時々、本当に新鮮な風を感じさせるアーティストが現れます。彼らの音楽にはアイデアが詰まっていて、鋭くて、妥協がありません。Oxisはまさにそうした存在です。クラシックな声楽を習った一方でジャンルに囚われない精神を持ち、RC-505mkII Loop Station、VT-4 Voice Transformer、エレキ・ギターを中心に、一人でビートと没入感のあるサウンドスケープを生み出します。ライブでは、事前にプログラムされたビートやシンセ、重ねられたボーカル、ギターが交錯し、ドリーム・ポップのフックと瞑想的な儀式が融合したパフォーマンスを展開します。
オーガニックな誠実さ
彼女のシングル「Long Sardine」をまだプレイリストに入れていないなら、きっとすぐに追加したくなるはずです。新作『Oxis 7』に収録されたトラックで、すでにSpotifyで150万回以上ストリーミングされ、彼女のDIY精神を見事に表現しています。電子機材を通しても、人間味のある誠実でオーガニックな質感が音楽に宿っています。創造的で実験的、そして感情が溢れ出ています。LAのオープン・マイクで演奏している時でも、何千人もの前でThe Voidzのサポートをしていても、Oxisは常に自分の本質を見失いません。
音の背後にあるストーリーもファンを魅了する理由のひとつです。この記事では、Oxisがステージ恐怖の克服、自主的な音楽の道のり、そしてループ技術が作曲やライブ・パフォーマンスのアプローチをどのように変えたかについて率直に語ります。2年間で7枚のアルバムを制作したという彼女の取り組みと、音楽・映像・パフォーマンス・アートにまたがる唯一無二の美学に触れると、感化されずにはいられません。彼女の話を聞けば、自分自身でもループ・ステーションを手に取りたくなるかもしれません。
完璧と即興の狭間で踊る
BOSS RC-505mkII Loop Stationをどのように知りましたか?
最初に義理の兄、Sam Gendelに使い方を教えてもらいました。それこそがすべてを変えたんです。彼にドラム・ループ、シンセ・サウンド、バック・トラックをコンピューターからRC-505に移す方法を教わり、それはまさにゲーム・チェンジャーでした。本当に最高の機械です。
「Long Sardine」というブレイク・スルー曲の制作で、RC-505mkII Loop Stationはどのよふうに力になりましたか?作るうえで苦労した点も教えてください。
「Long Sardine」をキッチンでループして演奏したら、急速に拡散されました。そのときにレコード会社から連絡が入り始めました。RC-505mkII Loop Stationを手に入れたとき、音楽ディレクターを雇おうとしたんです。でも彼に「もしライブ中ずっとループばかりしてたら、4曲目であくびして、5曲目でドリンクを取りに行くと思うよ」と言われました。
多くの人から、ライブでループするのは狂っていると言われました。それはまるで、完璧さと即興の間で踊るような感覚です。でも今では、私の音楽制作やギター演奏、創作の仕方に大きな影響を与えています。
RC-505mkII Loop Stationの自分なりの使い方は見つかりましたか?
ええ、間違いなく、これはひとつの世界です。今はエフェクトの探求をもっと深めていて、できるだけライブでも演奏したいと思っています。
ライブセットの長さはどのように調整していますか?
今は、ループ・ステーションで毎日23曲を練習しています。そのおかげで、20分から1時間半のセットにいつでも対応できます。どの曲でも、ずっとジャムしていられます。
「どの曲でも、ずっとジャムしていられます」
RC-505mkII Loop Stationでの即興演奏は楽しいですか?
それが一番楽しい瞬間です。最初の2、3回のライブでは、本当に緊張して少しパニックにもなり、即興ができませんでした。でも今は慣れました。
時間が経つにつれ、ますます自由に演奏できるようになり楽しいです。最初のライブほど怖かったことはありません。それ以降はすべて気楽に感じます。何でもできる気がします。
The Voidz前座の舞台裏
Oxisとして初めてステージに立ったのは、The Voidzの前座のときでした。そのチャンスはどうやって掴んだんですか?また、RC-505mkIIを使った最初のライブでどんなことを学びましたか?
