世界的なループ・パフォーマンスのブームに伴い、アーティストたちはその技を磨くために、日々斬新なテクニックを生み出しています。BOSSの開発者たちも、その挑戦を受けて立ち上がりました。RC-300とRC-600、どちらが自分に合ったモデルでしょうか。まさにRC-300とRC-600の新旧対決です。さらに、BOSS Loop Stationの長い伝統を受け継ぐRC-600が、どのようにしてネクスト・レベルへと進化したのか。そのストーリーを見ていきましょう。
ループの登場
ライブでのループ・パフォーマンスは以前より存在していましたが、メイン・ストリームにおける認知度は、若き日のEd Sheeranによって爆発的に高まったと言ってよいでしょう。彼は真っ赤なBOSS RC-20XLを使い、ソロのアコースティック・セットリストをダイナミックかつ多層的なライブ・パフォーマンスへと変貌させました。どこにバンドがいるのか、今でも不思議に思っている人がいるほどです。
そのシンプルかつ効果的なセッティングが、彼のキャリア全体を支えてきたのです。Ed Sheeranは、ローカル・サーキットで最もハードな“働き者”（かつては1年に300回のライブを敢行）から、世界中のスタジアムを満員にさせるまでに成長したのです。今日に至るまで、彼のパフォーマンスはボーカル／ギター／ループの3つのパートに集約することができます。
"Ed Sheeranは赤いBOSS RC-20XLを使って、ソロのアコースティック・セットリストをダイナミックで多層的なライブ・パフォーマンスに変えた"
RC-300：時代を象徴する巨人
Loop StationはRC-20XLからその歴史をスタートし、最大3時間の録音と99フレーズのメモリーに対応したRC-30、そして2020年には現行のRC-500へモデルチェンジしました。より多くの機能を必要とするプレイヤーにとって、BOSS初のフラッグシップ・ルーパーとなったのが2006年にリリースしたRC-50です。その後、最終的に今や定番となったRC-300へと進化します。
2011年にRC-300が発表された当時、それは革新的なものでした。16ビットの音質、独立して制御可能な3つのトラック、さらにXLRとステレオのライン入力を備えていたのです。これらにより、RC-300は最もパワフルで機能豊富なルーパーとなりました。まさに、ライブ・パフォーマンスを次のレベルに引き上げたいミュージシャンにとって最適解と言えるモデルだったのです。
LOOP FXスイッチは、クリエイティビティの新たな世界を切り開きました。16種類の内蔵エフェクトを用いて、自分の声や楽器にエフェクトをかけることができるようになったのです。同時に数10種類のリズム・パターンが搭載され、グルーヴを生み出すためのさまざまなビートを提供します。
さらに、エクスプレッションペダルや最大3時間のステレオ録音、USB機能も装備。今も尚ミュージシャンに感動を与え続けています。
RC-600：新たなスタンダード
新しいフラッグシップ・モデルRC-600 Loop Stationは、ループ・パフォーマンスの常識を再び変えます。さて、フラッグシップ・ルーパーとは何でしょう。簡単に言えば、フラッグシップとは“最高峰”を意味します。BOSSのフラッグシップ・ループ・ペダルは、より多くのトラック、包括的なインプット／アウトプット、そして多彩なルーティングを備えています。また、他の製品よりも多くのエフェクト、リズム・グルーブ／サウンド、フット・スイッチ拡張を誇ります。その特徴を詳しく見ていきましょう。
トラック
- 6つのステレオ・ループ・トラック
- 総録音時間13時間
- クラス最高レベルの32ビット・オーディオ品質
"どんなに複雑なループでも、何度オーバー・ダビングしても、音は劣化せずクリアなまま"
高解像度の32ビットによる“音の忠実性”は、どんなに複雑なループでも、何度オーバー・ダビングしても、サウンドは劣化することなくクリアなままであることを保証。
6つのフレーズ・トラックは、直列だけでなく並列でも動作します。これにより、イントロ／Aメロ／Bメロ／サビ／間奏／アウトロなど、曲構成を自由に構築することができます。ルーパーを最大限に活用することが可能なのです。
入力と出力
入力
RC-300を2倍にしたような入力端子を搭載。
- ボーカルやマイクを使用するためのXLR入力端子を2系統
- ギター、シンセサイザー、ドラムマシンなどのモノラル／ステレオ入力×2系統
これらの入力は、2つのマイク・コンプレッサーと専用チャンネルEQを備えた入力ミキサーに接続され、多彩なループが可能です。
出力とルーティング
3系統のステレオ出力（メイン／サブ出力1／サブ出力2）とヘッドホン出力を装備。それぞれにカスタマイズ可能なトラック・ルーティング機能を搭載しています。
ギター・ループをアンプに、ボーカル・ループをPAに、リズム・トラックをミキサーの別チャンネルに送ることができます。さらに、任意のトラックのミックスをヘッドフォンに送信して、モニターすることも可能です。
