ライブ演奏では「柔軟性」が鍵になります。幅広い音楽スタイルに対応したり、エレキとアコースティックの音色を切り替えたり、変則チューニングを使ったりと、従来のセットアップでは複数の楽器や煩雑な調整が必要になることが少なくありません。BOSS VG-800 V-Guitar Processorは、そんな課題を一気に解決する画期的なツールです。ギター/ベースのバリエーション、オルタネイト・チューニング、アンプ、そして多彩なエフェクトをたった1台のペダルに凝縮。さらに、GKシリーズのディバイデッド・ピックアップを装着した楽器1本で全てを操作できます。コンパクトながら圧倒的な性能を誇るVG-800は、瞬時のサウンド切り替え、超リアルなモデリング、そして高度な演奏機能を実現します。本記事では、BOSS V-Guitar Systemがいかにあなたのライブのセットアップを簡素化し、ステージ上での創造性を広げてくれるかを紹介します。
既存の常識を超えて
エフェクトや、アンプ・キャビネットの機能まで一つにまとめたオール・イン・ワンの製品として、BOSSのコンパクト・エフェクターからフラッグシップのGT-1000 Guitar Effects Processorまで、多彩なラインナップがあります。これらはどれも一般的なエレキ・ギターで使用可能で、優れたサウンドを生み出します。
しかし、ギター自体がサウンドに与える影響も考慮しなければなりません。例えば、同じフレーズを同じセッティングで引いたとしても、Fender Stratocaster、Gibson Les Paul、ピックアップ付きアコースティック・ギターでは全く異なる音色になります。そのため、カバー・バンドで多様な曲を演奏する場合や、ジャンルの異なる楽曲を作る場合には、ライブに複数本のギターを持っていく必要があります。また、特定の曲に変則チューニングを使うプレイヤーは、そのたびに別のギターを使うか、チューニング変更の手間をかけなければなりません。
Rolandの革新的なV-Guitar Processorは、こうした問題を解決するために開発されました。このシリーズは1995年に Roland VG-8 V-Guitar Systemの登場によってスタートし、現在まで継続的に進化を遂げています。VG-8EX(1998年)、VG-88(2000年)、V-Bass(2002年)、VG-99(2007年)、VB-99(2008年)といった画期的な製品群は、いずれも RolandのGKシリーズのディバイデッド・ピックアップと組み合わせて使うことを前提に設計されました。ディバイデッド・ピックアップはプレイヤー自身で取り付けが可能で、各弦の信号を個別に検知してV-Guitarのユニットへ出力する構造になっています。これにより、全弦の信号を1つにまとめる従来のギター・ピックアップでは不可能なサウンドや奏法を実現できます。
「V-Guitarと一般的なアンプ/エフェクト・モデリングとの最大の違いは、他の楽器の音を再現できることにあります」
圧倒的な性能 ― 必須ツールとしての存在
V-Guitarの持つ従来のアンプ/エフェクト・モデリングとの大きな違いは、他の楽器のサウンドまで再現できるという点です。さらに、各弦のピッチを上下させて変則チューニングを作成することも可能です。上記の全モデルは、登場当時非常に先進的で、サイズこそ大きかったものの、その圧倒的な機能性から多くのプレイヤーにとって不可欠なツールとなっていました。
そして時は流れ2025年。BOSSはよりコンパクトかつ高性能な「VG-800 V-Guitar Processor」をもって、V-Guitarの物語を引き継ぎます。使いやすさを追求したこのペダルは、次世代のデジタル・シリアルGK方式を採用したディバイデッド・ピックアップ(ギター用のGK-5 Divided Pickup、ベース用のGK-5B Divided Pickup)を搭載した楽器と直接接続して使用できます。また、従来の13ピン・アナログGK方式のピックアップにも対応しており、その場合はBOSS GKC-AD GK Converterを介して接続可能です。GKC-ADは、13ピンGKピックアップのアナログ出力を、VG-800やGM-800 Guitar Synthesizerが採用するデジタル・シリアルGK方式へと変換します。
