フェイザーは汎用性の高いクラシックなモジュレーション・エフェクトで、1980年代に登場したコーラスのように1970年代のサウンドを決定づけました。フェイザーは広大でダイナミックなうねりを生み出したり、それとは対照的に、演奏の進行やソロ・パートに柔らかい動きを加えることもできます。ギタリストのためのフェイザーは70年代に登場しましたが、すぐに時代やジャンルを超えるエフェクトとして知られるようになりました。コーラス、フランジャー、ビブラートといった同じ種類のエフェクトの中でも、優れたセンスを発揮できる存在として人気のフェイザーは、ギターの音を持ち上げながら豊かな音色を奏でる素晴らしいツールです。
フェイザーの歴史
70年代半ばにシンプルなコンパクト・エフェクター型のフェイザーが登場し、メインストリームで爆発的な人気を博してサイケデリックを象徴するエフェクトとなりました。Pink Floyd の”Have A Cigar”やEddie Van Halenのソロ曲”Eruption”で使われたことにより、フェイザーは瞬く間に王道のエフェクトへと押し上げました。
長らく画期的な音色が登場しなかったため、ギター・エフェクトはもどかしい時代を過ごしていました。しかしBOSS PH-1のようなペダルの発明は、70年代後半から急速に発展したギター・サウンドの進化に影響を与えます。PH-1はOD-1やSP-1と並んで、1977年にBOSSのコンパクト・シリーズを立ち上げた3つのエフェクトの1つでした。こうしてフェイザーは、長年に渡ってBOSSと共に多くの進化を遂げてきました。
フェイザーとは何か？
フェイザーがギター信号に対してどのような働きをするのか理解することで、フェイザーをエフェクト・ボードに組み込んだ際にどのような効果を得られるかの大きな手がかりとなります。フェイザーはギター信号を2つに分割しますが、この分割により一方の信号はエフェクトの影響を一切受けず、もう一方の信号にだけオール・パス・フィルターがかかる仕組みになっています。そして2つの信号はLFOにより決められた速度で、位相が変化しながら近付いたり離れたりします。これにより、信号の位相がずれているときには音色がこもったように聞こえて、位相が揃っているときには音色が鋭く跳ね上がります。
「ほとんどのモジュレーション・エフェクトと同様に、フェイザーはエフェクト・チェーンの中心に置きます」
セットアップに関して
ほとんどのモジュレーション・エフェクトと同様に、フェイザーはエフェクト・チェーンの中心に置きます。オーバードライブ、ディストーション、EQ、フィルターなどはフェイザーの前に配置し、前段のエフェクターによって作られたサウンドに効果を加えるようにセットアップします。逆に、ディレイやリバーブといった空間系エフェクトはフェイザーの後に配置し、サウンドをクリーンかつクリアに保つようにさせます。
アンプにエフェクト・ループがある場合、モジュレーション・エフェクトをクリアに保たせるためには、エフェクト・ループに繋ぐことも有効です。そうすることでペダルの音色はアンプのプリアンプの影響を受けません。ただし、これは純粋にプレイヤーの好みによるものです。フェイザーはどちらの用途でも素晴らしいサウンドを奏でます。
FIVE PHASER PEDAL USES
ゆっくりとしたPink Floydスタイル
David GilmourはPink Floydの作品の中で、サイケデリックな倍音を作り出すフェイザーの最もクリエイティブな例をいくつか手掛けています。”Shine On You Crazy Diamond”や”Have A Cigar”のような曲を聴けば、ゆっくりとした柔らかいフェイズ・シフトが華やかでスペーシーなギターの音色を生み出す良い例だということに気が付くでしょう。
このような音を作るにはフェイザーをクラシックな4 STAGE MODEに設定し、滑らかな位相を作ります。次にEFFECT RATEを7時から8時の方向に設定します。十分に目立つ波の動きを作りながら、できるだけ遅くする必要があります。ペダルのDEPTHとRESONANCEのノブはどちらも11時位置あたりに設定します。
つまり、比較的にエフェクトは穏やかにしてクリーンなギター・パートが輝くようにする必要があります。その結果、ギターの自然な音色に添って周波数がゆっくりと柔らかく波打ち、ギター・パートを無理なく持ち上げる穏やかな動きが加わります。
ファンキー・モード