週に一度オープン・マイクに行き、Julian Casablancasのプロデューサー、Jason Laderに会いました。彼は私のInstagramをJulianに見せました。ライブで演奏し、ギターを弾き、歌うという自然な方法で人々と出会えたのです。最終的にRC-505mkIIをオープン・マイクに持ち込みました。それが、The Voidzのサポート・ライブ直前に初めてライブで試した時でした」
「RC-505mkIIをオープン・マイクに持ち込み、それがThe Voidzサポート・ライブ直前に初めてライブで試した時でした」
その夜のオープン・マイクには約40人が集まっていて、悪いことはすべて起きました。Voidzのリハーサルで練習した唯一の時間も、まったく同じ感じでした。「もうダメだ、フライパンみたいに焼ける気分だ。1,500人の前で恥をかく…」と頭の中で思っていました。RC-505mkIIの使い方を覚える過程では、何もかもがうまくいかないように感じ、制御できない気分になりました。本当に怖かったです。でも今では、RC-505mkIIは世界で一番のお気に入りです。
ライブではどんな機材を使っていますか?
音楽をオンラインで投稿する際は、ループ録音のためにラップトップを使います。しかしライブではコンピューターを使いません。ライブセットはかなりシンプルで、Roland VT-4 Voice Transformer、ストラトキャスター、BOSS RC-505mkII Loop Stationを使っています。持ち運びも簡単です。特にVT-4がお気に入りで、セットに豊かなダイナミクスを加えてくれます。主にフォルマントとリバーブのエフェクトを使い、曲によってどちらか一方、あるいは両方を活用しています。
弦が切れたときのために、予備のギターを用意していますか?
まさか、そんな!これ以上私に恐怖の種を植え付けないで!
RC-505mkIIはパフォーマンスや音楽制作のアプローチをどう変えましたか?
最初は、Oxisとして録音した曲をライブでどう演奏すればいいか全く分かりませんでした。最初の3枚のアルバムを聴いただけでも、理解するのに何週間もかかります。多くの曲が変則チューニングで作られていましたし、ライブで演奏することを想定せず、奇妙なギター・パートを重ねていたのです。でも今では、RC-505mkIIを使うことで、制作とライブ演奏が互いに影響し合うようになりました。
「ループ・ステーションはまた、物事は必ずしも複雑である必要はないことを教えてくれます」
以前録音した曲の新しいバージョンも制作しています。というのも、RC-505mkIIを使ったライブ演奏では曲の解釈が変わることがあり、ループ・ステーションを使った新しいバージョンのほうが、時にはより良くなることもあるからです。なので、今はその新しいバージョンも録音する必要があります。まるでフィードバック・ループのようです。
ループ・ステーションはまた、物事は必ずしも複雑である必要はないことを教えてくれます。正しい音を押さえれば、シンプルであっても大きな力を持つ演奏が可能です。曲が始まって1〜2分の間に、私はRC-505mkIIの全5トラックを使い切ることが多いですが、それによってすべての操作に意図を持つことの重要性が分かります。これは本当に貴重な教訓でした。
レイヤーと響き
ライブでトラックを重ねる際、音をクリアに保つために意識することはありますか?
ボーカル・トラックを重ねすぎると、音が少し混ざり合いすぎることがあります。低音が積み重なると音が濁ることもあります。ライブ演奏では、周波数の混ざり方をいつも考えています。
RC-505mkII Loop Stationは強力な機材ですが、練習を重ねると自然に使いこなせるようになりますね。
本当にその通りです!今では怖がることなく使えるレベルにまで達していると思います。アパートにはシンセやスピーカーはなく、すべてヘッドフォンで完結しています。近所からの苦情も今のところありません。
ヘッドフォンで練習・作曲する時と、ライブで使う時で差を感じますか?
聞こえない時もありましたが、舞台でもヘッドフォンを使えば全て操作できると気づきました。自分の小さな世界に留まることができるのも気分を良くしてくれます。
PAシステムの振動を感じますか?
