2018年、BOSSはかつてないコンセプトで設計したプロフェッショナル・ギター・アンプの Nextone シリーズを発表しました。多くのアンプがサウンド・キャラクターの確立をプリアンプでのトーン・シェイピングに依存しているのに対し、Nextoneはパワーアンプ部分にフォーカス。これにより、愛すべきヴィンテージ・アンプの特徴的なトーンとダイナミックなレスポンスに加え、安定したサウンドと信頼性の高いコントロールを獲得しました。さらに、レコーディングにも便利なライン・アウト、拡張フット・コントロール、USB端子など実用的な機能も装備。バージョン3へのアップデート により、Nextoneシリーズの機能面がいかに充実したのか見てみましょう。
4種類のパワーアンプ・タイプ
Nextoneの最大の特徴のひとつに、4種類のパワーアンプから好みのタイプを選択できる点が挙げられます。アナログのクラスA/Bパワーアンプ回路は、クラシックな6V6/6L6/EL84/EL34の4タイプから選択して使用できます。BOSS/Rolandの独自技術“Tube Logic”でデザインされたパワーアンプの種類を変更すると入力からスピーカーまでの回路全体が変化。これによりアンプの各セクションが互いに影響を及ぼす挙動自体も変化するため、音色だけでなくフィーリングやレスポンスまでダイナミックに再現します。
さらに、Nextoneにはプレイヤーが探求できる深淵なるカスタマイズの世界が広がっています。キャラクター・シェイプ、プリアンプEQ、ブースト・タイプ、カスタム・モード用の独立したエフェクト設定など、様々な設定変更が可能なのです。
“Tube Logic”でデザインされたパワーアンプの種類を変更すると入力からスピーカーまでの回路全体が変化。これによりアンプの各セクションが互いに影響を及ぼす挙動自体も変化するため、音色だけでなくフィーリングやレスポンスまでダイナミックに再現します。
現代に相応しいヴィンテージ・パワー
著名な真空管アンプは、4つの出力管トポロジー(パワー・アンプの動作方式のこと)のいずれかをベースに設計されており、それぞれが特徴的なキャラクターを有しています。例えばEL84ベースのパワーアンプ・セクションは、ブリティッシュ・コンボアンプ特有の鈴鳴りを連想させます。また、マスター・ボリュームを持たないブリティッシュ・スタック・アンプに搭載されているEL34パワーアンプは、その象徴的とも言えるロック・テイスト溢れるダイナミックなサウンドを生み出すためには必要不可欠です。
6V6を使用した回路では、低ワットのアメリカン・コンボ・アンプのような、適度なコンプレッション感とスムーズなオーバードライブ・サウンドを再現。一方、大胆な6L6パワーアンプ・セクションは、よりハイパワーなアメリカン・コンボ・アンプを連想させ、鮮明なサウンド、威厳をも感じさせる音圧、そして豊かな鳴りを提供します。Nextoneは、それら偉大なるアンプ・キャラクターを、どれかひとつに絞る必要はありません。革新的なアナログ・パワーアンプ・セクションを4種類搭載し、これらのサウンドを余すところなく再現、好みのタイプに切り替えて演奏ができます。
進化し続けるNextone
Windows/Mac対応の専用エディター「Nextone Editor」を使用することで、より高いレベルのカスタマイズが可能になりました。プレイヤーは搭載されているエフェクトを調整したり、バイアスやサグ、EQなどのパラメータを好みに合わせて微調整したり、自分のアンプをバーチャルにカスタマイズすることができます。
2019年、BOSSはバージョン2をリリースし、キャラクター・シェイプ、プリ/ポスト別プリアンプEQ(10バンド・グラフィック含む)、7種類の新たなブースト・タイプ、カスタム・モードの独立エフェクト設定など、多数の新機能を搭載しました。
ようこそ、Version.3へ
Version.3のソフトウェア・アップデートは、Nextone StageとNextone Artistが対象。無償でダウンロード可能です。このアップデートは、パワーアンプ・セクションに2つの重要な機能を追加し、さらなる演奏体験をプレイヤーにもたらします。
- パワーアンプのバイアス・オプションを選択可能
- POWER CONTROL機能の最小値が0.2Wへと拡張
"6V6を使用した回路では、低ワットのアメリカン・コンボ・アンプのようなオーバードライブ・サウンドを再現。6L6パワーアンプ・セクションは、よりハイパワーなアメリカン・コンボ・アンプを連想させます。"
固定バイアス、自己バイアスの比較
パワーアンプ・バイアスとは何でしょうか。真空管アンプにおけるバイアスとは、パワー管が正しい電圧を受け取るようにする電子回路のプロセスです。これにより、真空管アンプは最適な動作条件と音色を得ることができるのです。
