フェイザーは様々な用途に使用できるモジュレーション・エフェクトです。シンプルにクリーンなギターに掛けるだけでも、ありふれたコード進行が輝きだすことでしょう。ですが、他のエフェクターと組み合わせることで、新たなギター・トーンを見つけることができるかもしれません。フェイザーの魅力的な点は、ほとんどのエフェクターとの相性が良いことです。オーバードライブからリバーブまで組み合わせを選ばず、ギター・サウンドをパワー・アップし、幅を広げ、エキサイティングなものにすることができます。
ペダルを組み合わせる
モジュレーション・エフェクトであるフェイザーは、プレイヤーの組み合わせ方によって、いくつかの異なるエフェクト・チェーン内の位置で機能します。オーバードライブとディストーションをフェイザーの前に置くと、歪み音を一段と持ち上げることができます。ディレイやリバーブはフェイザーの後に置くと、音が濁ることなくクリアで広がりのある効果をえることができます。
PEDAL COMBINATIONS
オーバードライブ
フェイザーとオーバードライブはとても人気がある組み合わせです。フェイザーはギター信号の高音域に作用し、位相をずらすことで、オーバードライブに極端な倍音の変化を生み出します。現代音楽では、この組み合わせの例を数えきれないほど見つけることができます。Led Zeppelinの“The Rover”やOzzy Osbourneの“Bark at the Moon”では、ゆっくりと波打つフェイザーとオーバードライブの、王道的なコンビネーション・サウンドが聞こえてきます。
オーバードライブとフェイザーを組み合わせたサウンドで最も有名なのは、Eddie Van Halenの”Eruption”で披露される派手なリード・トーンでしょう。タッピング・プレイにオーバードライブとフェイザーを組み合わせ、強めに効果をかけつつもRATEは遅めに設定したトーンになっています。シンプルかつ効果的で、“ロックンロール”の神髄を感じさせられます。
おすすめのペアリング
- BOSS PH-3 × DS-1W
- BOSS PH-3 × BD-2W
ファズ
フェイザーは過激でアグレッシブなバズを持つモダンなファズにも素晴らしいアクセントを加えることができます。現代のファズは矩形波に近い波形を生み出します。サウンド的には心地よい反面、ダイナミクスを損なわれ、他の楽器とミックスする際には、音の抜けが悪くなってしまう場合があります。フェイザーによって音に揺らぎを加えることで、特定の周波数帯域が強調され、アンサンブルでも埋もれないサウンドにすることができます。
この場合、フェイザーのDEPTHを比較的高めに、RATEを低速に設定します。フェイザーの連続的な動きがファズ効果を高め、非常に興味深い新しいシンセのような音色を鳴らすことができます。
おすすめのペアリング
- BOSS PH-3 × FZ-1w
「フェイザーは過激でアグレッシブなバズを持つモダンなファズにも素晴らしいアクセントを加えることができます。」
オクターブとトレモロ
ワイルドなシンセ・サウンドを作りたいギタリストにとって、フェイザーは素晴らしいエフェクターです。オクターブ・ペダルやトレモロと一緒に使えば、創造力を無限に膨らませることができます。
この組み合わせでは、最初にオクターブ・ペダル、次にトレモロ、最後にフェイザーの順にエフェクトを配置します。オクターブ・ペダルは、サブ・オクターブのLEVELを最大にし、ドライ・ギターの信号は完全にカットします。この設定により、ギターらしいダイナミクスが失われ、シンセ・ベースのような音色になります。次に、トレモロのRATEを中間に設定し、DEPTHを時計回りに回し切ります。この場合、トレモロ・エフェクトはシンセサイザーの脈打つアルペジエーターを再現します。最後にフェイザーのDEPTHを高く、RATEを中間に設定します。この設定におけるフェイザー・ペダルの役割は、シンセサイザーのLFOの段階的に重なり合う動作を再現することです。
ペダルを3つ全てかけた状態で、トレモロのパルスに合わせて単音のフレーズを弾いてみてください。ギター・シンセサイザーの完成です。
おすすめのペアリング
- BOSS PH-3 × OC-5 × TR-2
ディレイ
フェイザーはディレイ・ペダルに高揚感を与え、エフェクトを拡張するパワフルなペダルです。2つのエフェクターを併用することで、スペーシーでアンビエントな質感を作ることができます。IncubusのMike Einzigerは、頻繁にこの組み合わせを使うギタリスト代表です。
Einzigerが使う定番の手法は”ボリューム・ロール”です。ギターのボリュームを絞った状態でコードを鳴らし、その後にゆっくりとボリュームを上げていき、膨らみのあるエフェクトを作ります。この方法はディレイの高いFEEDBACKとEFFECT LEVEL、フェイザーのDEPTHと中位のRATEと相まって、サイケデリックな曲に合うドリーミーな音色を生み出します。
おすすめのペアリング
- BOSS PH-3 × RE-202
- BOSS PH-3 × DM-2W
リバーブ
SF的な広大な残響の音像を作り出すのに最適な組み合わせが、フェイザーとリバーブです。リバーブ・エフェクトの広大で幽玄なエコーとフェイザーの舞い上がるようなウェーブを掛け合わせることで、ギターをまるで別次元から来たかのようなサウンドにすることができます。Lee “Scratch” Perryによるアンビエントなダブやレゲエのリミックスでもよく使われる組み合わせです。フェイザーとディレイのコンビのように機能しますが、リバーブを前後どちらに置いても問題ありません。
フェイザーをリバーブの前に置くと、より穏やかな効果が得られます。フェイザーを約8時方向に設定し、DEPTHをほぼ全開にしてください。アンビエントなリバーブ・エフェクトの下に、非常にゆっくりと変化する波が現れます。サウンドスケープの質感を最大にするために、リバーブのEFFECT LEVELとTIMEを高く設定します。
「SF的な広大な残響の音像を作り出すのに最適な組み合わせが、フェイザーとリバーブです」
フェイザーをリバーブの後に配置すると、フェイザーを中心とした、より過激な効果が得られます。フェイザーがリバーブの複数のエコーに、より直接的な影響を与えます。フェイザーを効かせるには、フェイザーのDEPTHを控えめにしてください。その結果、アンビエントな雰囲気は薄れ、SF的な雰囲気が強くなります。非常に効果的でオルタナティブな音色の完成です。
おすすめのペアリング
- BOSS PH-3 × RV-6
- BOSS PH-3 × RV-500
まるでスイスのアーミー・ナイフのようなモジュレーション
例えるならば、フェイザーはまるでスイスのアーミーナイフのように多用途なモジュレーションです。オーバードライブの緩やかなリフトにも、ベース・シンセの灼熱のウェーブにもなり、さまざまな状況で効果的に機能します。オクターブ、ディレイ、リバーブ、さらには他のフェイザーと組み合わせれば、高揚感のあるギター・サウンドを作り出すことも可能です。ペダルボードの必需品であり、ギタリストにとって手放せなくなるアイテムと言えるでしょう。