いいえ。完全に集中しているので、自分の部屋にいる感覚です。もっと視線を観客に向けるべきかもしれませんが、ループを常に見ている必要があるので難しいです。まだ進化の余地はありますが、部屋にいるような感覚です。
「私の音楽は計画性がないため、とても感情に突き動かされます」
感情が導く進化
音楽以外で、Oxisのサウンドに影響を与えるものは?
映画や本など、吸収するすべてから影響を受けます。今読んでいるグラフィック・ノベル「Black Hole」では、十代の少年少女と奇妙な病気が描かれています。
こうした要素は最新アルバム『Oxis 7』に暗いムードとして表れています。私の音楽は計画性がないため、とても感情に突き動かされます。本、映画、会話から得た感情が、次の曲のテーマになります。
あなたの音楽はどのように進化していると思いますか?
私は、自分のプロダクションがより良くなり、ギター演奏も上達し、すべてが少しずつ洗練されつつも、驚きに満ちていると思いたいです。これまで音楽に入れられないと思っていた要素も押し進めていきたいです。自分の世界の境界線に近いものをただ聴き、試してはいけないと思うようなことにも挑戦してみたいのです。明日の曲は今日の曲よりも良くなるはずです。自分自身を驚かせたい。Abletonの前に座って、言葉でも音楽でも、とにかく出てくるものをぶちまけたいのです。そして、何が飛び出してくるかは、本当に分からないのです。
過去のリリースを振り返ることはありますか?その中で特にお気に入りの曲はありますか?
私はあまり振り返るのが好きではありません。どんなことでもです。常にスピード感を持って進み、人生のあらゆる要素で自分を押し続けたいんです。できるだけ多くの音楽を作りたい。だから、あまり過去を振り返ることはありません。
「常にスピード感を持って進み、人生のあらゆる要素で自分を押し続けたいんです。できるだけ多くの音楽を作りたい」
楽しみにしていることはありますか?
私はいつも、来週がどうなるか全くわからないと言っています。仕事の予定や友人との予定があるかもしれませんが、それだけでは予測できません。毎日、本当に自分の世界がひっくり返るかもしれないと思うんです。だから、私は一日一日を大切に生きるようにしています。
つまり、「今を生きる」ということですか?
そうです。今を生きることです。やるべきことがとても多くて、先のことを考えるのは本当に難しいんです。毎日できるだけ多くのことをこなしながら、常に成長し続けることが大事だと思っています。
ループ状態のマインド
その考え方は、ライブ・ループで音楽を作るときのあなたのスタイルにも通じますね。自然にそういう状態になれますか?
はい、間違いなくそうです。今ではとても自然な状態に感じます――いわゆるフロー状態です。私はランニングも大好きで、それに似ています。世界全体を完全にシャットアウトできる感覚が心地よいんです。それがループ演奏の魅力でもあります。本当に瞑想のようなものです。一般的に、極度にストレスを感じたり、落ち込んだときは、何時間も同じ曲を繰り返しループしたりします。それがどんなに同じ曲でも、とても瞑想的で、心地よい気分になります。
同じループやフレーズを繰り返すのに抵抗を感じるミュージシャンもいます。
はい、以前は私もそう考えていました。でも今は、ただ自分の好きなものに自然と引き寄せられるままにしています。それが一番無防備なことのように思えますし、同時に共鳴し始めているものでもあるようです。まるでみんな少しずつ狂っているような状況の中で、ちょっとした繰り返しの何かがあると、それだけで心地よく感じられるんです。
最近の世界は、本当に忙しないですね。
そうですね。私たちはみんなスマホに没頭し、あらゆるニュースの見出しに振り回されています。そんな中で、少しでも落ち着ける場所を見つけられるのは嬉しいことです。
音楽はあなたにとって、そういう現実逃避の手段と言えるのでしょうか?