フェイザーのトーン・スペクトルの一端を担うこのエフェクトは、ファンキーなコードに最適な、シャープでワウのように個性的な音を作り出すことができます。The Isley Brothersはこのスタイルを”That Lady, Part 1 & 2.”で効果的に使っています。チョークド・ストラムと攻撃的なフェイザーの組み合わせはクラシックな技法で、真っ直ぐな音のギター・パートに弾むような動きを作り出すのに最適です。
この効果を得るには、フェイザーを10 STAGEまたは12 STAGE MODEに設定します。STAGEの増加はフェイザーのEQカーブの極端さに影響します。STAGEが高いほどフェーザーの動きは繊細でなくなり、より攻撃的になります。
「フェイザーのトーン・スペクトルの一端を担うこのエフェクトは、ファンキーなコードに最適な、シャープでワウのように個性的な音を作り出すことができます」
ペダルのRATEを比較的高めの3時方向に設定し、DEPTHとRESONANCEのノブを同程度に設定します。フェイザーのスピードは曲のテンポに左右されますが、このセッティングはベーシックでファンキーな音色を生み出します。BOSS PH-3ではフット・スイッチを数秒間押し続けると、ペダルがタップ・テンポ・モードになります。その後、フェイザーの動きに合わせて曲に合わせてフット・スイッチをタップします。
ビブラート・サウンド
フェイザーを極端に使うと、ほとんどビブラートのようなエフェクトになり、大げさに揺らぐ効果を生み出します。この音は万人向けではありませんが、よりエクストリームでスペーシーな50年代のSFギターの音色には効果的でしょう。
こうした音色を作るには、速いRATEとDEPTHが重要です。最もエクストリームな効果を作るには、MODEを10 STAGEか12 STAGEに設定します。フェイザーをこのような強烈なエフェクトに設定すると、複雑なギター・パートは濁ってしまいます。それでも、シンプルな単音進行やホールド・コードなら上手く音作りをできるでしょう。
「BOSS PH-3のような最新のフェイザーでは、STEP MODEがフェイザーのSTAGEをギザギザのステップ状の動きにします」
シンセのような音色のステップ・フェイザー
伝統的に、フェイザーはトーン・コントロールをオン・オフするような、ゆるやかな千鳥状の流動的な動きをします。しかし、BOSS PH-3のような最新のフェイザーでは、STEP MODEがフェイザーのSTAGEをギザギザのステップ状の動きにします。このMODEはフェイザーの進化する動きと共に、トレモロのような効果を生み出すようになりました。
その結果、粗いシンセのような音色になり、高いRATEに設定するとリング・モジュレーターに似た音になります。モジュレーションがかかった音色のワイルドな側面を楽しみたいギタリストに最適で、1台のコンパクト・エフェクターで複数のエフェクトを作る時に理想的な手法です。
マニュアル・フェイズ・シフト
フェイザーはありきたりのギター・パートに動きを加える優れたエフェクトですが、プレイヤーはエクスプレッション・ペダルを追加することで、さらに一歩前進させることができます。BOSS PH-3の場合、エクスプレッション・ペダルを接続することで、フェイザーのRATEの効果をマニュアル・コントロールすることが簡単にできます。
MODEが10 STEPプまたは12 STEPのフェイザーに設定されている場合、プレイヤーはエクスプレッション・ペダルの踵からつま先までの位置で、広大な可動域を得ることができます。コードを鳴らしながらエクスプレッション・ペダルを踵からつま先に向かって動かしてみてください。踵のポジションでは、穏やかでクラシックなフェイズが得られます。しかし、つま先のポジションでは、ほとんどビブラートのような音色になります。
「フェイザーはあらゆる状況に対応するモジュレーション・エフェクトです。繊細にも過激にも使える完璧なツールです」
あらゆる状況に対応するモジュレーション
フェイザーはあらゆる状況に対応するモジュレーション・エフェクトです。どんなギター・パートにもゆっくりと波打つような動きを加え、音色を太くするのに優れています。同時に、ファンキーでオート・ワウのような効果も得られます。ビブラートのような効果を作ることも可能です。ギターをシンセサイザーに変えることもできます。繊細にも過激にも使える完璧なツールです。発明以来、各年代の数え切れないほどのギター・ヒーローに愛されてきたフェイザーは、他のエフェクトと一緒に使っても優れた効果を発揮します。
