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BOSS V-Guitar Systemでのレコーディング

現代のギタリストは、さまざまな方法でレコーディングを行うことができます。ここでは、なぜ BOSS VG-800 がスタジオでの理想的なツールとなるのかを紹介します。

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T高品質なギター・サウンドを録音する方法は、実にさまざまです。もちろん、マイクを立てて録るという伝統的な手法もありますが、今ではそれに加えて、多彩な選択肢が用意されています。たとえば、BOSS KATANAアンプ、IR-2 Amp & CabinetIR-200 Amp & IR Cabinetペダル、Waza Tube Amp Expanderシリーズのリアクティブ・ロード・ボックス、さらにはGT、ME、GXシリーズのマルチ・エフェクターなど、いずれもプロフェッショナル・クオリティのDI(ダイレクト・イン)録音を可能にします。また、Roland JC-120 Jazz Chorusのようなアンプ・シミュレーター・プラグインも数多く存在します。

そんな中で、BOSS VG-800 V-Guitar Processorは、アンプ/キャビネットやエフェクトに加え、ギター本体やピックアップのモデリング機能まで搭載した、より柔軟で多機能なソリューションです。しかも、それぞれの要素を必要に応じて使い分けることも可能です。たとえば、あるセッションでエフェクトだけが必要であれば、ギターを直接接続し、その目的に合わせたパッチを作成することができます。逆に、アンプ・モデリングが不要な場合は、その機能を簡単にオフにできます。本記事では、VG-800がいかにレコーディングに最適なツールであるかをご紹介していきます。

30年の進化の集大成

2025年に登場したこの最先端ユニットは、30年にわたるV-Guitarの革新を土台に開発されました。ギターやアンプ、エフェクトを切り替えることなく、理想のサウンドを素早く得られるのが特長です。また、VG-800にはオルタネイト・チューニング機能が搭載されており、時間の限られたスタジオ作業の中で、大幅な時間短縮にもつながります。

このVG-800 V-Guitar Processorは、最新のGK-5 Divided Pickupとの使用を前提に設計されています。V-Guitar Systemにより、従来のギター機材では実現できなかった音色や演奏技法が手に入ります。VG-800を使用すれば、さまざまなギターのサウンド(さらにはギター以外のような音色までも)を再現できるうえ、弦ごとに音程を上下させることも可能で、ユニークなオルタネイト・チューニングを構築することができます。

さらに、VG-800は起動時にGUITAR MODEとBASS MODEを選ぶことができるため、GK-5B Divided Pickupを搭載したベースにも対応。ベース専用のモデリングやアンプなど、多彩な機能を活用することができます。

ディバデッド・ピックアップの互換性

VG-800は、次世代のデジタル・シリアルGK方式を使用するGK-5ディバデッド・ピックアップを搭載したギターとの使用を前提に設計されていますが、13ピンのアナログ接続を採用した従来のディバデッド・ピックアップとも互換性があります。BOSS GKC-AD GK Converterを使えば、13ピンGKピックアップのアナログ出力を、新しいデジタル・シリアルGK信号に変換し、接続できるようになります。

一方で、13ピン接続を採用している旧型プロセッサーをGK-5と接続したい場合は、BOSS GKC-DA GK Converterを使用することで、デジタル信号をアナログ信号に変換し、処理が可能になります。

あまり知られていないポイントですが、GK-5は静音性を重視して設計されています。実際、BOSS V-Guitar Systemでシングル・コイル・ピックアップのギターを再現した場合、本物のギターよりもノイズが少ないこともあります。これは特に、ノイズの影響が大きく出やすいスタジオ環境では非常に有効です。

「VG-800の優れたDIサウンドは、他の楽器やマイクとの音のかぶりを防いでくれます」

インスピレーションを途切れさせずに保つ方法

もう一つの大きなメリットは、VG-800にはレイテンシー(遅延)がないという点です。演奏時のフィーリングが非常に自然で、音の反応も直感的。多くのプラグインとは異なり、遅延によって演奏やテクニックが妨げられる心配はありません。