間違いなく、そうです。ずっとそうでした。私はいろいろな面で完璧主義者だと感じることが多いのですが、それと同時に、音楽は完璧さを追求しつつ解放される手段にもなっています。
不完全の中に完璧さを見つける、と言えますね。
そうですね。ループをどれだけきれいに作れるかのバランスを取るのは面白いですが、もしループが世界一きれいでなくても、ライブ会場から追い出されるわけではないと分かっているんです。
ループのちょっとしたバグが、かっこよく聞こえることもありますよね。
はい、それも学んでいるところです。本当に実験的な感覚があります。アートには間違いなんて存在しません。
「もしループが世界一きれいでなくても、ライブ会場から追い出されるわけではないと分かっているんです」
ギターで頭の中を掻き鳴らす
お気に入りのギタリストはいますか?
Saya Grayは本当に素晴らしいです。彼女のギター演奏を見るのが大好きです。ぜひチェックしてみてください。本当に驚異的です。彼女の音のアプローチは、私が普段耳にするものとは違った形で脳に刺激を与えます。彼女はジャズのバックグラウンドを持ち、Daniel Caesarのバンドではベースも弾いていました。つまり、彼女は素晴らしいベース・プレイヤーでもあるんです。でも、指が弦の上を跳ね回るあの感じが、とにかく非常に満足感があります。
Mid-Air Thiefも驚かされます。「Seismic」という曲があるのですが、これは私が死ぬ前に絶対に演奏したい曲です。私がこれまで聴いた中で最も素晴らしいギター演奏の一つです。説明しようがないくらいぶっ飛んでいて、脳の新しい部分を開かせてくれるような演奏です。
私は現代の音楽から多くを吸収しています。もちろん、The Rolling StonesやThe Doorsも大好きですが、現代の多くのギタリストが音に取り組む方法には知的な側面があります。少し自己陶酔的になりがちで、演奏において自我が邪魔をすることもありますが、それでも演奏していて満足感を得られる瞬間もあるんです。
ギタリストとして上達することはどれくらい重要ですか?
私は1年間レッスンを受けたことがあり、それ以来、自分が必要とするレベルにはまだ全然達していないと感じています。もっとずっと上手くなりたいです。自分よりもずっと上手いギタリストに恋し続けています。それが助けにもなります。彼らから学べるからです。動画を見たり曲を聴いたりして、フレーズを耳にすると、どうしてもそのフレーズを完璧に弾きたいと思うんです。
「自分よりもずっと上手いギタリストに恋し続けています。それが助けにもなります」
私は常に最も難しいフレーズを弾けるよう努力し続けますが、それでも自分のギターが十分に上手いとは思えないでしょう。今でも、ライブで演奏するには十分だとは思いますが、もし毎日5〜10時間練習したらできることの幅を考えると……人々は本当にすごいですし、それをオンラインで見られるだけでも驚きます。上限というものはなく、それは恐ろしくもあり、同時にとても楽しいことです。でもプレッシャーも大きいです。なぜなら、自分は可能な限り上手くなりたいからです。
私のハリウッド人生
ハリウッドで若手のライブ・ミュージシャンとして活動することはどんな感じですか?
会場はあちこちにあり、ハウス・パーティで演奏するのも大好きです。サンフランシスコにライブに行くこともあります。完璧な環境です。音楽に囲まれています。
ソーシャルメディアを通じて育つ中で、個人的またはアーティストとしてプレッシャーや課題はありましたか?
私は27歳で、2010年からInstagramを頻繁に使っています。15年間、ほぼ人生の大半です。オンラインでキャラクターを形作ることを学びました。人々はオンラインでどうあるべきか色々な考えを持ちますが、結局は自分で夢見る通りに作れます。
あなたの動画では強い個性が際立っています。どのように制作していますか?
ありがとう。動画を作るのはとても楽しいです。三脚もありますし、コーディング用のソフトウェアも持っています。動画を自分で作るのが大好きなので、一人で作ることが最も自然に感じられますし、長く続けられることでもあります。アートに関して言えば、自分でやるのが一番好きです。
私はTouchDesignerという動画ソフトを使っています。比較的新しいソフトで、カナダ製だと思います。多くの人がエレクトロニック・セット用にオーディオに反応するビジュアルを作るのに使っています。できることはほぼ無限で、自由に何でも作れます。去年の夏にYouTubeの動画をいくつか見て、基本的なクリエイティブ・コーディングの方法を学び、それが私の夢中になっていることにつながりました。






