Guitar tech Gavin Maxwell (left) with IDLES guitarists Lee Kiernan (center) and Mark Bowen.

Behind the Board:MogwaiとIDLESのGavin Maxwell

ギター・テックのGavin Maxwellが、MogwaiとIDLESを形作るサウンドの秘密や、プロのペダルボードの使い方について語ります。Header photo by Tom Ham

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ギター・テックのGavin Maxwellは、20年以上にわたり、多彩なアーティストのツアーをサポートしてきました。エレクトロニックコアの先駆者であるEnter Shikariからグラミー賞作曲家のHans Zimmerまで幅広いミュージシャンと関わり、現在はUKサウンドを確立するバンド、MogwaiとIDLESの音響を支えています。この記事では、MaxwellがMogwaiの象徴的なサウンドやIDLESの際立つギター・サウンドの秘密を明かします。さらにプロのペダルボード活用術に加えて、彼が選ぶ究極の「無人島に持って行くBOSSペダル」についても紹介します。

爆発的なスタート

ギターテックの仕事を始めたきっかけは何ですか?

16〜17歳の頃、Flood of Redというバンドの仲間と一緒にバンに乗り込んで、ツアーを始めました。何ヶ月も車の駐車場や、誰かの家の床で寝泊まりしていました。あの頃はとにかく楽しかったんです。それ以来、この20年間ずっとその気持ちを大切にしています。

そこからEnter Shikariに出会い、別のバンへと乗り換えることになりました。ちなみに、彼らは数年後にあるビデオでそのバンを爆破してしまっています!その後、デンマークのバンドAlphabeatと仕事をし、それがきっかけでLate of the PierやWild Beastsにも関わりました。次にThe Vaccinesと約8年間仕事をし、その後Hans Zimmerの最初のアリーナ・ツアーにも携わりました。

ここ10年間はMogwaiと、最近ではIDLESと仕事をしています。彼らのおかげで本当に忙しくなりました。

「ここ10年間はMogwaiと、最近ではIDLESと仕事をしています。」

Guitar tech Gavin Maxwell at work with IDLES.
Maxwell at work with IDLES.

バンドを形作るサウンド

MogwaiとIDLESのペダルボードには、どのBOSSペダルが使われていますか?

もちろん、すべてのペダルボードの最初にはチューナーが必要で、通常はTU-3TU-3Wのクロマチック・チューナーが使われます。Mogwaiでは、Stuart BraithwaiteがずっとメインのディレイとしてDD-20 Giga Delayを使っていて、古いTR-2 Tremoloも一緒に使っています。

また、すべてのMogwaiのペダルボードの最後のチェーンにはLS-2 Line Selectorを置いています。これは主にメイン・アンプと予備アンプの切り替え用ですが、ステージを降りたバンドの後に起こる非常に大きなフィードバックを消音するためのマスター・ミュートとしてもとても便利です。

Mogwai guitarist and vocalist Stuart Braithwaite's pedalboard.
Mogwai guitarist and vocalist Stuart Braithwaite's pedalboard. Photo by Gavin Maxwell.

「Barryも古いDD-3 Digital Delayを2台持っています。ひとつはMogwaiのシグネチャー・サウンド……もうひとつはクラシックなスラップバック・ディレイ用です。」

MogwaiのBarry Burnsは、かなり多くのBOSSペダルを自身のペダルボードにセットアップしています。最近では、ドライブ・セクションにMT-2W Metal Zoneをこっそり加えており、その後にEQ-200 Graphic Equalizerへと送り、ライブ中にさまざまなEQカーブを作り出しています。

その良い例が「We’re No Here」という曲です。終盤では1.6kHzを15dBブーストすることで、ミックスの中で驚くほど抜けるサウンドを実現しました。実際に、最前列の観客が耳を塞ぐ光景を見ることができます!

Mogwai guitarist and keyboardist Barry Burns' pedalboard.
Mogwai guitarist and keyboardist Barry Burns' pedalboard. Photo by Gavin Maxwell.

Barryは古いDD-3 Digital Delayを2台所有しており、ひとつはフルウェット、高めのフィードバック、約300msのディレイタイム設定したMogwaiらしいサウンドを奏でます。もうひとつは「Old Poisons」という曲で使われるクラシックなスラップバック・ディレイ用です。もちろん、シグナル・チェーンの最後はLS-2で終わります。

IDLESのLee Kiernanは、ボードにDM-2W Delayを載せています。また、PS-6 Harmonistも使用しており、「When the Lights Come On」という曲ではS-Bendモードを使ってコーラス部分でギターのピッチを上げています。

スタジオでの愛用機材

MogwaiとIDLESは、スタジオでBOSSペダルをどのように使っているのでしょうか?

Mogwaiは、グラスゴーのCastle of Doom Studiosに膨大な量のペダルを保管しています。BOSSペダルがぎっしり詰まった引き出しが3~4段もあり、圧巻です。バンドのサウンド・トラック制作用のスタジオ・ペダルボードには、SL-20 Slicer、VB-2W Vibrato、BF-3 Flanger、SY-300 Guitar Synthesizerなど、BOSSペダルがずらりと並んでおり、その数は数え切れないほどです。

IDLESのスタジオでは、Blues DriverをFender Twinに通すという基本的な組み合わせに戻ることがよくあります。この組み合わせなら、間違いがありません。

BOSS BD-2W Blues Driver
Far more than merely a drive pedal for blues players, the BD-2 and BD-2W Blues Drivers have genre-spanning appeal.

