知りたかったけど聞けなかった、アンプのすべて

知りたかったけど聞けなかった、アンプのすべて

出力から豊富な機能まで、自信を持ってギター・アンプを選ぶために必要不可欠な知識をご提供します。

1 min read

初めてアンプを購入する人にとって、アンプの世界はツマミ、ジャック、インプット、チャンネルなど…謎めいたものに感じるかもしれません。 しかし、専門用語を知り基本的な知識を身につければ、もう頭を悩ませる必要はありません。出力から豊富な機能まで、自信を持ってギター・アンプを選ぶために必要不可欠な知識をご提供します。

アンプの種類

アンプは機材セッティングの心臓部

ギタリストにとって、アンプは機材セッティングの“心臓部”です。確かに楽器の材質、ピックアップのワイヤーやマグネットはすべてあなたの音色に影響を与えます。しかし、本当の魔法が起こるのはアンプという箱の中なのです。 素朴なギターの生音を、スラッシュメタルで聴かれる攻撃的なスクリーム音やクリーミーでブルージーな音色に変えることができます。

初めて楽器店に行った時、展示されているモデルの違いがわからないかもしれません。 しかし、アンプについて少しだけ掘り下げてみると、大きな違いがあることに気づくはずです。まずは、アンプの主な種類をご紹介します。

コンボ、ヘッド、キャビネット

購入者が最初に決断するのは、コンボ・アンプかキャビネット付きヘッド・アンプのどちらかということです。一般的なのはコンボ・アンプで、どの練習場所にも大体置いてあります。コンボ・アンプは、アンプ・ヘッド、スピーカー・キャビネットがひとつの筐体に収められているのが特徴です。

ヘッド・アンプは、より大きな音量を必要とするプレイヤーに選ばれることが多く、長方形の筐体の中に回路が収められています。しかし、ヘッド・アンプにはスピーカーが内蔵されていないため、音を出すためには別途スピーカー・キャビネットと組み合わせる必要があります。 Rolandの Blues Cube やBOSSのKATANAなど、多くのアンプ・シリーズでは価格帯や特徴に応じて、多彩なコンボ・アンプやヘッド・アンプが用意されています。

真空管アンプ

1930年代に登場し、1960年代のロック・レジェンドたちが愛した真空管アンプは、現代のスタジオやステージにおいて欠かせない存在です。 ギターの信号は真空管により増幅され、トーンに独特の温かみとキャラクターを付加してくれます。ボリュームを上げていくと、荒々しくも美しい輪郭をもったリッチなトーンとなります。

真空管アンプは、まさにヴィンテージ・ライクな轟音を得意としますが、 高価で重量があり、真空管も定期的に交換しなければならず、特にツアーなどで移動が多いギタリストにとっては非常に手のかかる存在です。また、オーバードライブ・サウンドのスイート・スポットを得るために、近所迷惑になるような音量にまで上げる必要があります。

"コンボ・アンプは、アンプ・ヘッド、スピーカー・キャビネットがひとつの筐体に収められているのが特徴です。"

ソリッド・ステート・アンプ

ソリッド・ステート・アンプは、真空管の代わりにトランジスタ(半導体素子)を使って信号を増幅させます。このタイプは、ギタリストとしてのキャリアに関わらず多くのメリットがあります。まず、ソリッド・ステート・アンプはあらゆる価格帯で入手可能です。また、真空管アンプに比べて軽量で壊れにくいためライブにも適しています。 技術的にも飛躍的に進歩しているので、あらゆる環境で安定したサウンドを提供してくれるでしょう。

モデリング・アンプ

バンドに参加したり新しいサウンドを試すためには、様々なアンプが必要になります。 仮にロック史に残る伝説のアンプをすべて手に入れたとしても、それらを保管するためには巨大な倉庫が必要になるでしょう。そこで登場したのがモデリング・アンプです。

このオール・イン・ワン・アンプは、高度なデジタル技術を用いて多くのアンプのトーンや特性、動作を再現します。モデルの選択ツマミを回すだけで、1960年代の希少な真空管アンプからモダンなメタル・モンスターまで、あらゆるアンプをシミュレートすることができます。予算内で必要なサウンドを得るために、本格的なモデリング・アンプは非常に有効な手段です。また、歴史的なエフェクトを搭載したモデルもあります。

必要なサウンドを得るために、本格的なモデリング・アンプは非常に有効な手段です。

ハイブリッド ・アンプ

真空管アンプとソリッド・ステート・アンプのどちらを選ぶか、悩んで夜も眠れないという方にはハイブリッド・アンプが良い妥協点になるかもしれません。 ハイブリッド・アンプは両アンプのテクノロジーに足を踏み入れ、プリ・アンプまたはパワー・アンプのどちらかに真空管を用いることで、それぞれの持ち味を提供することを目的としています。真空管を彷彿とさせるオーガニックなトーンと、ソリッド・ステート・アンプの実用性を兼ね備えているのです。

アコースティック・アンプ

エレキ・ギター用のアンプは楽器の信号に“色”をつけますが、アコースティック・アンプは対照的にピュアなアコースティック・トーンを可能な限り再現します。そうすることで、木材が持つ繊細さや自然な響きを余すことなく 出力することができます。だからと言って、アコースティック・アンプがつまらないものであるとは限りません。 BOSSのアンプ Acoustic Singer を選べば、豊富な内蔵エフェクトからハウリングを除去するアンチ・フィードバック機能まで、 様々な機能を手に入れることができます。

基本的な機能

アンプの仕組みは?

