あらゆる楽器と親和性の高いディレイ・ペダル

あらゆる楽器と親和性の高いディレイ・ペダル

ギター以外の楽器とディレイ・ペダルを組み合わせることで、サウンド・バリエーションを広げることができます。新しいサウンド・スケープへの入り口となり得る、ディレイの可能性を見ていきましょう。

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ディレイ・ペダルはギター専用のツールというわけではありません。あらゆる楽器の音を拡張する素晴らしいエフェクターです。シンセ、キーボード、ドラム、エレクトリック・バイオリンなど、あらゆる場面で活用できるディレイ・ペダルは万能なエフェクターです。ここでは、このペダルと相性の良い楽器について紹介します。初心者におすすめのディレイと設定についても見ていきます。”ワウ&フラッター”の意味や”タイム”と”フィードバック”の違いなどについては、ディレイ・ペダル用語集を参照してください。それではまず、ディレイ・ペダルを他の楽器と併用する際によくある質問を挙げていきます。

アコースティック・ギターとディレイ・ペダル

この2つは非常に相性が良いです。John Butler、Jon Gomm、Tommy Emmanuel、Eric Johnsonといったアーティストがフィンガー・スタイルのアコースティック・ギターにディレイ・ペダルを使ってきました。演奏に新たなダイナミズムを加え、隙間を埋めながら複数のギターが鳴っているかのように聞こえます。長く引き延ばされたリピートからChet Atkinsのようなスラップ・バックまで、ディレイはあらゆる音を生み出します。エレクトリック・アコースティックを使っても、XLRをペダルに接続しても、ディレイを使えば面白い音色と出会えます。

ディレイは、アコースティック・ギターをフィンガー・ピッキングしたり、かき鳴らしたりするときの秘密兵器です。複数のギターがハーモニーを奏で、それぞれの音が反響しているような空間を作り出します。ギターのボディを叩いてドラム調の音を作るパーカッシブなアコースティック・ギタリストなら、ディレイ・エフェクトを加えることでビートを強調することができます。

「ディレイは、アコースティック・ギターをフィンガー・ピッキングしたり、かき鳴らしたりするときの秘密兵器です。複数のギターがハーモニーを奏で、それぞれの音が反響しているような空間を作り出します」

ギターを使用する際にディレイ・ペダルのボリュームやレベルを下げ、2~3回リピートさせると、コードの周りにテクスチャーを作ることができます。この方法はコーラスのような効果を生み、ワーシップ・スタイルのアコースティック・ギターに最適です。ペダルがブリッジ・ミュートを繰り返すので、リズミカルなパーカッションの音をギターで鳴らすことができます。BOSS RE-202のようなマルチヘッド・ディレイを使えば、ワウ&フラッター(機構的な摩擦抵抗やテープのスリップなどで発生する、テープ・スピードの揺らぎ)を強調させたサウンドや、クリーンなリピート・サウンドなど、同じペダルから2つの異なる音色を得ることができます。

Top Tip: 正確なリピートを得るには、シャープなピック、パーム・ミュート、短いリピートを使いましょう。より長いアンビエント・スタイルのディレイには、よりソフトなピック、オープン・コード、より長いリピートを選びましょう。

セッティング例:DD-8

  • Mode: Analogを選んでください。演奏に温かみのあるビンテージ調の音でありながら、デジタルの正確なリピートを使用できます
  • Time: 300~400msの間にします。本来のメロディーを隠すことなく深みが加わる、最適な時間です 
  • Feedback: 2~3回のリピートで設定。ディレイが優雅にフェードし、ギターの原音を邪魔することがありません。アコースティック・ギターはフィードバックしやすいので、その場合はリピート回数を減らしてください

「アコースティック・ギターはフィードバックしやすいので、その場合はリピート回数を減らしてください」

ベース・ギターとディレイ・ペダル

Pink Floydの“One of These Days”を聞けば、ディレイ・ペダルをベース・ギターで鳴らすヒントを得られるでしょう。この楽曲は、ベースとディレイの組み合わせの素晴らしい例です。また、スライド・ギターとドラムにもディレイが使われています。ベース・ギタリストはディレイ・ペダルを使うことで、音にリズムの流れを残すことができます。ベーシストは曲のフィーリングやグルーヴを決めるため、特にスリー・ピース・バンドでは非常に優れたアイデアとなります。

