ライブに欠かせないDM-2Wのセッティング術

ライブでもレコーディング・スタジオでも、いつの時代もギタリストに愛され続けるディレイ・サウンド。DM-2Wは、クラシックなディレイ・ペダルに新しい風を吹き込みました。

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ライブに欠かせないDM-2Wのセッティング術

借り物から始まった物語

East Bay Ray「Holiday in Cambodia」の不吉なイントロを初めて聴いた時か、はたまた映画『デッドマン』でNeil Youngが奏でる映写幕と心を溶かすようなサウンド・スケープに心を奪われた時だろうか。どんなきっかけであったにせよ、ひとつだけ確かなことは、それ以降、私のギター・サウンドへの興味はエコーに導かれるようになったのです。

エコー・ペダルが手頃な値段で手に入るようになった頃、私はギター・ヒーローに倣って1978 Marshal  JMPとMaestro EP-3 Echoplexの組み合わせでライブを行っていました。当時のスペイシーなサーフ・パンク・バンドには最適でしたが、やがてその重量、コスト、メンテナンスに負担を感じるようになったのです。そこで私は、インプットに直接ギターを接続でき、信号をブレンドできる、よりステージに適した代替品を探し始めました。

“友人が押し入れから、ボロボロになったマゼンタ・カラーの小さなBOSSの箱を持ってきた”

幸運な出会い

幸運なことに、友人が押し入れで見つけたという、ボロボロになったマゼンタ・カラーの小さなBOSSの箱を持ってきてくれました。私が所有するRolandのヴィンテージ・シンセSH-101を用い、RATEとINTENSITYを操作してダブ・スタイルの演奏をすると素晴らしい音がしたのです。“これは使える!”と思いました。相棒は、快くその1981年製のBOSS DM-2を貸してくれましたが、結果的にそれは私が長年使ってきた唯一のペダルとなったのです。

この古いMarshallアンプは、リピートにおける周波数とわずかな飽和状態を完璧なまでに表現してくれました。ピッキング・ニュアンスを維持しながら、音に空間を作り出してくれたのです。私と同じ年に生まれたこのペダルには、本当に親近感を覚えたものです。DM-2は、スラップ・バックから魔法のような300msまで、不思議なことにライブで音が破綻するようなことはありませんでした。

皮肉なことに当時、ヴィンテージのDM-2はヴィンテージのEchoplexとほぼ同じ値段で売られていたのです。そのため、私がイギリスに引っ越す際、このペダルを友人に返さなければならなくなった時はとても残念な気持ちになりました。私のDM-2への思い入れは、一旦はついえることになるのです。

WAZAのBBD素子

それから何年も経ち、BOSSの「技WAZA CRAFT」シリーズからDM-2Wが発表された時、私はすぐさま購入しました。嬉しいことに、スタンダード・モードはかつての愛機と全く同じ挙動をするのです。加えて、このペダルには多くの新機能が搭載されていました。

ステレオ・マニアの私は、RATEを2時方向、INTENSITYを12時方向の手前に設定し、2台のアンプに直接接続することで音の厚みを楽しむことができるようになりました。これは、モジュレーションを使用せずに広がりのあるサウンドを得たい場合に最適な手法です。また、最大800msのディレイ・タイムをコントロール可能なカスタム・モードを搭載。エクスプレッション・ペダルを介したコントロールにも新たに対応し、これまでにないサウンドを堪能できます。

“お気に入りのDM-2Wの使い方は、INTENSITYを11時方向に設定して“発振”を繰り出すこと”

アイコンとも言える効果“発振”

私のお気に入りのDM-2Wの使い方は、INTENSITYを11時方向に設定して“発振”を繰り出すことです。このアイデアでは、アルペジオを弾きながらつま先でINTENSITYを上げて、コードを鳴らす時にかかとでREPEAT RATEを下げて、うねるようなサウンドを生み出します。

これは個性的でありながら音楽的な、アナログの“ワーミー”エフェクトに近いものです。さらに、この一見伝統的なエフェクターが、時間を超越した驚きに満ちていることを示す好例でもあります。40年近い歳月を、BOSSディレイ・ペダルの象徴的なDM-2とその後継機であるDM-2Wと共に過ごし、その愛情はさらに深まり続けています。

Fletcher Stewart

アメリカのテネシー州ノックスビル出身で、イングランドのノース・ヨークシャーを拠点に活動するライター。また、自身がフロントマンを務めるSub-Gentsでミュージシャンとしても活躍している。ReverbやTone Reportといったメディアで執筆を行っている。