ギタリストにとって、音色はまさに聖杯であり、究極の追求対象です。私たちは今、音楽用ツールが専門化され、多彩なサウンドを作り出せる黄金時代に生きています。しかし、どんな分野でも、優れた成果を得るには堅固な基盤が不可欠です。音楽においては、ギターの信号を弾き手の指からリスナーの耳にまで、力強く安定して伝えることがその基盤にあたります。幸運なことに、高品質なバッファを使えば、それを簡単に実現できます。毎回、理想のトーンを引き出すために、これから紹介する基本原則を理解し、ケーブルやペダル選びの参考にしてください。
エレキ・ギターとケーブルの静電容量
エレキ・ギターにパッシブ・ピックアップ(内蔵バッテリーが不要なもの)が搭載されている場合、そのギターはおそらくハイ・インピーダンスの出力を持っています。パッシブ・ピックアップはエレキギターの世界では一般的で、多くの楽器に採用されています。これらは演奏のダイナミクスに非常に敏感で、その感度こそが私たちを魅了します。しかし同時に、アンプに信号が伝わる過程でのキャパシタンス(静電容量)にも非常に敏感です。
ギターをアンプやエフェクト機器に接続すると、電気回路が形成されます。ケーブルの接続によってキャパシタンスが回路に加わり、ローパス・フィルターが生成されるため、高音域が徐々にカットされます。ケーブルの長さ(つまりキャパシタンス)が増えると、この高音域のロールオフがより顕著に感じられるようになります。また、ケーブルの長さに応じて回路の共振周波数も変化し、微妙にトーンへ影響を与えます。

ケーブルは意外と長い
ケーブルの長さが約5.5メートルを超えると、キャパシタンスによる高音域の減衰が聴覚的にも測定上でも明確に表れるようになります。ケーブルの設計も影響し、場合によってはそれ以下の長さでも音質に違いが生じることがあります。このため、様々なギター・ケーブルのブランドには「音質が違う」といったこだわりが生まれるのです。
アンプに直接接続する場合は、5.5メートル以下のケーブルを使えば問題ありません。しかし、ペダルを多用する場合は、それよりも長いケーブルが必要になることがほとんどです。例えば、アンプの入力ジャックから床までで約0.6~1.5メートル、ペダルボードがアンプから4.5メートル離れているなら、少なくとも5メートルのケーブルが必要です。5.5メートルで音質の低下が感じられることを考えると、ペダルボードに接続する前の段階で限界に近づいてしまいます。
実際には、合計12メートル以上のケーブルを使用することもあります。さらに、ペダル間のケーブルも含めると、その長さはさらに増し、複雑なセッティングでは数メートル追加されることもあるでしょう。
「トゥルー・バイパスとは、エフェクトをオフにしたときにギターからの信号がペダル内部を素通りすることを意味しています」
トゥルー・バイパスの真実
“トゥルー・バイパスのペダルだけを使うのが良い音作りの道”とよく言われますが、実際にはそうとは限りません。トゥルー・バイパスとは、エフェクトをオフにしたときにギターからの信号がペダル内部を素通りすることを意味しています。
例えば、あなたの所有する機材にトゥルー・バイパスのペダルがひとつだけあると仮定しましょう。エフェクトをオンにすれば、そのペダルは信号に対して周波数を変化させたり、音量を増幅したりと、設計された通りの作用をします。しかし、オフにした途端、トーンを強化するエレクトロニクスが外れ、ギターとアンプの間にただ長いケーブルが残るだけです。

ケーブルの長さによるトーンの劣化という問題について、もう一度考えましょう。トゥルー・バイパスで”純粋な音”を保とうとすると、意図せずに音質が変わってしまい、しかもそれが良い方向に働くとは限りません。これはペダル自体の問題ではなく、ケーブルの長さによる信号の劣化をトゥルーバイパスが解決できないからなのです。
バッファで解決
バッファ(バッファ・アンプの略)は、出力インピーダンスを低くし、ギターのハイ・インピーダンス信号を強化して、長いケーブルを使っても音質の劣化が生じないようにします。専用のバッファ・ペダルやバッファを内蔵したエフェクト・ペダルを使用すると、そのポイント以降はペダルがオンでもオフでも信号が常に安定し、音がクリアに保たれます。バッファを通せば、通常30mまでの長さのケーブルでもほぼ信号のロスなしに使用可能です。
「バッファは出力インピーダンスを下げることで、ハイ・インピーダンスのギター信号を強化し、長いケーブルでも音質の劣化なく信号を送れるようにします」
このため、BOSSのペダルには全てバッファ回路が組み込まれています。また、トップクラスのペダルボード・デザイナーもこの点をよく理解しており、カスタム回路やBOSSのようなバッファ内蔵のペダルを活用して、必ずと言っていいほどバッファを取り入れています。
バッファード・ペダルの使い方
トゥルー・バイパスのペダルを使用しているプレイヤーの多くは、ペダル・チェーンの最初または最後にBOSSペダルを配置することで、トゥルー・バイパスがハイ・インピーダンスの信号経路に与える意図しない影響を軽減できることを発見しています。このため、BOSS TU-3 Tunerが非常に人気です。優れたチューナー機能に加え、ペダルボードの先頭にTU-3を配置することで、その後のペダルへの信号をバッファリングし、音をクリアで力強く保つことができます。
一部のペダル、特にゲルマニウム・トランジスタを使用したビンテージ調のファズ・ペダルは、バッファとの相性が難しいことがあります。これらはギターを直接接続した方が最も良いサウンドを出すことが多いです。こうした場合には、BOSSペダルをチェーンの中間または最後に配置することで、効果的なバッファリング効果を得ることができます。最適な結果を得るためには、BOSSペダルの前のケーブルの総長を可能な限り短く(5.5m以下)保つことを忘れないようにしましょう。

