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All About the BOSS DS-1

1978年のデビュー以来、DS-1は様々な音楽ジャンルで時代を彩るギタリスト達のプレイに火をつけてきました。DS-1が世代を超え愛されている理由を振り返ってみましょう。

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1977年、BOSSはコンパクト・シリーズの最初の3機種、“OD-1 Overdrive”、“PH-1 Phaser”、“SP-1 Spectrum”を発表、その後のギタリストの世界を大きく変えることになりました。そしてその翌年である1978年には“DS-1 Distortion”を発表。DS-1は今日まで現行モデルとしてラインナップされ続けています。BOSSによる画期的な回路設計が施されたDS-1は、タイトでアグレッシブなハイゲイン・サウンドをもつ世界で初めてのペダルとなり、歪みサウンドを再定義するにいたりました。数々のトップ・ミュージシャンにも導入されたDS-1は、現在まで約150万台を販売。コンパクト・シリーズの中で最も販売台数が多いモデルとなっており、現在でも愛用者を増やし続けています。

1978年:歪みの新時代の始まり

1970年代、エフェクト・ペダルの選択肢は現代ほど多様ではありませんでした。歪みペダルの大半はファズに分類されるもので、今日でも愛されている独特の魅力はあるものの、その名の通り“毛羽立ったような”サウンドでした。特にゲインが高いセッティングにすると、ブツブツと途切れるようなサウンドとなり、また低域は潰れてしまっていました。

BOSSはOD-1で“オーバードライブ”と呼ばれる新しいタイプの歪みサウンドを世に生み出しました。BOSS独自の非対称クリッピング回路を搭載し、チューブ・アンプ特有のクランク・アップしたサウンドを実用的な音量で再現することに成功したのです。OD-1とその後継機種であるSD-1は世界中のギタリストを虜にし、歪みペダルの世界に新しいカテゴリーを生み出しました。

BOSSのエンジニアはコンパクト・シリーズをさらに拡大するべく、当時市場に存在していたペダルを改善した、アグレッシブな歪みペダルの開発を決定しました。DS-1の開発に際し、当時最も一般的であった“トランジスタ”と“オペアンプ”という2つの増幅回路を1つのハード・クリッピング回路として統合し、クリアなサウンドとノイズ低減を実現したのです。

DS-1の開発に際し、当時最も一般的であった“トランジスタ”と“オペアンプ”という2つの増幅回路を1つのハード・クリッピング回路として統合し設計しました。

DS-1の設計が与えた影響

DS-1は強い個性と汎用性が両立しており、豊かな倍音を持つ鋭くエッジの立ったサウンドを生み出します。このペダルの心臓部である2ステージのゲイン回路は、リズム・プレイに最適なサウンドからサステインのある伸びやかなリード・トーンまで、セッティングによってあらゆるサウンドをプレイヤーにもたらすことが出来ます。

OD-1と同様に、DS-1の回路デザインは多くのペダル・ビルダーにインスピレーションを与え、その広範囲に及ぶ影響は数十年に渡り続いています。“Analog Man”や“Robert Keeley”など、ペダル・モディファイを行うビルダー達からも人気のある設計です。

JHS PedalsのJosh Scott氏もDS-1の大ファンの1人です。彼は自身のYouTubeチャンネル内の“History of Distortion”という動画の中で、『ディストーション・ペダルと言われて真っ先に思い浮かぶのがこのオレンジ色の筐体です。このペダルは私にとって、“ディストーション”の世界の象徴ともいえるもので、これ以上に“ディストーション”であるペダルは存在しません。このペダルが生まれた78年は本当に記念すべき年ですね。もしまだこのペダルを持っていない方がいたら、すぐに手に入れることをお勧めします。なぜならこのペダルは特別で、多くのロックの名盤を支えてきたサウンドですからね。』と語っています。

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ディストーション・ペダルと言われて真っ先に思い浮かぶのがこのオレンジ色の筐体です。このペダルは私にとって、“ディストーション”の世界の象徴ともいえるものです。 -Josh Scott(JHS Pedals)

汎用性の高いアグレッシブなサウンド

DS-1がロングセラーとなったポイントは、シンプルな操作性を持ちつつ、プレイヤーの様々な要望に応えることができる汎用性の高いキャラクターを持つことにあります。幅広いゲイン調節が可能なことで、様々なカラーを持つドライブ・サウンドを生み出すことができるのです。また、多くの歪みペダルがプレイヤーを悩ますノイズですが、DS-1は激しい歪みのセッティングの時も低ノイズを実現しています。

