アコースティックギター・エフェクターとシグナル・チェーンの完全ガイド
/

アコースティックギター・エフェクターとシグナル・チェーンの完全ガイド

アコースティックギターと相性の良いエフェクトを紹介。ペダルの使用方法や独自のシグナル・チェーンの組み方を見ていきましょう。

1 min read
Start

アコースティック・ギターだからといって、シンプルな音に限られるわけでも、エフェクターを使えないわけでもありません。演奏を安定させる実用的なエフェクトから、サウンドを独創的に変化させるコンパクト・エフェクターまで、アコースティックギターに最適なエフェクトの種類や使い方、そして理想的なシグナル・チェーンの順番を分かりやすく解説します。

生音とアンプを使用した音

アコースティック・ギターの魅力は、木製のボディと弦が生み出す純粋な生音にあります。その響きを大切にしたいなら、シンプルな演奏スタイルを貫くのも良いでしょう。しかし、もしあなたがライブを重ねる経験豊富なプレイヤー、ジャンルを超えるプロデューサー、新しい発想を求めるクリエイター、あるいは独自の音を追求しているなら、エレキギターでなくてもエフェクターを試す価値があります。

最新のアコースティック用エフェクターでは、新たな音の世界を探求することができます。ギターとアンプの間に機材を設置することで、サウンドは大きく変化するでしょう。自信を持って演奏したいとき、作曲のマンネリを打破したいとき、自分だけの音を追求したいとき、あるいはスタジオでの作品を際立たせたいときなど、あらゆる場面でエフェクターが問題を解決します。

アコースティックギターでエフェクターを使う秘訣

アコースティック・ギターのプレイヤーがエフェクターを使用する大半の理由は、解決したい問題があるか、独自のサウンドを作り出すためです。例えるなら、次のようなシチュエーションが挙げられます。大きな会場で演奏する際にハウリングを防ぎたい。セットリストに異なるチューニングの曲が複数あり、毎回ペグを調整していると観客の興味が薄れてしまう。録音したデモがどれも似たようなサウンドになってしまう。こうした悩みを解決するのが、ペダルの存在です。

アコースティック・ギター用のエフェクターは意外と種類が豊富です。それに気付いていないギタリストも多いかもしれません。これらのペダルは、大きく3つのカテゴリーに分けられます。まず1つ目は、ライブ演奏をサポートする実用的なペダル。トーンを最適化するプリアンプや、視認性に優れたチューナーなどがあります。

「アコースティック・ギター用のペダルは、実用的なもの、創造的かつ機能的なもの、そして個性的な「ワイルドカード」に分けられます。」

他にも、音色を変えずにギター・パートの表現力を広げる、実用的かつクリエイティブなペダルがあります。その代表例が、2000年代以降爆発的に普及したBOSSのループ・ステーションです。さらに、「ワイルドカード」ともいえるエフェクトも存在します。リバーブ、コーラス、ディレイ、オクターブ、トレモロなどを使って、伝統的なアコースティック・ギターのサウンドに個性的なエッセンスを加えることができます。このようなエフェクトの使い方には一般的なセオリーもありますが、誰かに「こうするべき」と決めつけられる必要はありません。実際、アコースティック・ギターに極端なオーバードライブをかけて、思わず耳を引くサウンドを生み出しているプレイヤーもいます。

Best Pedals for Acoustic Guitar

AD-10

アコースティック・プリアンプ

ライブで演奏する際、会場のPAシステムに悩まされることは少なくありません。たとえ機材がしっかりしていても、スピーカーがアコースティック向きでなければ、繊細なトーンが平坦で不自然な音になってしまいます。そんな問題を解決するのが、AD-2AD-10のようなアコースティック・プリアンプです。コンパクトながら、Acoustic Resonance機能でピエゾ・ピックアップ特有の硬い音を補正し、PAにバランスの取れた信号を送ることができます。さらに、ノッチ・フィルターを使えば、フィードバックを効果的に抑えることも可能です。

