ベーシストの間でよく語られるトピックの1つに、エフェクターの接続順があります。「最適なエフェクターの並び」「コンパクト・エフェクターをどう繋げるべきか」という話題は、スタジオやリハーサル室でたびたび論争を巻き起こしていることでしょう。果たして、どの接続順が「正しい」のでしょうか?幸いにしてそこに正解はなく、自分が正しいと感じられ、かつ追い求めるサウンドにとってベストであればそれで良いのです。とはいえ、一般的に広く認められた、できるだけ音色を損なわない接続順というものは存在します。 BOSS KATANA Bass とBOSS TONE STUDIOのプラットフォームを例に見ていきましょう。
シグナル・チェインとは何か?
シグナル・チェインとは、ベース、エフェクター、アンプを接続する順番のことです。ほとんどのベース・プレイヤーは、ベースからエフェクターへ、エフェクターからアンプへという伝統的な繋ぎ方となっているでしょう。
一般的なベース用エフェクトの接続順
ここからエフェクターを細分化していくと、下記の順番が一般的となります。
ベース⇒チューナー→コンプレッサー→ワウ/フィルター→オクターブ→オーバードライブ/ディストーション/ファズ→ノイズ・サプレッサー→イコライザー→モジュレーション→ボリューム→ディレイ→リバーブ⇒アンプ
なぜこのような順番になるかを理解するためには、エフェクターの種類とそれぞれの特徴について見ていく必要があります。
「ベースとアンプを直接繋ぐ人もいれば、多彩な音色を得るために様々なエフェクターを使う人もいます」
ベース用エフェクターについて
ベース用エフェクトを使うとき、そこに厳密なルールはありません。ベースとアンプを直接繋ぐ人もいれば、多彩な音色を得るために様々なエフェクターを使う人もいます。ベーシストが利用するエフェクターの種類と、その接続順について見ていきましょう。
チューナー
チューナーはエフェクト・チェインの最初に置き、ベースからもっともクリーンな信号を受けてチューニングを行います。もし他の場所に置いてしまうと、正確な音程が検出できなくなります。広く親しまれているチューナーとしてBOSSのコンパクト・エフェクター TU-3をご紹介しておきます。
コンプレッサー
コンプレッサーは常にチューナーの次に置き、音の粒を揃えることで、音量の大小によってこの先のエフェクターのかかり具合が変わってしまうことを防ぎます。コンプレッサーの利点については、前回の記事「ベース・アンプ・ガイド – サウンドメイキングの基本」で詳しく解説しています。
ワウ/フィルター
ここではワウ・ペダルのほかにエンベロープ・フィルターやローパス/ハイパス・フィルターも含めて、通常はエフェクト・チェインの3番目に配置します。これらはできるだけピュアな信号を基に、最初にベース・サウンドへの色付けを行うべきエフェクトです。これより後に配置すると、ベース本来のサウンドではなくエフェクト音を操作することになってしまうからです。
「オクターバーは信号を2つに分割し、そのうち1つを使って元の信号より低い、または高い音程を作り出して合成します」
オクターバー
オクターバーは信号を2つに分割し、そのうち1つを使って元の音より低い、または高い音程を作り出し合成することで、まるで二人のベーシストが全く同じフレーズを異なる音程で弾いているようなサウンドを生み出します。このエフェクターはできる限り原音に近い信号を受けられるよう、早めに接続します。
オーバードライブ/ディストーション/ファズ
次はオーバードライブ/ディストーション/ファズとなり、ここに配置することで歪みがここから先のエフェクターに影響することになります。リバーブやモジュレーションをこれより前に置いてユニークなサウンドを得る手法もありますが、基本的には歪み系エフェクトはモジュレーションやディレイが掛かる前の、音色を作る最後のエフェクトとなるべきものです。
ノイズ・サプレッサー
ディストーションやヴィンテージ・スタイルのファズなど、深い歪みがかかるエフェクトを使用すると不要なノイズが発生することがあり、それを取り除くためにノイズ・サプレッサーを配置します。その他にもアンプのセンド/リターンによるエフェクト・ループで利用する使い方もあります。
イコライザー
イコライザーはしばしばここに配置されます。というのも、ディストーションやファズを使うと低音域が失われがちなので、それを補正するために使われます。そのほかエフェクト・チェインの最後、つまりアンプの直前に置く人もいます。
KATANA BASS AMPはウェット/ドライ信号のそれぞれに、つまり原音とエフェクト音に異なるイコライザーを掛けることができます。これにより、ベース本来の純粋なサウンドを維持しつつ、イコライザーを掛けた太く豊かなエフェクト音を得ることができます。
