オーバードライブやディレイのようなエフェクトとは異なり、コンプレッサーはギターの音色を瞬時に変えるものではありません。コンプレッサー・ペダルには、様々な機能があります。実用的な使用法もあれば、よりクリエイティブな表現をするために使うことも可能です。その繊細な効果とは裏腹に、コンプレッサーはギターの音を引き立てる重要なエフェクターであり、プロのペダルボードに欠かせないアイテムです。使い方をマスターして、サウンドの可能性を広げましょう。
コンプレッサーとは？
コンプレッサーは楽器のダイナミック・レンジを狭めるためのスタジオ・エフェクトとして誕生しました。通常、ダイナミクスは多彩なギター音を作るために重要な役割を果たすため、ダイナミック・レンジを狭めるということは、一見、音作りからかけ離れているように感じるかもしれません。しかし、コンプレッサーは弱く弾いた音を強調し、大きすぎる音を小さく整えるため、よりまとまりのある、均等なギターの音色を作ることができます。そのため、ギターの音が強調され過ぎてしまったり、逆に音が埋もれてしまうことを防ぎ、他の楽器とのアンサンブルでバランスの取れた音量を保つことができます。
この主要な機能に加えて、コンプレッサー・ペダルは音を形作るツールとしても使用できます。ダイナミクスを抑えながらギターの音色の特性を均一にすることで、より自然に信号をブーストします。ダイナミクスを下げることで、ギターの高音域が強調され、存在感を増すことができます。
「ギターの音が強調され過ぎてしまったり、逆に音が埋もれてしまうことを防ぎ、他の楽器とのアンサンブルでバランスの取れた音量を保つことができます。」
ペダル・メーカーはコンプレッサーを作り出すために様々な方法を用いてきました。もちろん、それぞれのブランドによって特徴や長所、短所が異なります。ここではコンプレッサーの種類と、音の特徴について紹介します。
コンプレッサーの種類
VCA
最も一般的なコンプレッサーはVCA（Voltage Controlled Amplifier）です。これは音の透明性に優れており、演奏された音を素早く圧縮し解放するため、自然な響きを実現します。他のコンプレッサーと比べて、より高いレベルまで圧縮することができるのも特徴的です。この柔軟性により、VCAは様々なシチュエーション、演奏スタイル、楽器と相性が良いと評価されています。
伝説的なBOSS CS-2と今でも多くのギタリストが愛用するCS-3は、どちらもVCAを用いたコンプレッサーです。特にCS-3は効率的で汎用性が高く、1986年に登場して以来、そのデザインを貫き続けています。シンプルかつ広い用途を持ち合わせているため、コンプレッサーを初めて使うプレイヤーにとって理想的なペダルです。
Optical
続いて紹介する定番の圧縮方法は、OpticalとFETです。Opticalのコンプレッサーは光を通じてオーディオ信号を変換します。センサーがLEDの明るさを検知することで、ゲインの調整を行います。この際、ギターを弾く強さによってLEDの光の強弱を調整します。センサーは信号の強弱を検知して、出力レベルを下げます。
Opticalは非常に自然な音を鳴らします。しかし設定値を高くしてしまうと、アタックとリリースのスピードについていけず、音の輪郭がぼやけてしまう傾向があります。この現象は欠点というわけではなく、コンプレッサーの特性と言えるでしょう。
FET
FET（Field Effect Transistor）のコンプレッサーは、アンプの真空管から送られてくる反応を模倣して動作します。FETはキレのある音で、ギターの音色に豊かな色彩をもたらします。透明感のある音を求めるプレイヤーには使いづらさがあるかもしれませんが、FETのコンプレッサーはファンクやレゲエに最適な、クラシックなギター音を作り出します。
「ピッキングする指先の延長として、コンプレッサー・ペダルを活用してみてください。音から音へとギターの音量を平準化し、ピッキング・テクニックを向上することができます」
設定における注意事項
ピッキングする指先の延長として、コンプレッサー・ペダルを活用してみてください。そうすることで音から音へとギターの音量を均一にし、ピッキング・テクニックを向上することができます。このことを念頭に置き、コンプレッサーをエフェクト・チェインのできるだけ先頭に配置することが重要です。他のエフェクトの後ろに置くと、それらのエフェクトが鳴らす自然な音色が圧縮されてしまいます。オーバードライブの後に配置するとダイナミクスが弱まり、倍音の特性が潰れるため、音色が濁ります。ディレイやリバーブの後にコンプレッサーを置くと、ディレイのリリース音やリバーブのディケイがブーストされ、ダイナミックに聞こえるはずの音が濁ってしまいます。