高域をカットするだけの一般的なトーン・コントロールとは異なり、DS-1のトーン・コントロールは1つのノブで高域と低域の両方を調節できる、“シーソー”のようなイコライザーを備えています。トーン・ノブを回すと、異なる帯域に対し同時にブーストとカットが行われ、プレイヤーの望む様々なサウンドを生み出すことができるのです。

DS-1は様々な機材の組み合わせで存在感を発揮できます。クリーンなアンプはもちろん、クランチの得意なアンプやハイゲイン・アンプと組み合わせても、素晴らしい歪みペダルとして活用することが可能です。また他の歪みペダルをブーストすることもできますし、他のペダルがブーストしたサウンドを受け取る際でも実力を発揮することができます。

全ての歪みペダルに言えることですが、どんなアンプと組み合わせるかによってサウンドは大きく変化します。DS-1は中低域が僅かに低減されているキャラクターを持つため、クラシックなMarshallやFender Tweedタイプのアンプなど中域が際立っているアンプとの組み合わせでは特に良い結果が得られるでしょう。FenderのBlackfaceやSilverfaceを使用している場合は、ノーマル・インプットを使用するか、可能であればブライト・スイッチをオフにしてみてください。とはいえ、得られるサウンドとフィーリングが気に入れば、どんなセッティングでも問題はありません。

高域をカットするだけの一般的なトーン・コントロールとは異なり、DS-1のトーン・コントロールは1つのノブで高域と低域の両方を調節できる、“シーソー”のようなイコライザーを備えています。

DS-1の系譜

アニバーサリー・モデル

DS-1のリリースから20年が経った1998年、BOSSコンパクト・シリーズの全世界販売数が600万台に達したことを記念して、ごく少数の特別なDS-1が制作されました。(なお2022年現在では、全世界販売台数は1,700万台を超えています。)北米とヨーロッパのBOSSディーラーへの記念品として制作されたもので、光沢のあるゴールド塗装に専用のディスプレイ・ケース、記念プレートが添えられており、非常に希少なBOSSペダルとなっています。

DS-1のデビューから40周年を迎えた2018年には、記念モデルDS-1-4Aをリリースしました。ブラックの筐体カラーにゴールドの文字色が施され、さらにゴールド・キャップのノブ、銀ネジを備えた特別なモデルになっています。DS-1-4Aは2018年のみの限定生産で、現在では中古市場のみでしか入手することが出来ません。

DS-1のデビューから40周年を迎えた2018年には、記念モデルDS-1-4Aをリリースしました。ブラックの筐体カラーにゴールドの文字色が施され、さらにゴールド・キャップのノブ、銀ネジを備えた特別なモデルになっています。

DS-1の関連モデル

1987年、BOSSは2つのモードを搭載したDS-2をリリースし、現在でも現行機種としてラインナップされています。Turbo Iモードはオリジナルに似たサウンドが得られますが、アタックが僅かに柔らかく、レスポンスがフラットになっています。Turbo IIモードはリード・プレイに最適になるよう、さらなるゲイン段とミドル・ブーストが追加されています。

2014年にはBOSSの独自技術であるMulti-Dimensional Processing(MDP)を搭載した先鋭的なペダル、”DS-1X Distortion”をリリースしました。この最新鋭の技術で入力信号をリアルタイムで解析、処理することで、それまでは得ることが出来なかったダイナミックなレスポンスとクリアなサウンドを実現しています。

BOSSはGT-1000、GT-1000CORE、GX-100、ME-80など様々なマルチ・エフェクターをリリースしており、その中にも多くのオーバードライブ、ディストーションのタイプが用意されていますが、もちろんDS-1サウンドも搭載されています。

DS-1W Waza Craft

そして2022年、BOSSは新たな”Distortion”をWaza Craftファミリーへ加えます。

DS-1Wは2つのモードを備えており、フル・アナログ・ディスクリートで新たに設計された回路を採用。スタンダード・モードではオリジナルDS-1サウンドが、カスタム・モードではよりミッド・レンジの押し出しが強いサウンドが得られ、TONEノブの効きもカスタム・モードのキャラクターを活かした調節が行えるように専用にチューニングされています。さらに、ピッキング時のレスポンスも素早くなり、出力も+6dBまでコントール幅を拡張しています。

DS-1Wは2つのモードを備えており、フル・アナログ・ディスクリートで新たに設計された回路を採用しています。

Noted Artists

Mike Stern 

アメリカの著名なジャズ・ギタリストであるMike Sternは、長年BOSSペダルを愛用しています。2006年、BOSS Users Groupで彼にインタビューを行った際には、こう語っています。

「BOSSのペダルは15年・・・いや20年近くは使っていて、とても気に入っています。DS-1は自分の全ての音源で使っているし、数々の他のアーティストとのレコーディングでも使用しています。そう、本当にいつも使っているのです。とても自分に合っているペダルだし、音も良い。だから、使い続けているのです。」

