Sheryl CrowやTexasからThe Jesus and Mary Chain、そしてNew York Dollsまで、Al Robinsonはギター・テックとしてのキャリアを実に多彩なアーティストとの共演を経て築いてきました。長年にわたり、彼はギターの世界における最も優れた人物のひとり、Reeves Gabrelsの信頼される右腕として活動しています。Gabrelsのように、リグや機材へのアプローチを持つプレイヤーはほとんどいません。尽きることのない発明心を持つこのギタリストは、David BowieやTin Machine、そして現在のThe Cureでの革新的な活動からもわかるように、ギターエフェクトを心から愛する存在です。この独占インタビューでは、RobinsonがGabrelsの膨大なエフェクター・コレクションを紹介し、彼が「最高のテック」である理由を語ります。さらにBOSSのタトゥーにまつわるエピソードも披露。そして最後に、エフェクターは常に順番を考えて接続すべきだと強調していました。
フォーク・ロックのルーツ
ギター・テックの仕事を始めたキッカケを教えてください。
私はNewcastleで地元のクルーとして活動を始めました。伝説的なWallaceクルーの一員です。クルー・チーフのひとりAnt Failは、私が大好きなバンドのギター・テックを務めており、私は彼に「自分も同じような仕事がしたい」と繰り返し頼んでいました。やがて彼は折れて、フォーク・ロックのベテランOysterbandのツアーに連れて行ってくれ、そこで私はマーチャンダイズを担当することになったのです。
数回のツアーを経て、彼は夏の公演に自分のスケジュールを合わせられなくなり、代わりに私にバックラインを任せてみないかと声をかけてくれました。こうして私は週末のツアーに同行することになったのです。最初のライブでは、私は彼の仕事を観察し、質問しながらメモを取りました。二度目のライブでは、私がすべてを担当し、彼がそばで間違いを指摘してくれました。そして三度目からは完全にひとりで任されました。それは私の人生で最もストレスの多い夏のひとつであり、急な学びの連続でしたが彼らはとても辛抱強く接してくれました。最終的に私は、約10年間にわたりOysterbandと活動を共にすることになったのです。
「Reeves Gabrelsに初めて会ったのは、彼が自分のバンドをUKに連れてきて、ツアー・マネージャーを必要としていたときでした」
Al Robinson

「David JohansenやSylvain Sylvainと時間を共にできたのは大きな幸運だったと思います」
Al Robinson
プロト・パンクからポスト・ロックへ
Oysterbandの後は、どんなアーティストと仕事をしましたか?
時が経つにつれ、私は65daysofstaticやNew York Dollsといった他の仕事も手がけるようになりました。65daysofstaticでは、曲ごとにチューニングが違い、さらにセットの中にはJoeがギターを投げ、それをキャッチする場面もあり、まったく新しい経験の連続でした。New York Dollsの仕事は本当に光栄で、David JohansenやSylvain Sylvainと時間を共にできたのは大きな幸運だったと思います。
2003年にはNewcastleからBrightonに移り、The Go! Teamと長く活動を続けました。今でも時々彼らと仕事をしていますが、最後のツアーではテックから運転手に役割を移し、Ninja、Niadzi Muzira、そして4人の子どもたちとファミリーバスで旅をしました。あの時間は、おそらく私がツアーで経験した中で最も楽しいものでした。
同じ頃、Palma Violetsとも深く関わりました。私はほぼ最初から最後まで彼らと行動を共にしました。彼らはまるで弟たちのような存在で、一緒に世界中を巡りながら数えきれないほどのクレイジーな冒険をしました。
The Cureとの出会い

Reeves Gabrelsとの出会いについて教えてください。
現在、The Cureで共に仕事をしているReeves Gabrelsとは、彼が自身のバンドをUKに連れてきてツアー・マネージャーを必要としていたときに初めて出会いました。私たちの共通の友人であるThe Georgia SatellitesのDan Bairdが紹介してくれて、知り合ってからおよそ1週間で私たちは大の仲良しになりました。
2016年の夏の大半は、彼がThe Cureでツアーに出ている間、私は彼の家に住んでいました。当時、私はThe Subwaysの仕事でスケジュールが非常に詰まっていて、自分が住んでいた南フランスに戻ることができなかったのです。
The Cure以外では、最近どんなアーティストと一緒に仕事をしましたか?
ここ数年で、私は幅広いアーティストと仕事をしてきました。Uncle Acid & the DeadbeatsやロックンローラーのDanko Jones、Sea Power、シューゲイズの伝説The Jesus and Mary Chainなどです。さらに、80年代のレジェンドであるAndy TaylorやHaircut 100、90年代のヒーローであるSheryl Crow、Texas、Castとも仕事をしました。デンマークのネオ・クラシカル・ピアニストAgnes Obelとのツアーも経験しました。その際はギターには関わりませんでしたが、私がこれまで扱った中でも最も複雑なペダルボードを担当しました。
「Reevesには2つのペダルボードがあります。も小さなボードは、ReevesがFender Bass VIを弾くときのためのものです」
Al Robinson
ペダルの森
Reeves GabrelsがThe Cureで使用する機材について教えてください。
Reevesには2つのペダルボードがあります。メイン・ボード(これは巨大で、2人がかりで持ち上げるほどです)はステレオで2台の特注Audio Kitchenヘッドに接続されています。それらはPalmerのスピーカー・シミュレーターを介して2台のMesa Boogie 2×12キャビネットにつながれており、Divine Noise CablesのGil Divineが手作りした特注スピーカー・ケーブルで接続されています。ステージ上の動きが激しいため、マイクがキャビネットから外れてしまうことが多かったのでPalmerを使用しています。