オーソドックスなギター・アンプは、基本的に3つのセクションから構成されています。 ギター信号がケーブルを通してアンプに入ると、プリ・アンプ部へと入ります。 プリ・アンプ部は、原音を増幅させるというサウンドを形成する回路を担っていて、 トーン・コントロールを回すことでこれが変化します。

プリ・アンプ部は微弱なギター信号をパワー・アンプ部へと送り、パワー・アンプ部でスピーカーを鳴らせるレベルにまで信号を増幅させます。最後にその強い信号がスピーカーへと届き、電気エネルギーを“最前列でモッシュ”するような音色へと変化させるのです。

"エレキ・ギター用のアンプは楽器の信号に“色”をつけますが、アコースティック・アンプは対照的にピュアなアコースティック・トーンを可能な限り再現します。"

共通の特徴とは?

ギター・アンプにはまったく同じ構造・仕様のものは存在しませんが、信頼できる製品には核となる特徴があります。コントロールに関して言うと、ボリューム・ツマミを回すほど音量も大きくなります。しかし、ゲイン・コントロールを装備していれば、屋根を吹き飛ばすほどの大音量を出さずとも歪んだサウンドを得ることができるのです。これは練習の際にも大いに役立ちます。

EQは“イコライザー”の略で、プロフェッショナルなトーンを作り上げる上で重要な役割を果たします。一般的には、トレブル/ミドル/ベースの3つのツマミから構成されており、この3つのツマミを使って音を太くしたり音にメリハリをつけて、突き抜けるようなトーンに仕上げることができます。

予算に関わらず、ヘッドホン端子付きのアンプを選ぶと良いでしょう。ヘッドホン端子はアンプ背面のパネルに装備されていることが多いですが、深夜の練習でアンプから音を出すのが困難であれば必要不可欠です。さらに、AUX端子があればなお良いでしょう。スマートフォンやMP3プレイヤーを接続することで、好きな楽曲やバッキング・トラックに合わせて演奏することができるのです。

進化した機能とは?

最近のギター・アンプは、単に音量を増幅するためだけの機材ではありません。 曲の中でクリーンとディストーション・サウンドを切り替えたい場合は、2チャンネル仕様のアンプがオススメです。例えば、チャンネル1に明るいクランチ・サウンド、チャンネル2にエッジの効いたゲイン・サウンドを設定し、AメロやBメロ、サビでチャンネルを切り替えます。もちろん、BOSSの KATANAアンプ・シリーズ のように、フット・スイッチに対応したアンプであればよりスムーズに切り替えることができます。

すべてのリフを同じサウンドで演奏するのは退屈ですよね。そこで登場するのがエフェクトです。多くのモデルにはエフェクト・ループが搭載されており、例えばお気に入りのBOSS コンパクト・エフェクター をシグナル・チェーンの最適な位置に簡単に接続することができます。また、中〜上位機種の多くはエフェクトを内蔵しています。最も一般的なのはリバーブですが、それ以外のエフェクトを搭載したアンプも数多く存在します。Rolandのアイコン的な存在である JCシリーズ には、臨場感溢れるコーラスが搭載されていますし、 KATANA シリーズは65種類以上のBOSSエフェクトを使用することができます。

自分だけのお気に入りのサウンドを生み出した場合は、ストア/リコール機能を備えていることも重要です。そうすれば、自分の作った音を保存してライブですぐに呼び出すことができるのです。

"屋根を吹き飛ばすほどの大音量を出さずとも歪んだサウンドを得ることができるのです。"

実用的な機能とは?

