Serial GK Partners: EVO

Serial GK Partners: EVO

1983年、速いレスポンス、ロング・サステイン、ノイズレスをコンセプトに、当時画期的だったアルミニウム合金のボディを纏い鮮烈なデビューを飾ったTalbo。あまりに先鋭的だったためか、当時は正当な評価を得られず一時生産中止に。1990年代に入り今井 寿(BUCK-TICK)が使用したことで脚光を浴び、生産が再開されるとHISASHI(GLAY)とのコラボによってそのオリジナリティはさらなる高みへと到達。そんなTalboを、骨格構造&ボディ・トップというコンセプトを基にさらにブラッシュアップさせたモデルがEVOだ。正確無比な倍音構成も相まって、当初からギター・シンセサイザーのSY-1000やGR-55などと抜群の親和性を持つEVOは、GK5-KITとの出会いでどのような化学反応を見せるのか。生産再開された1990年代からTalboを担当し、販売してきた池部楽器店 稲澤仁市氏に話を聞いた。

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1977年、記念すべき世界初のギターシンセRoland GR-500が発売。エポックメイキングな製品の登場により、先鋭的なプレイヤーたちによってギター表現は新たなステージへと突入することになる。その後、初のポリフォニック(和音)に対応、さらにシンセサイザー・ドライバーGK-2の登場によって自身のギターに搭載可能となるなど、正統な進化を遂げてきたギター・シンセ。2023年、新たに新方式のデジタル伝送を採用した「シリアルGK」の登場によりギターやベース本体に内蔵できるGK5-KITシリーズがラインナップ。音源コントロール用スイッチとボリューム、ノーマルギター出力機能の追加、7弦ギターへの対応など普遍性も追求。多様化する現代の音楽シーン、制作環境に対応するアイテムへとビルドアップしている。この記事では、GK5-KITシリーズを導入するギター/ベース・メーカーを取材。導入の経緯やGK5-KITシリーズが秘める可能性について話を伺った。 

◾️ブランドが掲げるポリシー

私はずっとTalboを担当してきまして、GLAYのHISASHIさんと「Talboの次をやりたい」とラフ・スケッチを書きながらEVOの構想を練ってきました。Talboの鋳造のホロウ・ボディに対して、EVOはA6061アルミの削り出しなんです。それによって音響特性が全然違うんですよね。店頭に弦を弾いてからの各弦ごとの周波数特性を掲示していますが、低域から高域までのバランスが良いのと余分な倍音が少ない。要は均一なんです。

ベーシストの熱烈なリクエストからEVO BASSも立ち上げましたが、試作機のチェックで岡沢章さんや岡野ハジメさんにご好評を頂き、特に岡野さんは独創的なベースをたくさん弾いているすごい方ですが(笑)、インプレッションで「立ち上がりからトランジェントが違うね」って。トランジェントは音楽制作などで使う専門用語で、発音の瞬間に発生する音の輪郭を左右する時間軸成分なのですが、「それが速く低域も遅れない」と。音響特性的に素晴らしいらしく、ギター・シンセとの組み合わせを考えたときに、トランジェントが速いこととトラッキング・ダウンが少ないのは結果としてすごく良かったので、それがEVOベースでも大きな売りのひとつになっています。

池部楽器店 グランディ&ジャングル   稲澤仁市氏

最近はアンプを使わずにパソコンで制作をする方が多いですが、制作するときにすごくいいねって言われます。エフェクターの効きがいいとか、素音で録って、後でリアンプするときに楽だとか。ヘヴィ・ゲージのダウン・チューニングをする方もいいねとおっしゃっているので、僕としてはライブでも使ってほしいんです。

アーティストでは当初HISASHIさん、試作機~平沢進さんに永くご愛用頂いて、またアニメ『銀魂』『ハイキュー!!』『Dr.STONE』などの主題歌を担当しているバンド、BURNOUT SYNDROMESの熊谷和海さんも新人の頃からEVOをご愛用頂いております。

