技術の先駆者として、デジタル処理へのシフトを牽引し、現代ギタリストの可能性を再定義しました。モデリング技術、デジタル・エフェクト、シンセ統合といった革新を通じて、V-Guitarのシステムはデジタル技術がギターの有機的な感触やサウンドを高め、補完できることを証明しました。
このビジョンは、マルチ・エフェクト・ペダル、デジタル・アンプ、モデリング・アンプなどの専門機材開発の基盤を築き、これらは現在の機材市場で標準となっています。Rolandのデジタル処理への初期の挑戦は、実現可能であるだけでなく非常に魅力的であることを示し、ギタリストにとって新たな時代の扉を開きました。
世代を超えたインスピレーション
V-Guitar システムは、ミュージシャンに与える創造的可能性に持続的な影響を与えています。柔軟なモデリング、MIDI機能、シンセ統合を組み合わせることで、あらゆるレベルのミュージシャンにとって強力なツールとなりました。このシステムは、熟練のプロから若手ギタリストまで、新たな表現の領域を探求するきっかけを提供しています。
V-Guitarの直感的なインターフェースと無限の創造力は今もインスピレーションの源であり、ミュージシャンが伝統的な枠を超え、新たな音楽表現の方法を模索することを可能にしています。こうしてV-Guitarシステムは、従来のギター音楽と最先端技術の橋渡し役として、可能性の限界を押し広げ続けています。



「V-Guitarシステムは、ギター音楽における可能性の限界を押し広げ続ける重要な役割を果たしており、従来のスタイルと最先端技術をつなぐ架け橋となっています」

デジタルの先駆者たち
V-Guitar Systemがもたらした最も重要な影響の一つは、ギター業界をよりデジタル化へと導いたことです。Roland/BOSSは、デジタル技術をギターに融合させつつ、楽器本来の有機的な感触を保ち、無限の表現力を実現できることを示しました。
この変革により、デジタル処理は現代のギター・セットアップの基盤となり、エフェクト・ペダルからモデリング・アンプまで幅広く浸透しています。かつては未来的なコンセプトだったものが、今では現代ギター演奏の不可欠な要素となり、デジタルの革新がギター音楽の進化を推進し続けています。
現在のV-Guitar
V-Guitar Systemの遺産は今も生き続けており、BOSSがこの革新的技術のバトンを受け継いでいます。VG-800 V-Guitar ProcessorやシリアルGKシステムは、現代の音楽シーンを形作る進化の象徴です。
ミュージシャンやプロデューサーは、ライブ・パフォーマンスからスタジオ制作まで、実践的な用途でV-Guitarツールを日常的に取り入れています。V-Guitarを使って幅広い楽器やサウンドを再現できる能力は、伝統的なジャンルから実験的な音楽まで、あらゆるアーティストの創造性を支えています。
「VG-800 V-Guitar ProcessorとシリアルGKシステムは、現代の音楽シーンを形作り続ける技術の進歩を象徴しています」
斬新さから必需品へ
V-Guitarテクノロジーは絶えず進化を続け、ギター・テックの最前線を走り続けています。ギター・モデリングの新たな発展、強化されたシンセ機能、MIDI統合などの技術革新により、V-Guitarはミュージシャンにとって欠かせない存在となっています。
エレクトリック・ギターの音楽における位置づけは、単なる新奇さから必需品へと変わり、伝統的なギター演奏と革新的なテクノロジーの架け橋となっています。V-Guitarはもはや実験用のツールだけでなく、ギター音楽の未来を担う重要な存在となっています。
未来を創り続ける
Roland/BOSSのV-Guitarシステムは、音楽テクノロジーにおける最も革新的な開発の一つです。モデリング、デジタル処理、シンセ統合の組み合わせは、多くのギア革新の土台となりました。ミュージシャンとテクノロジーの結びつきを深め、新たな創造的探求の道を開くことで、V-Guitarシステムはギター音楽の進化に大きな役割を果たしています。
音楽テクノロジーの歩みにおける大きな転機として、V-Guitarは今後もギターの革新を形作り続け、ミュージシャンが楽器の可能性の限界を押し広げる刺激を与え続けるでしょう。