「Mogwaiは、グラスゴーのCastle of Doom Studiosに膨大な量のペダルを保管しています。BOSSペダルがぎっしり詰まった引き出しが3~4段もあり、圧巻です。」

新しい機材

彼らはBOSSペダルのどんな点を気に入っているのでしょうか?

みんな口を揃えて言うのは、その耐久性は他に類を見ないということ。音を作るスピードも素晴らしいし、サウンドも最高だという点です。

最近の追加された機材にはどんなものがありますか?

IDLESでは、Mark BowenがVox AC30をRoland JC-120 Jazz Chorusに替えました。最新アルバム『Tangk』収録の「Dancer」「Roy」「Jungle」のライブ演奏で使用されています。どんなエフェクトにも対応できる、非常にクリーンなアンプが必要だったのです。

IDLES guitarist Mark Bowen performing live with a Roland JC-120 Jazz Chorus amplifier.
IDLES guitarist Mark Bowen performing live with a Roland JC-120 Jazz Chorus amplifier.

「最近では、BOSS NS-1X Noise Suppressorも追加しました。REDUCTION MODEを使って不要なノイズを取り除いています」

Bowenは多くの新曲でFender Baritone Stratを弾いたり、レギュラー・チューニングのギターを特定の曲のセクションでピッチ・ダウンして使いますが、JC-120はその狙いに完璧に応えてくれます。

また、最近では、BOSS NS-1X Noise Suppressorも追加しました。REDUCTION MODEを使って不要なノイズを取り除いています。ピッチ・ダウンを多用し、さらにステージには1×15キャビネットを置いていたので、曲間にゴロゴロとノイズが鳴ってしまっていました。でも今では、そうした問題はなくなりました。

Gavin Maxwell, guitar tech for IDLES and Mogwai, holding IDLES guitarist Mark Bowen's EGC Acrylic guitar
Maxwell holding IDLES guitarist Mark Bowen's EGC Acrylic guitar. Photo by Joey Martinez

バンド専属テクニシャンのアドバイス

BOSSペダルで一番気に入っている点は何ですか?

BOSSペダルの耐久性は他に類を見ません。さらに、世界中ほとんどの楽器店で手に入れることができます。加えて、BOSSペダルは音作りがとても簡単なので、創造性が高まり、気軽に実験することが可能です。

あなた自身のボードにはどんなBOSSペダルがありますか?

実は、今ではペダルボードは持っていません。小さい子どもが2人、家の中を走り回っているので、今はペダルを棚の上に避難させています。そこに置いてあるのは、DS-1W Distortion、JB-2 Angry Driver、SD-1W Super Overdrive、BD-2W Blues Driver、GE-7 Equalizer、DD-500 Digital Delay、RV-5 Digital Reverb、TR-2 TremoloそしてDC-2W Dimension Cです。

「BOSSペダルは音作りがとても簡単なので、創造性が高まり、気軽に実験することが可能です」

歴代で一番好きなBOSSペダルは何ですか?

ギタリストとしては、1980年代オリジナルのDC-2 Dimension CとDD-20 Giga Delayのどちらかですね。TE-2 Tera Echoもとても楽しいです。でもギター・テックとしては、TU-3 Chromatic TunerかLS-2 Line Selectorが一番好きです。

BOSSの名機で復活してほしいものはありますか?

FB-2 Feedbacker/BoosterやRV-3 Digital Reverb/Delayの復活を見てみたいですね。どちらも素晴らしいペダルです。

BOSSペダルが使われたレコーディングで一番好きな瞬間は?

NirvanaのレコードでDS-1 Distortionが使われている場面ならどれでも。

Mogwai and IDLES guitar tech Gavin Maxwell.

無人島に持っていくBOSSペダル3つは何ですか?理由も教えてください。

場合によりますね。もし私が島にひとりきりならチューナーは必要ありませんが、不運にも誰かが一緒にいたら必要になるでしょう。だからこう言っておきます。ひとつは TU-3 Chromatic Tuner を JB-2 Angry Driver に繋ぎ、そのあとに DD-20 Giga Delay を繋ぐ方法。もうひとつは JB-2 Angry Driver を DD-20 Giga Delay に繋ぎ、そのあとに TR-2 Tremolo を繋ぐ方法です。

エフェクターの実験的な使い方について、何か提案はありますか?

ディレイを重ねるのはいつでも楽しいですね。そして、エフェクトをパラレルで分岐させる世界に踏み込めば、可能性は無限に広がります。

「正しく電源を供給することは絶対条件です」

ペダルボードの組み立てでのコツはありますか?

正しく電源を供給することは絶対条件です。ペダルを接続する際は、標準的な5〜6mmのシールドよりも細い径のケーブルのほうが扱いやすいです。また、全てをしっかり固定すること。そうすれば見た目もスッキリし、スペースも節約できます。

それから、3M Dual LockはVelcroと同じではないことを覚えておいてください。3M Dual Lockは少量使えば十分で、そうしないとペダルをボードから外すのに何時間もかかってしまいます。

エフェクト・ペダル市場の現状をどう見ていますか?

年々勢いを増しているように見えますし、このまま長く続いてほしいですね。

Rod Brakes

BOSSのブランド・コミュニケーションおよびコンテンツ企画担当。過去にはGuitar WorldやMusic Radar、Total Guitarを始めとする数々の音楽メディアでの執筆経験があり、アーティストや音楽業界、機材に関する幅広い知識を持つ。彼自身も生粋のミュージャンである。