ギター・テックのGavin Maxwellは、20年以上にわたり、多彩なアーティストのツアーをサポートしてきました。エレクトロニックコアの先駆者であるEnter Shikariからグラミー賞作曲家のHans Zimmerまで幅広いミュージシャンと関わり、現在はUKサウンドを確立するバンド、MogwaiとIDLESの音響を支えています。この記事では、MaxwellがMogwaiの象徴的なサウンドやIDLESの際立つギター・サウンドの秘密を明かします。さらにプロのペダルボード活用術に加えて、彼が選ぶ究極の「無人島に持って行くBOSSペダル」についても紹介します。
爆発的なスタート
ギターテックの仕事を始めたきっかけは何ですか?
16〜17歳の頃、Flood of Redというバンドの仲間と一緒にバンに乗り込んで、ツアーを始めました。何ヶ月も車の駐車場や、誰かの家の床で寝泊まりしていました。あの頃はとにかく楽しかったんです。それ以来、この20年間ずっとその気持ちを大切にしています。
そこからEnter Shikariに出会い、別のバンへと乗り換えることになりました。ちなみに、彼らは数年後にあるビデオでそのバンを爆破してしまっています!その後、デンマークのバンドAlphabeatと仕事をし、それがきっかけでLate of the PierやWild Beastsにも関わりました。次にThe Vaccinesと約8年間仕事をし、その後Hans Zimmerの最初のアリーナ・ツアーにも携わりました。
ここ10年間はMogwaiと、最近ではIDLESと仕事をしています。彼らのおかげで本当に忙しくなりました。
「ここ10年間はMogwaiと、最近ではIDLESと仕事をしています。」
Gavin Maxwell

バンドを形作るサウンド
MogwaiとIDLESのペダルボードには、どのBOSSペダルが使われていますか?
もちろん、すべてのペダルボードの最初にはチューナーが必要で、通常はTU-3かTU-3Wのクロマチック・チューナーが使われます。Mogwaiでは、Stuart BraithwaiteがずっとメインのディレイとしてDD-20 Giga Delayを使っていて、古いTR-2 Tremoloも一緒に使っています。
また、すべてのMogwaiのペダルボードの最後のチェーンにはLS-2 Line Selectorを置いています。これは主にメイン・アンプと予備アンプの切り替え用ですが、ステージを降りたバンドの後に起こる非常に大きなフィードバックを消音するためのマスター・ミュートとしてもとても便利です。

「Barryも古いDD-3 Digital Delayを2台持っています。ひとつはMogwaiのシグネチャー・サウンド……もうひとつはクラシックなスラップバック・ディレイ用です。」
Gavin Maxwell

Barryは古いDD-3 Digital Delayを2台所有しており、ひとつはフルウェット、高めのフィードバック、約300msのディレイタイム設定したMogwaiらしいサウンドを奏でます。もうひとつは「Old Poisons」という曲で使われるクラシックなスラップバック・ディレイ用です。もちろん、シグナル・チェーンの最後はLS-2で終わります。
IDLESのLee Kiernanは、ボードにDM-2W Delayを載せています。また、PS-6 Harmonistも使用しており、「When the Lights Come On」という曲ではS-Bendモードを使ってコーラス部分でギターのピッチを上げています。


スタジオでの愛用機材
MogwaiとIDLESは、スタジオでBOSSペダルをどのように使っているのでしょうか?
Mogwaiは、グラスゴーのCastle of Doom Studiosに膨大な量のペダルを保管しています。BOSSペダルがぎっしり詰まった引き出しが3~4段もあり、圧巻です。バンドのサウンド・トラック制作用のスタジオ・ペダルボードには、SL-20 Slicer、VB-2W Vibrato、BF-3 Flanger、SY-300 Guitar Synthesizerなど、BOSSペダルがずらりと並んでおり、その数は数え切れないほどです。
IDLESのスタジオでは、Blues DriverをFender Twinに通すという基本的な組み合わせに戻ることがよくあります。この組み合わせなら、間違いがありません。