クリエイティブな機能だけでなく、アンプを選ぶ際には実用的な機能にも注目しましょう。ライン・アウト端子は、本格的なライブに参加する際に非常に重要です。これがあれば、PAシステムに接続して会場全体にバランスの取れたサウンドを出力することができます。さらに自由度を高めたいのであれば、KATANA-AIR のようなワイヤレス・アンプを検討してみましょう。Bluetooth機能を搭載しているので、いつでもどこでもオンライン上の音楽コンテンツにアクセスすることが可能です。

時には大音量で演奏したいこともありますが、小音量での自宅練習でもクオリティの高いトーンを引き出すことができるのが優れたアンプである証です。 KATANA アンプ・シリーズをはじめとするBOSSのモデルに搭載されている“パワー・コントロール”に注目してください。 出力の切り替えを行うことができるので、生活環境に応じた小音量で迫力のあるトーンやレスポンスを実現できます。

ギター・アンプの真骨頂はライブだけではありません。USB出力を備えたモデルを選べば、お気に入りのDAWへ音色を送ることができます。スタジオ代をかけずに、プロフェッショナルなサウンドのレコーディングが可能になるのです。

ボーカルや他の楽器にも使えるの?

楽器とアンプの組み合わせには、いくつかのルールがあります。例えば、ベースをギター・アンプで鳴らすと低音の響きが足りなくなるので避けたいところです。同様に、アコースティック楽器を一般的なエレキ用のアンプに接続することはできますが、音が濁ったりノイズが発生する場合があります。

だからと言って、バンド・メンバー全員分のアンプを個別に購入する必要はありません。複数の楽器に対応したアンプを選べば、ギタリストやボーカリスト、キーボーディストにも1台で対応できるのです。Rolandの CUBE Street EXは、独立した4系統のインプットを備えているので、マイク/ギター/キーボード/オーディオ機器などを接続することが可能です。それらをパネルのツマミでコントロールすることで、ストリート・ライブでもピュアなサウンドを簡単に得ることができます。

メンバーがいなくても“一人きり”で演奏する必要はありません。BOSSの Acoustic Singer Proにはルーパー機能が搭載されています。Ed SheeranやKT Tunstallが愛用しているこの機能でギター・フレーズを重ねれば、ソロでも重厚なシンフォニーを奏でることができるのです。

5つの質問

数多くのモデルがラインナップする中、どのモデルを選ぶかは頭を悩ませる最大の要因です。候補のリストを作成する前に、以下の5つの項目をよく吟味しましょう。  

使用するシチュエーションは?  

自宅練習や楽屋でフレーズの練習をしたいのであれば、スタック・アンプよりも優れた練習用アンプのほうが理にかなっています。一方、ライブをメインに演奏する場合は、ライン・アウトやフット・スイッチ付きのチャンネルなど、パフォーマンスをサポートする機能が必要です。また、録音したい曲がある場合は、USB接続が可能なモデルを選ぶと簡単にパソコンに取り込むことができます。  

あなたの予算は?

予算が少ないのは悔しいですが、それが逆に自分に合ったアンプを選ぶための原動力にもつながります。ギター・アンプの価格に上限はないと言っても過言ではありません。ヴィンテージの真空管ヘッド・アンプは数十万を越える高値で取り引きされています。しかし、エントリー・モデルのクオリティの高さには驚かされるでしょう。少しの予算があれば、プロ・ギタリストからも支持されている KATANA-MINIを購入し、演奏することが できるのです。

"もし、自分がどのようなスタイルを追求すればいいのかわからない場合は、幅広い音楽ジャンルに対応できる柔軟性の高いアンプを選ぶと良いでしょう。"

どのくらいの音量が必要?

ワット数はパワーであって、音量ではないのが鉄則です。ワット数の高い機器が、ワット数の低いアンプよりも音量が小さい場合があることを覚えておいてください。例えば、100ワットのアンプは10ワットアンプの10倍のパワーがあるにもかかわらず、2倍の音量しかない場合もあります。

目安としては、自宅練習の場合は5ワット程度で充分ですが、50ワットを超えるとドラマーとの競演も可能になります。気を付けてほしいのは、音量が大きいほどゲインが大きいわけではないということです。ゲイン・コントロール付きの低ワットのアンプのほうが、フルパワーにしなければ真価を発揮しない真空管アンプよりも自分に合っているかもしれません。

演奏する音楽ジャンルは?  

古き良きソウル、ブルースを演奏するギタリストであれば、ペンタトニック・スケールをよく演奏することでしょう。王道のパンクであればパワーコードを駆使するはずです。プレイヤーとしてのあなたの個性に合ったブランド・モデルを選んでください。もし、自分がどのようなスタイルを追求すればいいのかわからない場合は、幅広い音楽ジャンルに対応できる柔軟性の高いアンプを選ぶと良いでしょう。 

あなたの好きなサウンドは? 

これは最も重要な質問です。プロ・ギタリストの中で、鳥肌が立つようなサウンドを奏でる人を思い浮かべてみてください。その人たちが使っているアンプを調べて、それを基準に自分に適したアンプを模索しましょう。つまり、そのサウンドが自分に合っていて、音楽を作りたい!という衝動を与えてくれるアンプを選べばいいのです。

Henry Yates

ジャーナリスト兼コピーライター。NMEや、Guardian、Telegraph、Classic Rock、Total Guitarなど多くのメディアで執筆を行う。