一部の真空管アンプは、固定バイアス回路を採用しています。これは、指定されたパワー管の種類さえ守れば、ユーザー側は追加の調整をすることなく真空管を交換できることを意味します。他には、自己バイアスを調整することで、より多くの真空管を調整なしで使用できる真空管アンプも存在します。
Version3では、Nextone ArtistとNextone Stageにパワーアンプ・バイアス・オプションを追加し、フラッグシップ・モデルのNextone Specialと同じようにパワーアンプ・バイアスを選択できるようになりました。この設定もまた、回路レベルのカスタマイズをプレイヤーの手元で実現するために非常に重要です。バイアス設定は、アンプのニュアンスやフィーリングを微調整するための手段でもあります。
"固定バイアスはよりシャープでモダンな雰囲気に、自己バイアスは使い込んだ真空管アンプのようなソフトでウォームな雰囲気を想起させます。"
この微妙な違いを言葉で表現するのは難しいですが、指弾きやピック弾きによってダイナミック・レスポンスが変化するのです。
POWER CONTROLスイッチ
前述したように、Nextoneの魅力はパワーアンプ・セクションにあります。マスター・ボリュームを上げると、まるでヴィンテージ・チューブ・アンプのような挙動を示し、大音量で鳴らせば鳴らすほどパワーアンプ特有の挙動を感じ取ることができます。
POWER CONTROLスイッチでは、プレイヤーが理想とするセッティングまでパワーアンプの出力レベルを切り替えます。さらに、ハーフ・パワーや0.5Wの設定により、より扱いやすい音量まで下げることが可能です。しかし、マスター・ボリュームのスイート・スポットでは、パワーコントロールの0.5Wではまだ音量が大きすぎるというユーザーもいるでしょう。
Version.3のアップデートにより、0.5Wの出力設定をより穏やかな0.2Wに変更できるようになりました。アップデート後、Nextone EditorのGlobal Settingsメニューからこの設定にアクセスできます。また、TONEボタンとBOOSTボタンを押しながらアンプの電源を入れるだけで、簡単に設定することも可能です。
ライブで思い切り演奏する
Version.3では、ギタリストのための2つの新機能が追加されました。フット・コントローラーのGA-FCでCLEAN/LEADの両チャンネルにSOLO機能を個別に設定でき、本体パネルでディレイとトレモロの切り替えが行えるようになりました。この2つの機能を使いこなすことで、ライブでより良いパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
SOLOブースト
SOLO機能は、各チャンネルの音量とEQを個別に調整することができます。CLEANチャンネルを選択した後、同じスイッチをもう一度押すだけでSOLO機能が有効になります。この手順はLEADチャンネルも同様です。アクティブになるとそれぞれのLEDが点滅します。
独立して調整可能なSOLO EQでは、音抜けを良くするために中音域を追加したり、ギターソロのトーンを華やかにするために高音域を強調、音量も任意に設定できます。また、このSOLO EQはプリアンプ・セクションの前にも後にも配置することができるので、音作りも思いのままに行なえます。
フット・コントローラーのGA-FCをNextoneに接続すれば、SOLOブーストを足元でON/OFFすることができるため、ステージでワンランク上のライブを披露したいギタリストに特にオススメの機能と言えるでしょう。
"独立して調整可能なSOLO EQでは、音抜けを良くするために中音域を追加したり、ギターソロのトーンを華やかにするために高音域を強調、音量も任意に設定できます。"
急いでFXを切り替えたい場合
アンプに備わっているパラメータは、すべてNextone Editorからアクセスできます。しかし、例えばライブの最中にSOLOブーストのレベルを調整したい場合もあるでしょう。その場合は、チャンネル・スイッチを押しながらEFX LOOPまたはDELAYスイッチを押すことでSOLO LEVELを調整することが可能です。
さらに、エフェクト・セクションのDELAYとTREMOLOを本体パネルで直接切り替えることができます。ソフトウェア・エディターに接続することなく、外出先でも汎用性を高めることができるのです。DELAYボタンでDELAY(LED赤点灯)、TREMOLO(LED緑点灯)、OFF(LED消灯)の切り替えが可能です。
ダウンロード
Nextone Version 3
まずは最新のファーム・ウェアとNextone Editorのバージョンをダウンロードし、アンプをアップデートしてください。