どんなジャンルのベーシストにとっても、ディレイは優秀なパートナーとなり得ます。ファンク、スラップ・ベース、シューゲイザーでは、リズミカルなディレイが曲を一変させてくれるでしょう。全ての音に深みのあるレイヤーを加え、1人のベーシストの音を複数人で演奏しているようにアレンジしてくれます。Kings Of Leonの“Closer”でも、ディレイを使った素晴らしいベースラインを聞くことができます。

セッティング例:DD-200

  • Mode: Standardを選んでください。明瞭さを重視し、グルーヴを可能な限りクリーンに保ちます
  • Time: 300~400msの間に設定することで、Pink Floydのような短いリズムのエコーを鳴らすことができます
  • Feedback: ディレイがリフの正確さをかき消したり、ローエンドを濁したりしないように、1~2回程度のリピートに設定しましょう

鍵盤/シンセとディレイ・ペダル

うねるようなシンセのリードからデジタルピアノの演奏まで、ディレイはすべての音を余韻を響かせ、ミックスからパンチを出すことができます。ピアノに300msのような長いディレイをかけると、まるで広大なホールで演奏しているような反響が生まれます。これにより、音に驚くほどの厚みと奥行きを加えることができます。

ディレイを600msくらいまで上げると、Vangelisの”Blade Runner”のように宇宙的な音色が仕上がります。魅力的なサウンドスケープを作りたいとき、この方法は大変役に立つでしょう。ディレイを長くすればするほど、リピートは少なくなります。これを覚えておくことで、単音のラインが失われる可能性を防ぐことができます。

「ピアノに300msのような長いディレイをかけると、まるで広大なホールで演奏しているような反響が生まれます」

セッティング例:DD-200

  • Mode: Shimmerを選択することで、シンセパッドに幽玄なエフェクトの雰囲気が加わります
  • Time: 400-600msに設定すると広大さを感じられ、SF的なシンセに仕上がります
  • Feedback: 中程度または3~4回のリピートが理想。この設定でアンビエンスを持続させられます

モジュラーのセットアップとディレイ・ペダル

モジュラーのセットアップの世界において、ディレイには音の結果を大きく変える働きがあります。単純なリードラインや単音の波形を別物に変え、新たなパターンを生み出すことができます。この方法で音楽にダイナミックな背景を作り出すことができます。さらに、シンセやモジュラー・セットアップにアルペジエーターが内蔵されていない場合、ディレイで代用することも可能です。DM-101 Delay Machineをモジュラー・シンセやドラム・マシンと組み合わせて、センスが光る音を鳴らしましょう。

セッティング例:DM-101 Delay Machine

  • Mode: Tape Echo。温かいビンテージ調がよく合います
  • Time: 目指す音色により変化します。短いディレイなら200〜300msが理想。400〜600msのディレイをかけてコード・チェンジを際立たせることも可能です
  • Feedback:

    高めに設定しましょう。テクスチャーを連続的に進化させ、振動を楽しんでください

「モジュラーのセットアップの世界において、ディレイには音の結果を大きく変える働きがあります。単純なリードラインや単音の波形を別物に変え、新たなパターンを生み出すことができます」

ドラムとディレイ・ペダル

ドラムにかけたディレイは非常に魅力的です。この組み合わせの中でも最も有名な使用例は、Stewart Copelandの“Walking On The Moon”と“Every Little She Does is Magic”で使われたRoland Space Echoです。Copelandは主にハイハットにこのペダルを使用しました。リピートは1回のため、音が膨らんで聞こえにくくなることはありません。

Copelandはディレイ・ペダルを使って音を磨き上げるアーティストの代表格です。スネアドラムからシンバルまで、ディレイの効果は全てのビートを際立たせてくれます。別のドラマーが一緒に演奏しているような仕上がりになります。ドラムにディレイをかけることで斬新たなリズム・ベースを構築したり、ドラムにより力を与えることができます。

セッティング例:DD-3T

  • Mode: シャープで正確なShort Delay
  • Time: 100~200msでキレのある反射を実現
  • Feedback: 低めに。はっきりしたエコーを作りましょう

セッティング例:RE-202

  • Mode: 5(ディレイ+リバーブ)
  • Time: 100-200msで素早くリピート
  • Feedback:1-2リピート

ボーカルとディレイ・ペダル

ボーカルにディレイをかければ、ひとりの歌声から合唱を作り出すことができます。またリード・ボーカルからバッキング・トラックまで、深みと奥行きが加わります。単純なボーカル・ラインの繰り返しから、“Whole Lotta Love”のRobert Plantのような渦巻く不協和音まで、様々な使用例があります。