Joe Satriani 

Joe Satrianiは、アンプの前にBOSSのオレンジ色のペダルをセッティングしてきた長い歴史を持っています。彼がMusic Gear NetworkのYou Tubeチャンネルにアップされている最新インタビューで詳細に語っていますが、80年代に後半に”Surfing with the Alien”が大成功を収めた後、DS-1を使い始めたのです。

DS-1は自分の全ての音源で使っているし、数々の他のアーティストとのレコーディングでも使用しています。 -Mike Stern-

Satrianiは当時のことをこう語っています。

「私はずっと歪みペダルを使用していなかったんです。ソロ・アーティストとしてのキャリアが突然具体化するまではね。”Surfing with the Alien”をリリースした頃は、ソロ・アーティストとしてのキャリアは無く、ステージを歩いたこともなかったし、ショーを指揮したこともなかったんです。ですので、実現するための方法を探していました。ただヴィンテージのMarshallを持ちまわるような予算はなかったんです。本当に小規模なツアーでしたからね。」

最終的に、ギター講師からギターヒーローに転身した彼にとってDS-1を使用することこそがベストな解決策だったのです。

「ツアーを実現するための唯一の方法はDS-1という小さな箱のサウンドと、DS-1の力を発揮できるアンプを見つけることだったのです。」

「DS-1は過去のものも含めて世の中にあるペダルの95%より勝ると断言します。間違いのないペダルです。」 -George Lynch-

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Steve Vai  

レジェンド・ギタリストの1人、Steve Vaiは、DS-1を含めて長年のBOSS、Rolandユーザーです。DS-1は初期の彼のトーンには欠かせないものでした。その後、彼は自身のシグネイチャー・モデルを使用しましたが、そのペダルもDS-1の影響を受けたものでした。しかし、彼の長年のギター・テックであるThomas NordeggはBOSS Users Groupにて次のように語っています。

「99年以降も彼はDS-1を使っていましたよ。DS-1は彼のメイン・ペダルですからね。いつまでも使い続けるのではないかな。」

George Lynch 

Dokkenやソロ名義でも著名なGeorge LynchもDS-1愛好家の1人です。

「DS-1は80年代から一貫して使用している」、「DS-1は自分にとって基準となる歪みペダルなんだ」とBOSS Users Groupにて2004年に語っています。Lynchは自身がどれだけ機材マニアかを説明しながら、「私はeBayにおいてHendrixやBeck、Pageが使用したと言われるヴィンテージ・ペダルをも買い漁っています。しかしDS-1は過去のものも含めて世の中にあるペダルの95%より勝ると断言します。間違いのないペダルです。」と述べています。

「オレンジ色で3つのノブ。そうBOSSのDS-1。これこそが1989年の彼のサウンドです。」- Jack Endino on Kurt Cobain

Kurt Cobain (Nirvana) 

90年代が華々しく幕を開けると、DS-1はグランジという用語が定義される前から初期のグランジ・ムーブメントの中にありました。シアトルのスーパー・プロデューサーであるJack Endinoは、NirvanaのデビューLPである”Bleach”に使用された機材について、Guitar Worldで次のように語っています。

「“Bleach”で使用していたのは67年のFender Twin Reverbと、3つのノブがついたオレンジ色のペダル。そうBOSSのDS-1です。これが1989年の彼のサウンドだったのです。」

その後、KurtはDS-2 Turbo Distortionを愛用していたことでもよく知られています。

John Frusciante (Red Hot Chili Peppers) 

Red Hot Chili Peppers のギタリスト John FruscianteはDS-1そしてDS-2と深い関わりを持っています。2006年に行われたMusicRadarのインタビューでは、アルバム”Stadium Arcadium”において両ペダルが重要な要素であったと語っています。またFuture Sound Musicによる機材紹介ビデオでは、Johnが長年に渡って愛用してきたペダルが紹介されており、DS-1とDS-2に加え、他にも多くのBOSSコンパクト・シリーズが含まれています。

Mark Speer (Khruangbin) 

レトロフューチャー系アーティストであるKhruangbinのMark SpeerはDS-1の愛用者です。「私の好みのセットアップは、ギターを決してオフにしないCry Babyワウに入れ、そしてそこからBOSS DS-1に接続することです。」と、2018年にPremier Guitarにて明かしています。

近年追加して使用している、よりモダンな機材について説明した後に、「ワウとDS-1、それだけに戻れたらいいんだけどね」とも語っています。

Jim Bybee

BOSSとRolandのシニア・グローバル・コンテンツ・ライター。ギターから、編曲、プロデューサー、オーディオ・エンジニアまでこなす、機材オタク。