エフェクトとリズム
ループ・エフェクト
RC-600は49種類のINPUT FXと53種類のTRACK FXを搭載し、大幅にグレード・アップしました。さらに、それぞれを4種類ずつ同時に使用することも可能です。エレキ・ギターを弾くギタリストにとって特筆すべき点は、FXタイプのひとつであるAMP MODELINGです。ギター・アンプを家に置いたままでも、RC-600単体で多彩な音色を味わうことができるのです。
BEAT SCATTER、BEAT SHIFT、BEAT REPEATなどのエフェクトは、ループに現代的なエッセンスを加えたい時に最適です。また、REVERSEとHALF SPEEDのための専用フット・スイッチも用意されています。
ドラム・トラック
200種類以上の内蔵リズム・パターンと、Roland V-Drumsライブラリのサウンドを使用した16種類のドラム・キットを搭載。ジャズからヘヴィ・メタルまで、さまざまな音楽ジャンルのパターンとバリエーションを収録し、バッキング・トラックに躍動感を与えます。ドラム・セットよりも場所を取らないのも魅力ですね。
フット・スイッチ
フラッグシップ・ルーパーには、フラッグシップに相応しい緻密なコントロールが必要です。そこでRC-600には、カラーLED付きの9つのフット・スイッチを搭載。デフォルトでは、PEDAL MODE レイヤー1がトラック1～3をコントロールします。レイヤー2がトラック4～6、レイヤー3（TRACK SELECT長押し）がINPUT FXとTRACK FXをコントロール。
しかし、これらのフット・スイッチはプレイ・スタイルに応じてカスタマイズすることが可能です。
"ジャズからヘヴィ・メタルまで、さまざまな音楽ジャンルのパターンとバリエーションを収録し、バッキング・トラックに躍動感を与えます"
ユーザー・インターフェース
RC-600は、ループ・パフォーマンスの深みを忠実に表現します。そのために、鮮やかなグラフィックLCDスクリーンと直感的に操作できるユーザー・インターフェイスを実現。見やすいメニュー構成と、6つのループのステータスが一目でわかるループ・インジケーターを備えています。
これらすべてを、目を引く鮮やかな赤色の高級感溢れる筐体に収めました。従来のRC-300に比べ、小型・軽量化を実現しています。
ループの応用
なぜ、6トラック・ルーパーが必要なのでしょうか？ 私たちは、ミュージシャンが常にエキサイティングな活用法を見つけると信じています。自由度が高ければ高いほど、より多くのインスピレーションを得ることができ、より刺激的なループの使い方ができるのです。RC-600を使うことで、あなたのループ・パフォーマンスをさらにレベルアップさせることができるかもしれません。
アコースティック・ソロ
あなたのボーカルとギターさえあれば、6トラックを使用して、壮大な曲の構成を自由自在に組むことができます。バース／サビ／Bメロ／ブレイク・ダウンから、より複雑なアレンジまで何でも挑戦できます。G2B （Guitar to Bass）エフェクトを使えば、ベース・ラインを再現することもできます。200種類以上のリズム・パターンと16種類のドラム・キットを使って、ビートを刻み観客を沸かせましょう。
アコースティック・デュオ
2本のマイクとエレクトリック・ギター、アコースティック・ギターをRC-600に接続してみてください。6つのトラックを駆使することで、ギター・パートとボーカルのループやハーモニーなど、アレンジに一切妥協する必要はありません。また、RC-600のFXセクションにはアンプ・モデリングが搭載されているので、ギター・アンプを持ち込む必要もありません。
マルチ・プレイヤー
ソロで多様な楽器を操りたい場合でも、RC-600にお任せください。サックスとエレクトリック・ヴァイオリンをマイクで接続し、お気に入りのサンプルをRoland SPD-SXにロード。さらにボーカル・マイクを接続すれば、これまで見たこともないような多彩で魅力的なパフォーマンスを繰り広げることができます。
バンド全員にルーパーをかける
6つのトラックとINPUT／TRACK FXを組み合わせて、WARP、SCATTER、STUTTERを駆使すれば、新たなインスピレーションと構成を生み出すことができます。ボーカル・マイク、ベースD.I.、ギター、V-DrumsをRC-600に接続すれば、単なる作曲セッションにとどまらないのです。
“創造するための自由度が高まれば、多くのインスピレーションを得ることができ、より刺激的なループが可能に”
次なる最先端へ
RC-300の持ち味を踏襲しつつ、機能性も操作性もさらなる進化を遂げたRC-600。クラス最高レベルのサウンド、6つのステレオ・フレーズ・トラック、豊富なエフェクト群、柔軟なインプット／アウトップトとスイッチング・コントロールにより、RC-600はあらゆるループ・パフォーマンスに対応します。