ボーカルにディレイ・ペダルをかけると、ボーカルの迫力が増します。リピートを1または2回と控えめに設定し、聞こえるくらいまでレベルを下げれば本来のボーカルのパフォーマンスを圧倒することはありません。そして、ボーカルに深みと重みが加わります。以下の動画の2:02から、Led Zeppelinのディレイのテクニックを見ることができます。

セッティング例:DM-2W

  • Mode: Analog。温かみと深みを加えます
  • Time: 200-300msに設定し、自然な響きを作りましょう
  • Feedback: 1~2回のリピート。ボーカルをクリアで鮮明に保ちます。また、3~4回繰り返すと、より幽玄なボーカル・サウンドになります

サックス/管楽器とディレイ・ペダル

ソロのサックスでも管楽器のアンサンブルでも、ディレイはギターと同じようにリフを作ったり、管楽器のソロ・パートに重みを加えます。リード・ラインやソロを演奏する場合は、リピートを1~2回加え、ディレイのレベルをかなり低めに設定すると、音が複雑になりすぎず、深みが増します。新しいリフを作る場合には、リピートを上げてください。サックスや金管楽器を中心に曲を構成し、リズミカルな音を奏でます。レベルを元の信号と同じ音量に設定すれば準備完了です。

セッティング例:DM-101(オリジナル・モデル)

  • Mode: Standard。ここでは明瞭さが重要です
  • Time: 300~500msに設定し、豊かで響きのあるエコーを作り出します
  • Feedback: 2~3回のリピートで空間を完璧に満たします

「弦楽器でのディレイ・ペダルの一般的な使い方は、音に余韻を持たせるのです。この方法を使えば、単音のラインをドラマチックなものに変えることができます」

ディレイ付き弦楽器

ディレイ・ペダルは電子バイオリンや弦楽四重奏の現代化に欠かせない存在です。幽玄で呪術的なディレイを作り出したり、ピッチカートの音符を引き出してパーカッシブな部分を中心に楽曲を構成する手助けをします。

弦楽器でのディレイ・ペダルの一般的な使い方は、音に余韻を持たせることです。この方法を使えば、単音のラインをドラマチックなものに変えることができます。最初にベース音を強調し、次に高音ラインを演奏すれば、複数のバイオリニストがいるような錯覚を生み出します。ベース奏者がグルーヴを押さえることで、進行が滑らかになります。

セッティング例:DM-2W

  • Mode: 温かく自然なAnalog
  • Time: 350-500msで、心に響く音を実現する空間を加えます
  • Feedback:弦の響きを引き立て原音のラインを維持するため、2~4リピートに抑えましょう

セッティング例:DD-500

  • Mode: クリアなデジタル・ディレイのStandard
  • Time: 200-300msでスラップバック・ディレイを少し加え、メインのリズムをかき消さないようにします
  • Feedback:リピートは1~2回に抑えます。その後、3~6リピートで幽玄な体験を作り出しましょう

「アナログはより温かくニュアンスのあるディレイを奏で、デジタルはリズムにズレのない絶対的な精度を備えています」

様々な楽器に適したディレイの選ぶ

ここで大切なのは、アナログ・ディレイとデジタル・ディレイのどちらを選ぶかです。アナログはより温かくニュアンスのあるディレイを奏で、デジタルはリズムにズレのない絶対的な精度を備えています。アナログかデジタルか、マルチタップかリバースかに関わらず、自身がディレイに求める効果を理解し、それを満たすペダルを選びましょう。

マルチ・ディレイを探しているなら、DM-101やDD-8などがおすすめです。絶対的な精度を叶えるために多数のデジタル・ディレイを活用したければ、DD-200DD-500のようなペダルを試してみてください。アナログ的な温かみを取り入れたければ、DM-2WRE-2を使用することで、揺らぎと微妙なニュアンスを持つみずみずしい温かさを音に加えることができ、劣化による音の変化も楽しむことができます。音楽にルールはありません。最高の音を奏で、インスピレーションを刺激するディレイ・ペダルを使いましょう。

Lee Glynn

フリーランスのコンテンツ ライター及びコピーライター。YouTube やコンテンツ マーケティング 活動も行う。 作品は、Professional Music Technology などに掲載。