架空のギター・ショップ
こうした背景を持つVG-800 V-Guitar Processorは、ライブの演奏中に何をプレイヤーにもたらすのでしょうか?VG-800は、まるで理想のギター、変則チューニング、エフェクト、アンプがすべて揃った架空のギター・ショップのような存在です。ひとつのペダルで望む全てを実現し、ひとつの楽器だけであらゆるスタイルやプレイに対応できる、他に類を見ない柔軟性を提供します。
VG-800は複数のプリセットを保存でき、ギターの種類、ピックアップのポジション、各弦のチューニング、エフェクト、アンプやスピーカーの音色まで一括管理できます。アコースティック・ギターのモデリング機能も搭載されており、たとえばある曲では12弦アコースティックが必要で、その次はバリトンのハムバッカー・エレキが必要。そんな切り替えも一台で即座に実現できます。
次の曲でカポタストが必要でも問題ありません。必要なチューニングを保存したパッチを呼び出すだけで、バーチャル・カポとして機能します。特にフローティング・トレモロ・ブリッジ付きのギターを使っている場合、変則チューニングは面倒ですがVG-800なら他の弦に影響されることなく簡単に設定できます。たとえばDrop Dですら、従来の方法では他の5弦がズレるのが常でしたが、VG-800ではその心配は不要です。
「VG-800は、ギターの種類、ピックアップの選択、各弦のチューニング、エフェクト、アンプやスピーカーの音色まで、複数のプリセットを保存できます。」
多彩な選択肢
エフェクト・セクションは非常に充実しています。定番系に加えて、BOSSのSlow Gear、リング・モジュレーター、ピッチ・シフターなどのクラシックなエフェクトも揃っています。さらに、上面のCTL 1フットスイッチでB-Bender風の演奏を可能にするファクトリー・プリセットまで用意されています。V-Guitar Processorならではのシンセ風サウンド、オルガン風サウンド、ハイブリッドな楽器音など、従来のギター・ピックアップでは不可能な音色も再現できます。
また、パッチのアップ/ダウン・フットスイッチで、演奏中に素早く音色を切り替えることも可能です。自分のギターそのもののナチュラルなサウンドを使うことも、もちろん可能です。VG-800には通常のピックアップ用の入力端子があり、モデリング音と切り替えたりミックスしたりできます。もし、あなたが音楽制作も行うなら、VG-800からMIDIデータを出力してソフトウェア音源を鳴らす機能も注目すべきポイントです。このVG-800をライブでシンセサイザーと組み合わせて使う方法については、また別の記事で詳しく紹介します。

あらゆる状況に最適化されたサウンドを
機材をセッティングする際、柔軟性の高いV-Guitar Processor(VG-800)は、フラット・レスポンスのPAスピーカー、アンプのエフェクト・ループのリターン端子、あるいは通常の入力端子など、さまざまな接続方法に対応します。それぞれの使用状況に合わせて音質を最適化する設定も用意されています。もし、あなたが「これぞ」と思うお気に入りのアンプを使っているなら、VG-800のアンプ・モデリング・セクションをバイパスするだけです。同様に、VG-800をエフェクト専用機として使うこともできますし、外部エフェクターと組み合わせて使うことも、ステレオのセンド/リターン端子を使って簡単に実現できます。
VG-800のトップ・パネル上のスイッチや、背面にあるCTL 2, 3/EXP 1、CTL 4, 5/EXP 2ジャックに接続したエクスプレッション・ペダルやフットスイッチには、さまざまな機能を割り当てることができます。これにより、ワウ、ピッチ・グライド、ボリュームなどのパラメーターをリアルタイムでコントロール可能です。一度BOSS V-Guitar Systemの柔軟性と便利さを体験したら、もうこれなしでライブをこなしていた頃には戻れなくなるでしょう。