フランジャーは圧倒的な存在感を音楽の世界で放ってきました。80年代のハードロックで聞くことができるジェット機のように激しくうねるサウンドから、The Beatlesの “Tomorrow Never Knows”のサイケデリックな音まで、ミュージシャンはあらゆる音色を作り出すためにこのエフェクトを使ってきました。様々な機能で知られるモジュレーションですが、それ以上の使い方があります。フランジャーはギタリストが求める、あらゆる形のモジュレーションに応えるエフェクターとして、多くのシチュエーションで活躍するペダルです。他のエフェクトと組み合わせることで得られる、驚く効果について紹介します。
フランジャーの配置場所
大半のモジュレーション・エフェクトと同様、フランジャーはディレイやリバーブの前、そして歪み系ペダルの後に配置するのが最も効果的です。そうすることでフランジャーは歪み系エフェクトの音色をブーストしつつ異なる質感を加え、さらに個性的な音に仕上がります。またディレイやリバーブの前に置くと、他のエフェクトとのバランスを崩すことがなくなります。例えばフランジャーの効果がディレイの後にくると、ディレイの残響が潰れてしまい、インパクトが弱まってしまいます。
有名なフランジャー
フランジャーは嗜好品のようなペダルだと考える人も多いかもしれませんが、伝説的なリフを生み出してきたエフェクトです。HeartのRock ’n’ Rollの中でもクラシックな“Barracuda”の冒頭は、滝のように流れるフランジャーの波によって単純なコードのパターンが命を宿したかのように聞こえます。The Cureの”A Forest”でも、同じように素晴らしい効果を体感できます。Robert Smithがリズミカルなギターにフランジャーをかけることで生まれた、心地よい雰囲気のうねりを聞いてみてください。
PEDAL COMBINATIONS
オーバードライブ
オーバードライブはBOSS BF-3のようなフランジャー・ペダルと相性が抜群です。急上昇するジェット機のような音を奏でるフランジャーにとって、歪んだギターの音は最高の土台となります。BOSS SD-1と組み合わせれば、オーバードライブの中域が渦を巻くフランジャーの効果を際立たせます。
おすすめのペアリング
- BOSS BF-3 × SD-1
- BOSS BF-3 × BD-2W
ディレイ
ディレイは音楽の雰囲気を作り出す最高のエフェクトです。ストレートな印象のギターのパートに効果的でしょう。変化の少ないコードにリズミカルなエコーをかければ、広大な空間でも十分に曲の盛り上がりを生み出すことができます。
そこでフランジャーを使うと、ディレイ・ペダルのリズミカルで消え入るような効果がより印象的になり、繊細な深みと雰囲気を味わえます。The PoliceのAndy Summersはディレイとフランジャーの組み合わせから、まさにそのような音を作り出しています。The Policeの“Walking On The Moon”を聞けば、極めて単純なギター・パートが2つのエフェクトによって盛り上がりを生み出しているのが分かるでしょう。
「フランジャーを使うと、ディレイ・ペダルのリズミカルで消え入るような効果がより印象的になります」
Summersはこの楽曲で単純ながらも尖ったコードを弾き、ディレイ・ペダルのREPEATを強調しています。ゆっくりで控えめなフランジャーは、レコードがゆっくりと回転するような穏やかな動きを作ります。このような質感を作るには、RATEとDEPTHを低めに設定してください。フランジャーは目立たせずに、さりげなく使用します。このアプローチを他のエフェクターにも試すと、フランジャーの限りない音のアイデアを発見できます。コード進行やピッキングされたパートを持ち上げようとさりげなく使用するとき、フランジャーの魅力が発揮されるでしょう。
おすすめのペアリング
- BOSS BF-3 × DD-8
- BOSS BF-3 × DD-500
トレモロ
トレモロとフランジャーの単純な組み合わせはエレクトリック・ギターをシンセサイザーに変えます。昔からこの2つのエフェクトは様々なギターの音色に活用されてきました。しかし、限界までエフェクトを押し込むことでギターをSF映画に出てくるレーザー銃のような音が聞こえてきます。
まずトレモロのDEPTHを時計回りに振り切り、切り刻んだの音量を最大限まで上げます。それからSPEEDを速めに設定すると、ギターの音色に機械的なサウンドが加わります。同じようにフランジャーのDEPTHを時計回りに振り切り、RATEを12時よりも低く設定してください。重く変調されたフランジャーの渦とロボットのようなトレモロの吃音が組み合わさり、音色が一変します。重いモジュレーションが効いた個性あるギターの音作りをしたいときに、シンプルな単音を演奏しながら試してみてください。
おすすめのペアリング
- BOSS BF-3 × TR-2
「トレモロとフランジャーの単純な組み合わせはエレクトリック・ギターをシンセサイザーに変えます」
リバーブ
リバーブは常に変化し続けるエフェクトの一種です。伝統的なリバーブは広い部屋での自然な響きを模倣し、ギターの質感や空間的な表現を作り出すものでした。それとは対照的に、現代の流行となっているのは、さらに広がりのある合成リバーブです。本来、リバーブは現実の環境を再現するためのものです。現在では多くの音楽家が洞窟のエコーで別世界のようなサウンドを作り出すために使用しています。フランジャーをこのアイデアを叶えるためには必須のペダルです。
深くゆっくりと設定されたフランジャーのジェット音のようなうねりは、広大な洞窟のリバーブに質感と動きを加えます。実質的に幽玄な音の波を作り出すプレイヤーにとって、この組み合わせは非常に効果的です。この種のエフェクトを作るために、リバーブ・ペダルをSHIMMERまたはOCTAVE系のプリセットに設定し、TIMEとEFFECT LEVELのノブを最大にします。フランジャーのRATEを9時の方向に設定すると、ゆっくりとしたスイープが得られ、DEPTHを3時の方向に設定すると、深く、モジュレーションの波に集中できるような効果を得ることができます。
おすすめのペアリング
- BOSS BF-3 × RV-6
「深くゆっくりと設定されたフランジャーのジェット音のようなうねりは、広大な洞窟のリバーブに質感と動きを加えます」
個性と動き
他の種類のモジュレーション・エフェクトと同様に、フランジャーは組み合わせたエフェクトを拡張して音に勢いを与えます。多方面で活躍できるにも関わらず過小評価され続けてきたペダルですが、フランジャーはリバーブやディレイに個性と動きを加え、オーバードライブにサイケデリックな水しぶきをかけ、ギターをシンセサイザーのような質感に変えます。予測不可能な音色に留まらず、音色の幅を広げたいプレイヤーにおすすめのペダルです。