James Blakes engineer Bob Mackenzie

Behind the Board:Bob MackenzieとJames Blake

James BlakeのエンジニアであるBob Mackenzieが、スタジオでBOSSペダルを使って楽曲をどう仕上げているのかを語ります。 All photos courtesy of the artist

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Bob Mackenzieは単に録音作業をこなすだけでなく、音そのものを彫刻するように作り上げていきます。アーティスト兼プロデューサーのJames Blakeのスタジオで右腕として活躍し、Mackenzieは創造的な若手エンジニアの一人としての評判を築いてきました。独自の音色を生み出し、楽曲の中で驚くべき瞬間を生み出す彼の能力は、現代音楽制作の最先端における地位を確立しています。この独占インタビューでは、MackenzieがBOSSペダルを単なるツールとしてではなく、独自の楽器として使用し、音響の限界を押し広げ、忘れられないサウンドがどのように生まれるのか、その舞台裏を探ります。

プロのためのクリエイティブ・ツール

Mackenzieの制作プロセスは、手作業で触覚的、そして即興性に根ざしています。誰かが録音をしているとき、彼はその横からペダルボードを通して信号を送り、ノブを即座に調整しながら刺激的なテクスチャーをアーティストのヘッドホンに送り返します。彼が「ギター・ペダルは新しいアウトボードである」と信じているのは、単なる言い回しではなく哲学です。シンプルなリアンプ・ボックスを使うことで、コンパクト・エフェクターをスタジオ級のプロセッサーに変換することができます。

RC-1 Loop Stationで催眠的なループを作る場合も、RE-202 Space Echoで幻想的なアンビエンスを形作る場合も、DD-3T Digital Delayでパーカッションを変形させる場合も、MackenzieはBOSSペダルを最高級のクリエイティブ・ツールとして扱います。このインタビューを通じて、エフェクトを用いて即興性を引き出し、音楽の個性を形作り、想像力の限界まで音楽を高める手法を学びましょう。

James Blake engineer Bob Mackenzie

耳で楽しむ瞬間

スタジオでは、エフェクターをどのように活用していますか?

私は録音にできるだけ個性を持たせるようにしています。エフェクターで音を操作することは、それを叶える一番の方法です。こうした耳で楽しむ瞬間が、良いプロダクションと素晴らしいプロダクションの分岐点になることがあります。その瞬間は、録音に自分の音を表現するチャンスと言えるでしょう。よく使うエフェクターのチェーンをアウトボードとして使うことで、簡単にそのプロセスまで辿り着けるようになります。

エンジニアとして、音でインスピレーションを与えることはとても大切です。音をクリアにしたり、ミュージシャンが刺激を受ける形で新しい命を吹き込んだりすることができるからです。私は常に心の片隅で「演奏しているミュージシャンにとって、どうすればよりインスピレーションを与えられるだろうか?」 と考えています。エフェクターはそれを実現する方法の1つです。

「耳で楽しむ瞬間は、録音に自分の音を表現するチャンスと言えるでしょう」

お気に入りのBOSSペダル

お気に入りのBOSSペダルは何ですか?

まず、Chromatic Tunerはペダルボードに欠かせません。業界にとっての常識でしょう。しかし、私が一番好きなエフェクトはコーラスかもしれません。私は長年CH-1 Super Chorusを使っていて、常に大活躍しています。

また、BOSS RE-202 Space Echoも大好きです。最初はChris Turpin(Ida MaeおよびMiradorのギター兼ボーカルで活動)と一緒に使いました。ChrisはReal World StudiosでRE-202を手に入れたばかりで、その驚異的な性能を目の当たりにしていたところでした。Real WorldにはオリジナルのRoland RE-201 Space Echoがありますが、BOSS RE-202は本当に驚異的です。追加機能も素晴らしく、特にスウェル機能が気に入っています。

BOSS RE-202 Space Echo
BOSS RE-202 Space Echo

Loop Stationとの出会い

最初に購入したBOSSペダルは?

RC-1 Loop Stationです。クリエイティブな使い方が非常に多く、本当に素晴らしいエフェクターです。ボードに単一のLoop Stationペダルがあるだけで、モチーフやグリッチの作成に役立ちます。Loop Stationは、使う人次第で無限に創造的な表現が可能です。私は作曲やアイデア作りのためにBOSS Loop Stationペダルを使ってきました。特にRC-300は頻繁に使用しています。

「Loop Stationは、使う人次第で無限に創造的な表現が可能です」

スタジオでのBOSS Loop Stationの使い方を教えてください。

録音ではアンビエントな音作りで使用するのが好きです。例えば、パッドを作り、それを無限ループに設定します。DAWで一定のBPMのもと、Loop Stationで録音した持続音を使用すると、完全にタイムが合わなくても非常にクールに聴こえます。ループが繰り返されるたびに、ランダムな要素が生まれます。

最近の音楽は正確に同期していることが多いため、バリエーションを加えて際立たせるものは価値があります。パッドや持続音、特にボーカル・エフェクトと相性が良いです。James Blakeもライブやスタジオでこうしたことを実験しています。

BOSS RC-1 Loop Station
BOSS RC-1 Loop Station

必須のディレイ

その他によく使うBOSSペダルはありますか?