「コーラス/フェイザー/フランジャーは、音色というより音そのものを変化させます」
モジュレーション
次はモジュレーションです。コーラス/フェイザー/フランジャーはまとめてモジュレーションと呼ばれており、音色というよりもむしろ音そのものを変化させるため、ディストーションやファズといった音色を作るエフェクトよりも後とするべきです。モジュレーション系エフェクトは、ここまでで作られた音色を加工・変調する役割を果たします。もしファズやオーバードライブをフェイザーなどの後に置くと歪みの掛かり方が変化し、モジュレーションの効果も軽減されてしまいますが、そのサウンドを好んで使うプレイヤーもいます。
ボリューム・ペダル
ボリューム・ペダルはディレイやモジュレーションの前で使用するのが最適ですが、他にもエフェクト・チェインの最後に配置することで、すべてのエフェクターの音量をコントロールする使い方もあります。
ディレイ/エコー/リバーブ
ディレイ/エコー/リバーブは信号を利用して全体の音像を演出するエフェクトなので、エフェクト・チェインの最後に置きます。例えばもしこれらのエフェクトをファズの前に置いてしまうと、サウンドのコントロールは難しくなってしまいます。ディレイやリバーブはサウンドの最終的な決定権を持つべきエフェクトといえます。
ここまでご紹介したエフェクターを一つ一つコレクションしていくのも楽しいですが、決して安くはありません。
「KATANA BASS AMPであれば、少ない予算でこれら全てのエフェクターから欲しいものを選択することができます。」
KATANA BASS AMP内蔵エフェクトについて
KATANA BASS AMPには、ディストーション、ファズ、オーバードライブ、モジュレーション、ディレイ、イコライザー、ワウ、オクターブ、コンプレッサーなど、BOSSエフェクターから厳選された合計60種類以上ものエフェクトが内蔵されています。
KATANA BASS AMPのブレンド機能
ここまでの解説で、何度かブレンド機能について触れました。『ブレンド』とはウェット音(プリアンプやエフェクターを通った音)とドライ音(プリアンプやエフェクターを通っていない音)を組み合わせて音作りする際に使用される言葉です。
もちろんKATANA BASS AMPもブレンド機能を搭載しており、ウェット音とドライ音を混ぜることが可能です。音の存在感や豊かな低音域を維持しながら、そこにエフェクトを重ねたい場合に役立ちます。
「もちろんKATANA BASS AMPもブレンド機能を搭載しており、ウェット音とドライ音を混ぜることが可能です」
もしエフェクトをいくつも重ねなった重厚感のある音を作りたいときは、そこにドライ音をブレンドしてみましょう。とりわけディレイやリバーブ、モジュレーション系のエフェクトを使用したとき、立ち上がりの早さとキレを出音に加えることができます。
さらに理想の音に近づけるために、BOSS TONE STUDIOを活用してみるのもお勧めです。ドライ音にローパス・フィルターを、エフェクト音にハイパス・フィルターを掛けることで、高音域によく掛かる歪みエフェクターの効果と、ベース・サウンド本来の低音域の力強さの両方が保たれます。
エフェクト・ループを活用しよう
KATANA BASS AMPはセンド/リターン端子によるエフェクト・ループを搭載しています。ディレイやコーラスといった空間系の外部エフェクターを使いたいときにとりわけ有効な機能です。
エフェクト・ループとは、プリアンプ部(音色を得る場所)とパワーアンプ部(音量を得る場所)の間にエフェクトを挿入できるようにするための接続機能のことを指します。
KATANA BASS AMPは3種類のプリアンプを搭載しており、エフェクト・ループを使えばプリアンプをシグナル・チェインの最終段とすることなく、さらにその後に外部エフェクターを接続することができます。これはとりわけディレイやリバーブを使う際に有効で、プリアンプとパワーアンプの間に接続することで、ディレイ音が色付けされることなく、素直なプリアンプのサウンドだけを繰り返すことが可能です。
BOSS TONE STUDIOによるシグナル・チェイン
KATANA BASS AMPの強力な特徴の1つとして、2種類のシグナル・チェインを使い分けることで、幅広いエフェクトの組み合わせやルーティングを構築することができます。実際に見ていきましょう。
「KATANA BASS AMPでは2種類のシグナル・チェインを使い分けることで、幅広いエフェクトの組み合わせやルーティングを構築することができます」