もうひとつの小さなボードは、ReevesがFender Bass VIを弾くときのためのものです。それはメイン・ボードに直角に置かれており、モノラルでHiwatt Custom 100ヘッドともう1台のMesa Boogie 2×12に接続され、こちらもPalmerのスピーカー・シミュレーターを介しています。ケーブル類はすべて注文ごとに手作りされており、Divine NoiseかRattlesnakeのどちらかを使用しています。

「また、80年代製のDC-2 Dimension Cがあり、MODE 3に設定されています。これはReevesのシグネチャー・サウンドに欠かせない存在です」
Al Robinson
Reeves GabrelsのThe Cure用ペダルボードには、どのBOSSペダルが搭載されていますか?
もちろん、メイン・ボードのチェーンの最上部にはTU-3 Chromatic Tunerが搭載されています。また、80年代製のDC-2 Dimension Cもあり、MODE 3に設定されています。これはほぼ常にオンで、Reevesのシグネチャー・サウンドに欠かせない存在です。ツアー中に80年代製のDC-2を見つけると、Reevesはほとんどすべてのペダルボードに組み込みたがるので、私たちはたいていすぐに入手します。
ロックダウン中、私はBass VI用のボードを作り直しました。その際、Waza Craft TU-3W Chromatic Tunerを採用しました。Reevesも私も、従来のTU-3よりTU-3Wのほうが気に入っています。その理由は「これ以上ないほど黒い」ことです。また、青いLEDは明るい光の下でも見やすいと感じています。
私はスマートフォンでBOSS TU-3 Chromatic Tunerアプリを使うのも大好きです。これまでさまざまなチューナー・アプリを試しましたが、最終的には必ずこれに戻ってきます。見た目も非常にクールです。ちなみに、私の彼女はタトゥー・アーティストで、私はしばらくの間、TU-3とストリング・ワインだダー組み合わせたタトゥーを入れようと考えています。いわばギター・テック版のドクロと骨のマークのようなものです。

「GE-7 EqualizerはReeves Gabrelsのお気に入りの定番ペダルのひとつです」
Al Robinson
BOSSのセレクター
Reeves Gabrelsは自身のプロジェクトで、どのBOSSペダルを使用していますか?
彼自身のプロジェクト用では、DC-2、TU-3、そして時々LS-2 Line Selectorを使っています。また、改造されたGE-7 Equalizerをいくつか持っていて、よくブーストとして使用しています。GE-7は彼のお気に入りの定番ペダルのひとつです。
CS-3 Compression Sustainerはコンプレッション段階でよく使われるおなじみのペダルです。Reevesと一緒に仕事をするのは素晴らしい体験です。なぜなら、彼は文字通り「出会う中で最高のテック」だからです。もし何かで行き詰まっても、彼はほぼ確実に解決策を知っています。

スタジオでは、どのようにBOSS機材を使用していますか?
昨年初め、私たちはReevesがUKとNashvilleで保管していたすべての機材をまとめ、ニューヨーク州北部にある彼のホーム・スタジオに移動させました。私の仕事のひとつは、それらすべてをカタログ化することでした。このプロジェクトは非常に楽しく、ReevesもBowie時代から長年使っていなかった機材をいくつも再発見しました。たとえば、DD-5 Digital Delay、SD-2 Dual Overdrive、PH-2 Super Phaser、PS-5 Super Shifterなどです。これらはいずれも、彼自身によるカスタム・ペイントが施されていました。
「Reevesはまた、BOSS Micro Rack Seriesの1980年代製RPS-10 Digital Pitch Shifter/Delayを4台所持っており、Bowieと一緒に活動していたときに常に使用していました」
Al Robinson
Reeves GabrelsはBOSSペダルのどこが好きなのですか?
彼は「BOSSペダルは音が素晴らしく、壊れません。仮に壊れたとしても、世界中どこでも交換できます」と話していました。
「BOSSペダルは音が素晴らしく、壊れません。仮に壊れたとしても、世界中どこでも交換できます」
Reeves Gabrels
あなたがこれまで一緒に仕事をしてきたギタリストたちは、どのようにBOSSペダルを使っていますか?
TexasのTony McGovernは、ボード上でFRV-1 Fender Reverb、CH-1 Super Chorus、SD-2 Dual Overdriveを使用しています。FRV-1は素晴らしい音のリバーブで、彼らが持つNorthern soulの雰囲気と相性抜群です。SD-2は古典的なモデルで非常に多用途です。歪みのあらゆるニーズをカバーできます。
The Jesus and Mary ChainのWilliam Reidは、ボードを使って4段階に分かれた歪みを徐々に強めています。そのうち最後の2段階は、GE-7とOD-3 Overdriveによって作られています。各段階はすべてES-5 Effects Switching Systemを通じて制御やバイパスが可能です。さらに、RC-300 Loop Stationを用いて、すべてのフィードバックループもコントロールしています。