自宅スタジオでは、セッティングの切り替えが素早く行えることが、創作意欲を保つカギになります。機材に気を取られることなく、音楽制作に集中できるのです。VG-800のDIサウンドは、他の楽器やマイクとの音のかぶりを回避するのにも優れています。加えて、大きな音を出す必要がないことも、家族や隣人が近くにいる環境での深夜作業などでは大きなメリットとなります。

VG-800にはUSB端子が搭載されており、DAW(音楽制作ソフト)への直接録音やそのモニターに対応しています。DAWユーザーは、ディバデッド・ピックアップから弦ごとの音を未処理のままトラックに録音し、後でVG-800を通してリアンプすることも可能です。このような柔軟かつ革新的なワーク・フローにより、録音後に音作りをやり直すことができ、表現の幅が大きく広がります。

VG-800

録音における完全なソリューション

VG-800 のもう1つの大きな特徴は、高速でピッチをMIDIに変換できる機能です。これにより、ソフトウェアおよびハードウェアのシンセサイザーを直接演奏可能となり、自宅録音などギタリストにとって大きな制作ツールとなります。ただし、VG-800 のギター・モデリングは、このピッチからMIDIへの変換機能に頼っているわけではありません。あくまでシンセサイザーではなく、サンプリングではないサウンドがギターの弦の信号から生成されています。

とはいえ、ピッチからMIDIへの変換機能は、スタジオにおいてとても便利なオプションとなります。たとえば、モデリングされたギターのサウンドを録音していたオーディオ・トラックから、シームレスにソフトウェア音源のトラックへと切り替え、演奏を中断したり設定を変更したりすることなくそのままプレイを続けることができます。

「BOSS V-Guitar Systemは、多数のギター、アンプ、エフェクト/ペダルボード、ケーブル、電源機器を持ち運ぶ必要があるセッション・プレイヤーにとって、そのすべてを1台で代替できるポータブルなオール・イン・ワン・ソリューションです」

セッションにも最適なポータブル・ツール

ツアーなどでセッションを行う場合、V-Guitar Systemは最強のツールです。あらゆる状況に対応するには、GK-5 Divided Pickupを搭載したギター1本、シリアルGKケーブル、そしてVG-800 V-Guitar Processorを持っていけば十分です。

BOSS V-Guitar Systemは、多数のギター、アンプ、エフェクター、ケーブル、パワー・サプライといった、一式の機材の代わりとなるポータブルなオール・イン・ワン・ソリューションです。また、プラグインの使用頻度を減らす、あるいは完全に不要にすることもできます。

音色をPCで作成可能なアプリBOSS TONE STUDIOは、macOSとWindowsに対応しており、BOSSの公式ウェブサイトから無料でダウンロード可能です。パラメータの設定や編集、コントロール・オプションのカスタマイズなどを簡単かつ素早く行うことができます。

ギター・サウンドの可能性

VG-800の基本的な機能に慣れてきたら、よりユニークなサウンドメイクの選択肢を試してみるのもおすすめです。たとえば、特定の弦に異なるトーンを割り当ててハイブリッド楽器を作ることも可能です。DUAL GUITARやDUAL BASS機能でギターとベース、異なる楽器を組み合わせたサウンドも構築できます。シンセのようなパッド音、シタールやバンジョーのようなエミュレーションなど、その可能性は無限大です。これらの高度な機能については、別の記事でさらに詳しく紹介する予定です。

VG-800には膨大な数のプリセットを保存できるため、セッションに向けて事前に万全の準備をしておくことが可能です。あらかじめ準備しておけば、シングル・コイル/ハムバッカーのピックアップ、好みの変則チューニング(DADGADやドロップD、仮想カポ、バリトン・チューニングなど)、各種アンプ/スピーカーのタイプ、そして膨大な数のエフェクトを用意しておくことができます。

BOSS V-Guitar Systemは、あなたの機材一式を置き換えることも、または既存の機材を拡張することも可能です。つまり、お気に入りの楽器やペダル、アンプ、プラグインと自由に組み合わせながら、無限に広がるクリエイティブな選択肢を得ることができます。

Paul White

Sound on Soundで30年に亘って編集者を務めたのち、現在ではSOS Publicationsのエグゼティブ・エディターを担当。また、映画劇伴のようなチルアウト・ミュージックを制作するCydonia Collectiveのメンバーでもある。