TU-10

チューナー

カポやオルタネイト・チューニングを多用するアコースティック・プレイヤーにとって、素早く正確なチューニングは欠かせません。気軽なアコースティック演奏なら、ギター・ヘッドに付けるTU-10のようなシンプルなチューナーで十分かもしれません。しかし、大きな会場やアンプを使うライブなら、TU-3のようなペダル型チューナーがあると安心です。LEDディスプレイでサッとチューニングでき、ミュートしながらスムーズにオープンGに切り替えることも可能です。

「アコースティック・ギターの音をアンプで魅力的に鳴らすには、3バンドEQでしっかり音作りすることが基本です」

EQペダル

アコースティック・ギターの音をアンプで魅力的に鳴らすには、3バンドEQ(低音・中音・高音)でしっかり音作りすることが基本です。BOSS AC-22LXAcoustic Singerのようなプロ仕様のアンプなら、ダイヤルを回すだけで、厚みのある低音やシャープな高音を簡単に調整できます。もしPA直結で演奏するなら、AD-10のようなEQ搭載プリアンプや、細かく調整できるGE-7の7バンドEQを使えば、より理想のトーンに近づけることも可能です。

コンプレッサー

しっかりまとまった演奏にするか、散漫で締まりのないサウンドになるか。この決め手となるエフェクターがコンプレッサーです。例えば、CP-1Xのようなモデルを選べば、ダイナミクスを整えるだけでなく、ソロ時のクリーンな音量ブーストとしても活用できるなど、多彩な使い方が可能です。

オクターブ・ペダル

自分が弾いている音に高音や低音のオクターブを加えるエフェクターは、1960年代後半にJimi Hendrixが広めたときから、常に人気のペダルです。もしステージで少し物足りなさを感じるなら、OC-5のようなコンパクト・エフェクターを使うことで、音に深みを加えることができます。Polyモードを使えば、オクターブ効果を加えたまま、フルコードで演奏可能です。さらに、低音だけにエフェクトをかける選択肢もあります。

「リバーブはバス・ルームのタイルのようなきらめきを加え、コードやフィンガー・ピックした奏法に雰囲気とプロフェッショナル感を与えます」

リバーブ

アコースティックの演奏者の中で最も人気のあるエフェクトのひとつであるリバーブは、バス・ルームのタイルのようなきらめきを加え、コードやフィンガー・ピックした奏法に雰囲気とプロフェッショナル感を与えます。BOSS AC-22LXやAcoustic Singerアンプは、パネル上のコントロールでこのエフェクトが使えますが、リバーブが音の基盤となる場合は、RV-6のような専用のコンパクト・エフェクターがより深く調整できます。これにより、8種類の異なるサウンド・モードと、微調整が可能なTIME/TONEダイヤルが利用できます。

コーラス

コーラスは、音程とタイミングに微細な変化を加えながら元のトーンを保つエフェクトで、アコースティックの演奏者にとって非常に効果的なツールです。適切にセッティングすれば、6弦ギターでも12弦ギターのような響きを作り出せます。ソロ演奏では、このエフェクトの繊細なレイヤーと深みが観客を引き込む効果があります。特にCH-1のようなコンパクト・エフェクターを選び、ステレオ出力をデュアル・アンプに接続すれば、その効果は一層引き立ちます。

ディレイ

リバーブと並んで、ディレイはアコースティック・ギタリストのペダルボードで最も一般的なエフェクトの一つです。ディレイは深みを加え、ソロ演奏が少し物足りなく感じる場合に空間を満たす効果があります。BOSSシリーズのデジタル・ディレイのエフェクターを選べば、この印象的な効果を細かくコントロールできます。微妙なリピートから、アコースティックの名手John Martynを彷彿とさせる壮大なヴィンテージ・エコーまで、様々なサウンドを調整できます。

「IRペダルのようなIR-200は、お気に入りの音作りの微細なニュアンスをキャプチャし、瞬時に使用することができます」

シンガー・ソング・ライター向けのペダル

もしソロでアコースティック・ギターを演奏して歌うのであれば、現代のペダルはあなたのボーカルを際立たせるのに最適です。BOSS VE-8 Acoustic Singerは、アコースティック・レゾナンス、リバーブ、コーラス、チューナー、フィードバック・キャンセリング・ノッチ・フィルターといった機能で演奏をサポートします。さらに、ハーモナイザーでダブル・ボーカル、ディストーション、エレクトロニック・ボイスなどを使えば、自信を持って演奏することができます。