コンプレッサー・ペダルの使用法 5選
1. チキン・ピッキングを圧縮する
最も簡単なコンプレッサー・ペダルの使い方と言えば、あのクラシックで非常にクリーンなカントリー・フィンガー・ピッキングの音色が代表的でしょう。通常、コンプレッサーはより均一的なピッキング技術をエミュレートするために使用されます。しかし、ここではギターのダイナミック・レンジを可能な範囲以上に絞るために活用します。
チキン・ピッキングのような音色を作るには、サスティンのコントロールを時計回りにフル回転させます。この設定によってペダルのノイズが大きくなりますが、演奏する際のダイナミクスを抑え、理想の音へと仕上げてくれます。コンプレッサーの種類によっては、レシオ・コントロールを最大値に設定するか、アタックを最速にする必要があります。アタックを遅くすることで自然に圧縮された音になりますが、一般的な方法ではありません。
2. ソロ・パートで使用する
一方、コンプレッサーを使用することで演奏のダイナミクスを目立たせることなく、自然に音を均一化することができます。コードを弾く場合には必要ありませんが、高音域でのスピード感あるソロでは、より安定した音色を作り出します。特に速弾きのような演奏では、各音の音量にばらつきが出ます。これに緩やかなコンプレッションを加えることで、音のばらつきを抑え、弱い音を持ち上げながら荒いピッキングの音を和らげます。
ギター・ソロにコンプレッサーを導入することで、よりすっきりとした演奏になり、信号をブーストすることもできます。レベル・コントロールを使用してボリュームをユニティーより少し上に設定してください。これはトレブル・ブースターと同様の機能で、高音のジリジリとした存在感をすべて鳴り響かせることができます。他の楽器とのミックスで各音を引き立てるのにも最適です。
「ギター・ソロにコンプレッサーを導入することで、よりすっきりとした演奏になり、信号をブーストすることもできます」
3. 倍音
楽器の音量バランスを取るために使われる際には、アンプのEQの様に常にONの状態で使用することが多いです。コンプレッサー・ペダルはその実用性が強調されすぎるが故に、新しいサウンドを作る創造的な側面は見落とされがちです。
Juan Alderete de la PeñaはBOSS CS-2を使用して、指弾きでの倍音を強化しているプレイヤーです。彼はアタックとサスティンを比較的高めに設定しています。この設定ではノイズ成分を増加させ、倍音の音量を一般的なノートと同等にすることができます。その結果、倍音を音楽に取りたいプレイヤーにとって、高音域が強調され、豊かで生き生きとした音色が完成します。
4. ベース
コンプレッサーは、ギタリストよりもベーシストに親しまれているエフェクトかもしれません。もちろん、どちらの楽器でも使用できますが、指弾きをするベーシストにとって、コンプレッサーは音の真髄を整えてくれます。ピッキング技術のばらつきを均等にしてくれるからです。
ギタリストと比べて、ベーシストはダイナミクスに頼ることが少ないと言えます。ドラマーと並んで基本的な音符のコードを押さえる場合、できるだけ一貫性のある音を演奏する必要があります。コンプレッサーはこれを実現し、大きな成果を上げてくれます。BOSS CS-2、CS-3、BC-1Xは、どれもベース・プレイヤーの間で絶大な人気を誇っています。絶妙で自然な圧縮音を作りたい人におすすめです。
5. ギターの音色を強化する
コンプレッサーはギターの音色をわずかに圧縮する効果があるため、自然にギターの弱い音を太くすることができます。これハムバッカー・ピックアップのサウンドをエミュレートするために、シングルコイルのギターを使うギタリストに効果的な方法です。
この効果を得るには、コンプレッサーを軽くかけてください。その後、サスティン・コントロールを使い、好みの太さに調節します。そうすることで、演奏途中で楽器を交換することなく、ギターの音色に力強さを加えることができます。
「コンプレッサーはギターの音色をわずかに圧縮する効果があるため、自然にギターの弱い音を太くすることができます」
透明性を重視したエフェクター
コンプレッサーは音色を絶妙に厚くしたり、演奏を均一にしたり、コードをピッキングした際に音を強化します。クリエイティブな使用法が充実しながら音のバックボーンとなるこのエフェクターは、ペダルボードに加えるべきペダルです。コンプレッサーは音色全体を洗練された方法で向上させ、音の透明性を保つ最強のエフェクトです。