「EVOは音響特性が違う」

◾️GK5-KITの導入について

今までもずっとEVOにGK3-KIT-GT3を組み込んでいました。今回GK-5になって、ひとまず店頭でいい加減な取り付け方をしたにもかかわらずちゃんと反応するから、かなり完成度が高くなっているなと。この後、いろいろなギター・メーカーさんがGK-5を載せると思うんですけど、GK-3では載せる竿によってレスポンスが違うことがあったので、竿によって差がどれだけ出るのか逆に楽しみですよね。ただし、正確な倍音の出るギターはしっかり反応してくれるので、正確な倍音でトラッキング・エラーも少なくレスポンスも速いEVOとの組み合わせは当然優秀であると思います。

今回は音源も含めてデジタルになっているじゃないですか。膨大なデータ量をやり取りする中で、いい加減なセッティングでもちゃんとしているのは、これまでのSYシリーズとか、要するに13ピン・ケーブルを使わないギター・シンセで培ったノウハウで課題をクリアしているので、進化としては素晴らしいと思います。あとGM-800の音源のアウトプットにギター・アウトがなかったりするので、ギタリストがどういう反応をするのかなと。きっと開発者は、ギターはギターで別に出して、GM-800はまた別に出してうまくやってくださいっていう意向だと思うんですけど、ギタリストってわがままな人が多いから(笑)どういうリアクションがあるのか興味深いですね。

※GM-800システム・アップデート(Ver.1.10)にて対応済み

GR-55からの進化をお試し頂く為にGK-5を組んだEVOを平沢さんにチェックして頂きましたが、確かに速くなりましたとの反応とMIDIアウトから音源でのチェックも継続中です。あと、AUTO-MODのGENETさんもずっとEVOにGR-55とGK-3を使っていたのですが、GK-5を搭載しましたらますますギター・シンセに沼にはまりました。GM-800を買われてライブで使うという話になっているので、かなりリアクションはいいですよね。

取り付け可能モデルは、基盤が入るものなら何でも対応できると思います。GK5-KITはドライバー自体の厚みが8ミリ程度ありますから、リア・ピックアップとブリッジの間が10ミリ程度ないと難しいですが、それ以外は何でも入る前提ですね。ただ基盤自体が大きくなったので、それを入れるためにボディを削るのをオーナーさんがOKするかどうか。そんなに削るのであれば嫌って方もいるかもしれないし、ギター・シンセ専用にしちゃうからいいよって方もいらっしゃると思います。

「トラッキング・エラーも少なく、レスポンスが速いEVOとの組み合わせは優秀」

◾️GK5-KITが示す新たな可能性

0101Z Trem H-Silver GK5-Mod

私はこれまでEVOにGK-KITとサスティナーを組んで、ギター・シンセの独創的な音を無限に持続させるってことをやってきたんですけど、今回GM-800には持続音がたくさん入っているので、サスティナーも要らないかなと。…でもやりますけどね。どうしてもギター・シンセとサスティナーを組みたい方は多いので。そして今はエレキのピックアップを載せていない、GK-5ピックアップだけを載せたものをサンプルで作っています。GKピックアップだけで完結したい人が一定数いるので。それぐらいGM-800の音源を気に入っちゃったんですよね。平沢さんもLIVE 核P-MODEL『パラレル・コザック』の頃はギター・シンセGR-55の音をメインでギター音をミックスで全公演で演奏されていましたから。そんな人が増えてほしいなと思います。

「ギターの範疇を超えて新しい世界に行ってほしい」

GK-3からの流れで、それこそプリプロで使っている方がたくさんいらっしゃるし、ライブでも「え!?」と思うようなパフォーマンスをする方も多いので、音楽制作で使う方とライブで使う方、GK-5は両方に受け入れられると思うんです。すごく面白いアイテムだから、こちらが使い方を提案するというよりも、いろいろ試したりしてギタリストに考えてほしいです。今までのアプローチをしつつアバンギャルドなこともやりたい人。ギターの範疇を超えて新しい世界に行ってほしいですね。

(Writing & Photography Motomi Mizoguchi)

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