DD-3T Digital Delayをよく使っています。このペダルは複雑すぎませんが、できることは非常に多いです。BOSS RE-202 Space Echoと一緒に使えば、ディレイに関してはもう何も不足ありません。

「DD-3Tは面白いパーカッション・テクスチャーを作るのに最高です」

スタジオでのDD-3Tの使い方を教えてください。

DD-3Tは面白いパーカッション・テクスチャーを作るのに最高です。フィードバックを最大にして繰り返させ、その後スプリング・リバーブに接続してパーカッション・パートを演奏します。これにより、元は単発のトランジェントだった奇妙なパーカッション要素が繰り返され、継続的なテクスチャーの一部になります。

DD-3Tはタップ・テンポを使用して、リピートをプロジェクトに合わせて同期することもできますし、リズムの間で緩やかに動かすこともできます。どちらの使い方も状況に応じて有効です。また、ディレイ・タイムやフィードバックのノブをリアルタイムで調整して、音のうねりを上げたり下げたりすることもできます。

BOSS DD-3T Digital Delay
BOSS DD-3T Digital Delay

新しいアウトボード

演奏中にペダルのノブを即座に調整することはありますか?

常に行っています。ギター・ペダルは新しいアウトボード・エフェクトだと感じています。常にリアンプ・ボックスをセットアップしておき、ペダルボードをアウトボード機器として使用します。スタジオから何でも送信でき、モノ入力をペダルボードに送って、ステレオで戻ってきます。

James Blakeと一緒にスタジオで作業するとき、ペダルはどんなふうに使っていますか?

例えば、Jamesが鍵盤を弾いている、あるいは誰かがギターを弾いているとします。その音をペダルボードに通して、演奏している音に面白いテクスチャーを作ります。その後、ヘッドホンに戻します。他の方法では出せない音が作れるので、本当に刺激的なんです。ペダルを直接触って音を作るのが最高だと感じます。

「Jamesが鍵盤を弾いている、あるいは誰かがギターを弾いているとします。その音をペダルボードに通して、演奏している音に面白いテクスチャーを作ります」

サウンドの発見

録音中、私はよくペダルのパラメーターを調整して面白いエフェクトを試します。また、Loop Stationで少し録音して、それを再生しながら操作することもあります。こうすることで、演奏している音の下にシンセ・パートを作り出すような感覚になります。録音がとても楽しくて刺激的になります。

BOSS CH-1 Super Chorus

エフェクターは即興性の面でインスピレーションを与えてくれますか?

はい、100%そうです。私はペダルに印をつけたり、プリセットを書き留めたりせず、毎回その場で調整します。すべての音を完全に新しいものとして扱います。聞きながら発見するという初心者の心構えは非常に大切です。予測できない結果が生まれます。私は、とにかく試して耳で確かめるという初心を大事にしてます。それによって、プロセスを繰り返すだけでなく、創作者としてより現在に集中できます。

ペダルボードはデスクの横に置いてあって、いつでも触って遊べるのがとても楽しいです。人間がパラメーターを操作することで、自然に偶然の要素が加わり、思いがけない発見があります。また、他のメンバーにもペダルに触れてもらい、どんな音が出るかを試してもらうのも楽しく刺激的です。

James Blake engineer Bob Mackenzie

常に新鮮なままで

同じことを繰り返していると感じることはありますか?

もし自分が同じことを繰り返していると感じたら、いくつかのペダルを入れ替えて、今まで使ったことがないものや馴染みのないアイデアを追加します。そうすると、すぐに全く新しい世界が広がったように感じます。

BOSSの歪みペダルは使ったことがありますか?

個人的にはBOSSのオーバードライブやディストーション・ペダルにはあまり詳しくありません。ただ、一度John Parishとのセッションで、彼がボーカルを通すためにいくつかの歪みペダルを使用していたことがありますが、それは素晴らしい音でした。

Rod Brakes

BOSSのブランド・コミュニケーションおよびコンテンツ企画担当。過去にはGuitar WorldやMusic Radar、Total Guitarを始めとする数々の音楽メディアでの執筆経験があり、アーティストや音楽業界、機材に関する幅広い知識を持つ。彼自身も生粋のミュージャンである。