KATANA BASS AMPのシグナル・チェイン:CHAIN 1
このシグナル・チェインでは下記の順番となります。ベース⇒コンプレッサー→ペダルFX(ペダル・ワウ/オクターブ)→FX1(モジュレーション系エフェクト/ベース・シンセサイザー)→ドライブ
ここでプリアンプ/ドライ・セクションに入り、KATANA BASS AMPのプリアンプを通した音のみを用いるか、プリアンプを通さないドライ音を混ぜるかを調整して次のセクションに送ることができます。
そこから更に、ノイズ・サプレッサー→フット・ボリューム・ペダル→センド/リターン→FX2(ディレイ/リバーブ)となり、FX2の後に音量を得るためのパワーアンプ部に入ります。
このシグナル・チェインの興味深い点は、FX1セクションがプリアンプ部の前に配置されていることです。これはつまり、アンプの前にコンパクト・エフェクターを配置したときと同じように、FX1がアンプへ影響を与えるということです。
KATANA BASS AMPのシグナル・チェイン:CHAIN 2
このシグナル・チェインではFX1 / FX2といったモジュレーションやディレイのブロックがプリアンプよりも後段に配置されており、よりピュアな信号を空間系に送ることができます。
ベース⇒コンプレッサー→ペダルFX(ペダル・ワウ/オクターブ)→ドライブ
ここでプリアンプ/ドライ・セクションに入ります。CHAIN 1と同様に、プリアンプに入る信号とドライ音のブレンドを調整することができます。
そこから、ノイズ・サプレッサー→フット・ボリューム・ペダル→センド/リターン→FX1(モジュレーション系エフェクト/ベース・シンセサイザー)→FX2(ディレイ/リバーブ)と続きます。
このシグナル・チェインの大きな利点は、モジュレーションと空間系エフェクト(FX1/FX2)をプリアンプの後となるエフェクト・ループの中に組み込めることです。つまり、これらのエフェクトが歪んだ音を基にする代わりに、プリアンプでの音作りには影響を与えません。
GA-FCにエフェクトをアサインする
BOSS TONE STUDIOにはすぐに使えるプリセットが用意してあり、 GA-FC フットスイッチを使えば特定のエフェクトのオン/オフを切り替えることや、6つの異なるトーン・セッティングを足元で切り替えることが可能です。言わば、たった1台のベース・アンプで6種類のアンプやエフェクターの組み合わせを使い分けられるようなものです。
BOSS TONE STUDIOでエフェクトを設定・調整する
エフェクト設定の例として、ドライブ・エフェクトを調整したい場合は下記の手順となります。
- 調整したいTONE SETTINGを選択
- 「DRIVE」をクリック
- どのエフェクトを使用するかを選択する
- 音色を調整する
「高い汎用性と多彩な音色によって、KATANA BASS AMPは頑丈で信頼性の高いコンボ・アンプから、幅広いエフェクトとアンプの選択肢を提供します」
GA-FCでエフェクトのオン/オフを切り替える
BOSS TONE STUDIOにはバンクA/Bでそれぞれ3つのプリセットが用意されており、これらのプリセットはそのまま使用することも、そこから自分の好みに調節することができます。あるいはアンプ本体のパネル上のセッティングを利用することもできますが、この場合はUSBを抜くと設定は元に戻ってしまいます。
GA-FCでバンクを切り替えるには、フットスイッチのCH 1~CH 3のいずれかが選ばれている状態で、PANELボタンをランプが点滅するまで押し続けてください。その後にCH1/CH2/CH3のプリセットを選択します。使いたいプリセットが選択できたら、EFFECTSスイッチをオンにすることで、そのプリセット内で利用しているエフェクトのON/OFFを切り替えられるようになります。
EFFECTSスイッチをONにした場合に、切り替えられるエフェクトは下記の通りです。
- CH1/COMPスイッチ…コンプレッサーのオン/オフ切り替え
- CH2/FX1スイッチ…FX1のオン/オフ切り替え
- CH3/FX2スイッチ…FX2のオン/オフ切り替え
- DRIVE/LOOPスイッチ…ドライブのオン/オフ切り替え
KATANA BASS AMPのパネルセッティングを使う
アンプ本体のパネル上のセッティングを利用するには、PANELボタンを押してください。GA-FC上での設定ではなく、アンプ側の設定が反映されます。
ベース用エフェクターの接続順とKATANA BASS AMPについて、理解を深めて頂けたでしょうか?高い汎用性と多彩な音色によって、このアンプは頑丈で信頼性の高いたった1つの筐体から、幅広いエフェクトとアンプの選択肢を提供します。