素早い解決策
ギターをミキシング・コンソールやPCのレコーディング用インターフェースのロー・インピーダンス入力に接続しようとすると、インピーダンスの不一致のため、音が薄くてかけたように聞こえることがあります。多くの現代的なコンソールやインターフェースには、ギターやハイ・インピーダンスの信号用の専用入力が複数備わっていますが、そうでないものもあります。この場合の一般的な解決策は、ダイレクトボックス(DI)というアドオン・デバイスを使うことです。BOSSは、バランスXLRとアンバランス標準出力を両方提供するアクティブDIボックス、DI-1を提供しています。
しかし、最も簡易的な解決策は、BOSSのコンパクト・ペダルをバイパス状態で使うだけです。バッファがかかり、簡単なダイレクト・ボックスとして機能するので、ギターの信号をロー・インピーダンスの標準端子入力に接続しても、トーンを保ったまま使用できます。歪んだギターの音をミキサーに直接つなぐことは避けたいかもしれませんが、クリーンでパキっとしたサウンドを録音や練習のためにキャプチャする際には、この方法が役立つことがあります。レコーディング用インターフェースでは、BOSSのバッファがクリーンなダイレクト・トラックやアンプ・モデリング・プラグインでの処理に適した強力な信号を提供してくれます。
「BOSSペダルのバッファ機能により、簡易的なダイレクトボックスとして機能するため、ギターをロー・インピーダンスの入力に接続してもトーンを維持できます」
アクティブ・ピックアップとワイヤレス・システム
パッシブ・ピックアップとは異なり、アクティブ・ピックアップ・システムはバッテリーで駆動するオンボードのプリアンプを備えています。このプリアンプ回路にはバッファが含まれており、ギターの出力時点で信号がすでに調整されています。そのため、パッシブ・ピックアップと比べてケーブルの長さによる影響をあまり感じることはありません。一部のアクティブ・ピックアップ・システムには、パッシブ・ピックアップの平均的なケーブルの”柔らかい”トーンを模倣するための高周波数のロールオフオプションも搭載されており、これは多くのプレイヤーにとって好まれます。
BOSS WLシリーズのようなワイヤレス・システムには、ギター出力に直接接続するトランスミッターが含まれています。トランスミッターは、信号がラジオ周波数でシステムのレシーバーに送信される前にバッファ処理を行います。BOSS WL-20システムはケーブル・トーン・シミュレーション(わずかに高域をロールオフ)を内蔵していますが、WL-20Lモデルにはこれがありません。WL-50およびWL-60は、ケーブル・トーン・シミュレーションの短いオプションと長いオプション、OFFから選択できます。

自分らしい道の見つけ方
ここまでに紹介した基本的なポイントを実践するだけでも、安定したギタートーンを得られますが、さらに深くサウンドを磨くためには、もう少し掘り下げる必要があります。
BOSSのES-8やES-5といったエフェクト・スイッチャーは、トーンを最適化するための素晴らしいツールです。これらのスイッチャーは、使用していないペダルを信号経路から完全に取り除くことができるスイッチ可能なオーディオ・ループを提供します。さらに、入力および出力にオン/オフを選択可能なバッファを備えており、バッファの状態をパッチにプログラムして、さまざまな設定を試すことができます。BOSSの500シリーズ・ペダルにもオン/オフを選択可能なバッファが搭載されており、あなたの演奏に最適なサウンドとフィーリングを見つけることができます。
「BOSSの500シリーズ・ペダルにもオン/オフを選択可能なバッファが搭載されており、あなたの演奏に最適なサウンドとフィーリングを見つけることができます。」

あなたのギター・ケーブルの長さを調整することで、最初のバッファに信号が届く前に基本的なトーンを作り出すことができます。長いケーブルの暗いサウンドが好きなプレイヤーもいれば、最も明るく反応の良いトーンを得るためにケーブルをできるだけ短く保ちたいプレイヤーもいます。ケーブルのブランドごとに異なるキャパシタンス仕様があるので、それもチェックしてみると良いでしょう。
最後に、経験豊富なギター・リグ・ビルダーたちがYouTubeや他のウェブサイトでバッファを使用した拡張ペダル・セットアップの細かい使い方について情報をシェアしています。これらは、ギターのトーンを追求する上で非常に役立つリソースです。