「The Jesus and Mary ChainのWilliam Reidは、GE-7とOD-3 OverDriveを使用しています」
Al Robinson
低音に宿る愛情
これまで一緒に仕事をしてきたベーシストたちは、BOSSペダルをどのように使っていますか?
Oysterbandでは、ベースのRay “Chopper” Cooperがチェロも演奏していました。そのチェロの音をOC-3で処理すると、本当に素晴らしい音になりました。低域の迫力がすごかったです。

また、BOSSペダルをベースでうまく使っていた例として、Palma Violetsがあります。ベーシスト兼ボーカルのChilli JessonのボードにはBD-2 Blues Driverを置いていました。彼の’78 Fender Precision BassとクラシックなAmpegアンプと組み合わせると、私がこれまで聴いた中でも最高のベース・トーンのひとつでした。
ベース用オーバードライブについて言えば、ODB-3 Bass Overdriveも見逃せません。The SubwaysのCharlotte Cooper、WolfsbaneのJeff Hateley、The CureのSimon Gallupも、ODB-3を使って素晴らしい効果を出しています。
「ODB-3 Bass OverDriveも見逃せません」
Al Robinson
テックのお気に入りペダル
ギター・テックとしての立場から、BOSSペダルの一番好きな点は何ですか?
足元のボードにBOSSペダルが並んでいると、どんな音が得られるのかすぐに分かります。ビルド・クオリティが非常に高く、ほぼ壊れる心配がないので、演奏中に思い切り踏み込んでも問題ありません。いつでも安定した素晴らしい音を出せるため、信頼性は抜群です。まさに業界標準と言えます。
さらに、初心者でも手が届きやすい価格帯なので、自分の音作りの可能性や奥深さを知る入り口としても最適です。テックとしても、ペダルの交換や追加が必要になった場合、世界中どこにいても最寄りのギター・ショップでほぼ確実に入手できるのも安心です。
タップ・テンポが追加されたDD-3T Digital Delayは、Robinsonが好きなクラシック・ペダルであるDD-3 Digital Delayを現代的に進化させたものです。

「BOSSペダルはいつでも安定した素晴らしい音を出せるため、信頼性は抜群です。まさに業界標準と言えます」
Al Robinson
あなたが所有しているBOSSペダルは?
ここ数年で、自分の機材はすべて長男の部屋に移ってしまったようです。彼は特にRC-3 Loop Stationが大好きで、私が使っていたとき以上に上手に活用しています。
1980年代、ティーンエイジャーだった頃は、OD-1 OverdriveとBF-2 Flangerを使ってRandy Rhoadsのような音を目指していました。その後、DD-3 Digital Delayと出会い、Hawkwindのサウンドにも触れることになったのです。
あなたが一番好きなBOSSペダルは何ですか?
おそらくDD-3でしょう。その可能性に衝撃を受けました。突然、自分が何をしているのか理解しているような感覚になったのです。夢中になって何時間もいじり続けたことを覚えています。

タイムレスな音色
BOSSのクラシック・モデルで、復活してほしいものはありますか?
CE-1 Chorus EnsembleとDB-5 Driverが復活すれば素晴らしいと思います。レトロなルックスがとてもクールで、きっと人気が出るでしょう。Reevesはどちらも複数台所有しており、彼のスタジオで触らせてもらったことがあります。本当に素晴らしい機材です(私と同じくらい古いですが!)。また、TW-1 T Wah/Touch Wahも気に入っていますが、こちらはかなりニッチなモデルです。
あなたが知っているBOSSペダルの印象的なサウンド事例は何ですか?
Edie Brickell & New Bohemiansの「What I Am」でのTW-1。The Cureの「A Forest」でのRobert Smithのサウンドも大好きですし、Alex Lifesonが「Spirit of Radio」でCE-1を使った音も最高です。そしてThe Cultの「She Sells Sanctuary」でのBilly Duffyのサウンドも素晴らしいと思います。あれにはDM-2 Delayに加えて、他のBOSSペダルも使われているはずです。
無人島に持って行くBOSSペダルボードに3つだけ選ぶとしたら?
TU-3以外で選ぶとしたら、青春時代に立ち返ってOD-1、BF-2、DD-3を持ち込み、Hawkwindへのトリビュート曲を書き続けると思います。
ペダルボードのセッティングでコツはありますか?
とにかくシグナルチェーンを尊重して、正しい順番で並べることです。順番を無視すると、痛い目に遭います。若いバンドと仕事を始めたころ、買った順に並べたエフェクトでボードを組み、全然うまく音が出せなかったことが何度もありました。チェーンの順番は絶対に守るべきです。
現在のエフェクトペダル市場についてどう思いますか?
本当に素晴らしいと思います。奇抜で面白いペダルがたくさんあります。唯一の制限は、自分の想像力と財布だけです。