アコースティックギターに最適なルーパー

2000年代初頭からのライブシーンにおいて、ループが巻き起こしたブームを見逃すわけにはいきません。BOSSが初めてループ・ステーションを発売した2001年以降、Ed SheeranやKT Tunstallなどのアーティストがこの方法を広め、ギターとアイデアだけでスタジアムを埋め尽くしました。

もちろん、エレキのギタリストもループを使いますが、特にアコースティックのソロアーティストは、リアルタイムでギターの音を重ねていくことで、独自のサウンド・スケープを作り出すことができます。ループ・ステーション・シリーズは、ライブ・シーンの変化に合わせて進化してきました。現在では、シンプルなRC-5から高機能なRC-600まで、多種多様なモデルが揃っています。どちらも、1本のアコースティック・ギターをまるで交響曲のように響かせることができます。

「アコースティックのソロアーティストにとって、ループはとても重要です。リアルタイムでギターの音を重ねていくことで、独自のサウンド・スケープを作り出すことができます」

アコースティック・ギター・アンプとエフェクトの比較

最高のアコースティック・アンプは、単に音量を上げるだけではありません。BOSS AC-22LXやAcoustic Singerなどの主要なモデルのコントロール・パネルを見てみましょう。リバーブからルーパー、フィードバック・コントロールまで、元々のペダル技術を駆使した多くの機能とエフェクトが搭載されています。

個別のエフェクト・ペダルが必要かどうかは、どんなミュージシャンなのか、そしてエフェクトがサウンドにどんな役割を持つのかによって変わります。例えば、たまにリバーブを使ったり、1曲だけルーパーを使用するのであれば、AC-22LXの搭載機能だけで満足できるでしょう。

しかし、さらに深く音作りをしたい場合や、リバーブの種類を細かく調整したり、複数のトラックを重ねるような大掛かりな演奏をしたい場合には、専用のリバーブ・ペダルやループ・ステーションがあると、より多くの音の選択肢とライブ・パフォーマンス中の詳細なコントロールを可能にすることができます。

アコースティック・ギターのシグナル・チェーンの順序

多くのエレキ・ギタリストは、エフェクト・ペダルをどの順番でつなぐかがトーンに大きく影響することを知っています(もし知らない場合は、こちらを読んでください)。アコースティック・ギターのシグナル・チェーンはフィードバックや不要な低音が発生しやすいため、エフェクト・ペダルをどのように接続するのがベストなのかとても重要です。

エレキ・ギターでもアコースティック・ギターでも適用できる基本的なルールがあります。まずチューナーを最初に配置します。なぜなら、チューナーは信号を最も純粋な形で受け取る必要があるからです。次にピッチ・シフターやオクターブ・エフェクトを接続します。ドライブやファズ、ディストーションを使う勇気がある場合は、これらをここで接続して、最大のダイナミックレスポンスを確保します。次にコンプレッサー、モジュレーション(コーラス/トレモロ)、そして時間ベースのエフェクト(ディレイ)を順番に接続します。最後に、クリーンな仕上げとしてリバーブを加えます。

「いくつかの基本的なルールがあり、チューナーを最初に配置します。チューナーは信号を最も純粋な形で受け取る必要があるからです」

一部のペダルの配置については、意見が分かれることがあります。例えば、EQペダルは音を調整する前に使う方がいいという考え方があります。また、ルーパーを信号チェーンの最後に接続する人もいれば、ディレイの前に置く方が良いと考える人もいます。最終的には、自分の耳で良いと感じる音が一番大切です。

BOSS アコースティック・ペダル

音楽業界のあらゆるレベルで、プレイヤーに刺激を与えるBOSSのアコースティック・ギター・エフェクターは、プロフェッショナルなペダルボードの基本となります。BOSSのアコースティック・ギター用ペダルのラインナップをチェックして、早速試してみましょう。

Henry Yates

ジャーナリスト兼コピーライター。NMEや、Guardian、Telegraph、Classic Rock、Total Guitarなど多くのメディアで執筆を行う。