ディレイはギタリストに欠かせないエフェクトのひとつであるだけでなく、他のエフェクトと組み合わせて使うことで、大胆かつ実験的な新しいサウンドを生み出すことができます。この記事ではディレイと相性の良いエフェクターについて紹介します。
ディレイが果たす役割
通常ペダルボードの後段に入るディレイ・ペダルは、機能的にはそれまでに通ったエフェクターから受け取ったサウンドを遅らせて再生することにありますが、アグレッシブなファズや金属的なコーラスを、スラップバック・ディレイやロング・ディレイによって聴きやすく使いやすいトーンに変え、ミックスの中でサウンドを馴染ませることも大きな役割の1つです。
他のエフェクターとの組み合わせ例
ドライブ・ペダル
まずはベーシックな組み合わせについて見ていきましょう。活き活きとしたリード・サウンドを作るには、DS-1WやBD-2Wのようなドライブ・ペダルとの組み合わせが最適です。ディレイは歪んだドライブ・トーンをミックスに馴染ませ、そこに個性を加えることができます。この伝統的な組み合わせは数え切れないほど様々な楽曲で使われており、例えばPink Floydの “Shine On You Crazy Diamond, Pts.Ⅵ-Ⅸ”を聴けば、その効果がはっきりと分かるでしょう。
推奨の組み合わせ
BOSS DD-8 × DS-1W
BOSS RE-2 × BD-2W
リバーブ
ディレイとリバーブは、クラシックなカントリー・サウンドから幻想的なサウンドスケープまで、あらゆるジャンルに対応する組み合わせです。ディレイがペアとなるエフェクトの前に配置される、数少ない組み合わせの1つでもあります。ディレイにRV-6のようなリバーブを組み合わせると、ディレイが本来持つリズム要素を超えた優雅なサウンドを生み出すことができます。
推奨の組み合わせ
BOSS DD-8 × RV-6
BOSS DD-500 × RV-500
「ディレイとリバーブは、クラシックなカントリー・サウンドから幻想的なサウンドスケープまで、あらゆるジャンルに対応する組み合わせです」
ディレイ・ペダルの二段掛け
ディレイ・ペダルの二段掛けも、サウンドの幅を広げる良いアイディアです。ディレイ・タイムが異なる2つのディレイを重ねることで、魅力的なリズム・バリエーションを生み出すことができます。特に異なる音価を組み合わせた場合に有効で、例えば3連符のディレイと4分音符のディレイを組み合わせると、付点8分音符の混じる独特のリズムになります。
推奨の組み合わせ
BOSS DM-2W × RE-202
- BOSS DD-200 × TE-2
トレモロ
ディレイとトレモロはどちらもリズム的なエフェクトであるため綿密な設定が必要で、設定を間違えれば耳障りでタイム感のないサウンドになりかねませんが、正しく使えばプレイヤーの想像力次第で豊かなトーンを生み出します。また、適度なスピードのトレモロと短いスラップバック・エコーという使い方であれば、それほど厳密な設定は必要ありません。
推奨の組み合わせ
BOSS DM-2W × TR-2
- BOSS DD-8 × TR-2
「エクスプレッション・ペダルを対応するディレイと組み合わせて使えば、ディレイ・サウンドに擦弦楽器のような膨らみを作ることができます」
エクスプレッション・ペダル
EV-30等のエクスプレッション・ペダルに対応するディレイと組み合わせて使えば、ディレイ・サウンドに擦弦楽器のような膨らみを作ることができます。ギタリストがソロで即興演奏できるような場面で特に効果的で、フィードバックとエフェクト・レベルを高く設定することで、シンセサイザーのように広大な音の壁を生み出します。
推奨の組み合わせ
BOSS DD-8 × EV-30
- BOSS DD-200 × EV-5
アンプとの組み合わせ
アンプとの組み合わせ
アンプのゲインを利用した歪みとディレイを組み合わせたいとき、ディレイ・ペダルをアンプの前段に接続すると、フィードバック音がぼやけてしまいます。特にスラップバックのようにディレイタイムが短いセッティングでは、濁った音になり使い勝手が悪くなります。
人によってはそれが望ましいトーンになるかもしれません。深く歪ませたアンプの前段でディレイを使うと、ゴージャスでローファイなソロ向けのトーンが生まれます。しかし、クリアなディレイ・サウンドが欲しいのであれば、他の選択肢を検討しましょう。
「オーバードライブやプリアンプ・ペダルをアンプの代わりとしてディレイの前で使うことで、ディレイのコントロールと明瞭さの両方を実現します」
ペダルボードを中心とした音作り
アンプをクリーンに設定し、エフェクターで作ったサウンドをできるだけ忠実に表現する、いわゆる「ペダル・プラットフォーム・アンプ」として使うことで、ディレイやリバーブなどの空間系エフェクターをクリアに扱うことができます。その場合、オーバードライブやプリアンプ・ペダルをアンプの歪みの代わりとしてディレイの前段で採用することになります。
このアプローチは、場所によって異なるアンプを使う必要があるプレイヤーや、大規模なペダルボードを構築しているプレイヤーに特に適しています。クリーン・アンプはトーンへの影響を最小限に抑えて信号を単純に増幅するPAのような役割を果たし、プレイヤーは足元で全てをコントロールします。アンプがクリーンであるほど、ディレイのフィードバックはよりクリアになります。
エフェクト・ループと4ケーブル・メソッド
アンプの歪みを活用したい場合は、ディレイをアンプのエフェクト・ループに接続するか、4ケーブル・メソッドを用いるという方法もあります。
ディレイ・ペダルをアンプのエフェクト・ループに通すことで、プリアンプとパワーアンプの間にディレイが入り込む形になります。これにより歪みがディレイの前に移動し、明瞭なディレイ・サウンドを得ることが出来ます。
マルチ・エフェクト・スイッチャー
ES-5、ES-8、MS-3などのスイッチャーをペダルボードに組み込めば、ボード上の複数のペダルのON/OFFを同時に操作できるようになります。さらにDD-200とDD-500のようなMIDI機能を備えた高機能ペダルであれば、スイッチャーの操作だけでDD-200やDD-500の内部プリセットまで同時に変更することができます。これにより、ユーザーは演奏中に細かい操作をすることなく、複数のディレイ・サウンドにアクセスすることができます。
「スイッチャーを使えば、ボード上の複数のペダルのON/OFFを同時に操作できるようになります」
無限大のサウンド・アイディアを生み出すツール
ディレイはプレイヤーの想像力次第で無限大の選択肢をもたらすツールです。シンプルにオーバードライブと組み合わせるだけでも効果的ですし、よりこだわりたい人は複数のディレイ・ペダルを組み合わせることでより緻密なサウンドを生み出すこともできます。色々なアイディアを試して、サウンドの幅を広げましょう。