「Mogwaiは、グラスゴーのCastle of Doom Studiosに膨大な量のペダルを保管しています。BOSSペダルがぎっしり詰まった引き出しが3~4段もあり、圧巻です。」
Gavin Maxwell
新しい機材
彼らはBOSSペダルのどんな点を気に入っているのでしょうか?
みんな口を揃えて言うのは、その耐久性は他に類を見ないということ。音を作るスピードも素晴らしいし、サウンドも最高だという点です。
最近の追加された機材にはどんなものがありますか?
IDLESでは、Mark BowenがVox AC30をRoland JC-120 Jazz Chorusに替えました。最新アルバム『Tangk』収録の「Dancer」「Roy」「Jungle」のライブ演奏で使用されています。どんなエフェクトにも対応できる、非常にクリーンなアンプが必要だったのです。

「最近では、BOSS NS-1X Noise Suppressorも追加しました。REDUCTION MODEを使って不要なノイズを取り除いています」
Gavin Maxwell
Bowenは多くの新曲でFender Baritone Stratを弾いたり、レギュラー・チューニングのギターを特定の曲のセクションでピッチ・ダウンして使いますが、JC-120はその狙いに完璧に応えてくれます。
また、最近では、BOSS NS-1X Noise Suppressorも追加しました。REDUCTION MODEを使って不要なノイズを取り除いています。ピッチ・ダウンを多用し、さらにステージには1×15キャビネットを置いていたので、曲間にゴロゴロとノイズが鳴ってしまっていました。でも今では、そうした問題はなくなりました。

バンド専属テクニシャンのアドバイス
BOSSペダルで一番気に入っている点は何ですか?
BOSSペダルの耐久性は他に類を見ません。さらに、世界中ほとんどの楽器店で手に入れることができます。加えて、BOSSペダルは音作りがとても簡単なので、創造性が高まり、気軽に実験することが可能です。
あなた自身のボードにはどんなBOSSペダルがありますか?
実は、今ではペダルボードは持っていません。小さい子どもが2人、家の中を走り回っているので、今はペダルを棚の上に避難させています。そこに置いてあるのは、DS-1W Distortion、JB-2 Angry Driver、SD-1W Super Overdrive、BD-2W Blues Driver、GE-7 Equalizer、DD-500 Digital Delay、RV-5 Digital Reverb、TR-2 TremoloそしてDC-2W Dimension Cです。
「BOSSペダルは音作りがとても簡単なので、創造性が高まり、気軽に実験することが可能です」
Gavin Maxwell
歴代で一番好きなBOSSペダルは何ですか?
ギタリストとしては、1980年代オリジナルのDC-2 Dimension CとDD-20 Giga Delayのどちらかですね。TE-2 Tera Echoもとても楽しいです。でもギター・テックとしては、TU-3 Chromatic TunerかLS-2 Line Selectorが一番好きです。
BOSSの名機で復活してほしいものはありますか?
FB-2 Feedbacker/BoosterやRV-3 Digital Reverb/Delayの復活を見てみたいですね。どちらも素晴らしいペダルです。
BOSSペダルが使われたレコーディングで一番好きな瞬間は?
NirvanaのレコードでDS-1 Distortionが使われている場面ならどれでも。

無人島に持っていくBOSSペダル3つは何ですか?理由も教えてください。
場合によりますね。もし私が島にひとりきりならチューナーは必要ありませんが、不運にも誰かが一緒にいたら必要になるでしょう。だからこう言っておきます。ひとつは TU-3 Chromatic Tuner を JB-2 Angry Driver に繋ぎ、そのあとに DD-20 Giga Delay を繋ぐ方法。もうひとつは JB-2 Angry Driver を DD-20 Giga Delay に繋ぎ、そのあとに TR-2 Tremolo を繋ぐ方法です。
エフェクターの実験的な使い方について、何か提案はありますか?
ディレイを重ねるのはいつでも楽しいですね。そして、エフェクトをパラレルで分岐させる世界に踏み込めば、可能性は無限に広がります。
「正しく電源を供給することは絶対条件です」
Gavin Maxwell
ペダルボードの組み立てでのコツはありますか?
正しく電源を供給することは絶対条件です。ペダルを接続する際は、標準的な5〜6mmのシールドよりも細い径のケーブルのほうが扱いやすいです。また、全てをしっかり固定すること。そうすれば見た目もスッキリし、スペースも節約できます。
それから、3M Dual LockはVelcroと同じではないことを覚えておいてください。3M Dual Lockは少量使えば十分で、そうしないとペダルをボードから外すのに何時間もかかってしまいます。
エフェクト・ペダル市場の現状をどう見ていますか?
年々勢いを増しているように見えますし、このまま長く続いてほしいですね。