Serial GK Partners: ESP

Serial GK Partners: ESP

1975年、当時世界でも稀有な本格的なオーダーメイド・ギター・メーカーとして誕生したESP。木材、パーツ選び、組み立て等、全工程を一切妥協することなく“本物”を追求し続ける、日本が世界に誇る屈指のギター・メーカーだ。今回、GK5-KITシリーズの登場にあたり、営業本部次長の中山智弘氏、新東京工場課長の上田哲氏、BIGBOSSお茶の水駅前店でリペアを担当する小出臨氏の3名に話を聞くことができた。

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1977年、記念すべき世界初のギターシンセRoland GR-500が発売。エポックメイキングな製品の登場により、先鋭的なプレイヤーたちによってギター表現は新たなステージへと突入することになる。その後、初のポリフォニック(和音)に対応、さらにシンセサイザー・ドライバーGK-2の登場によって自身のギターに搭載可能となるなど、正統な進化を遂げてきたギター・シンセ。2023年、新たに新方式のデジタル伝送を採用した「シリアルGK」の登場によりギターやベース本体に内蔵できるGK5-KITシリーズがラインナップ。音源コントロール用スイッチとボリューム、ノーマル・ギター出力機能の追加、7弦ギターへの対応など普遍性も追求。多様化する現代の音楽シーン、制作環境に対応するアイテムへとビルドアップしている。この記事では、GK5-KITシリーズを導入するギター/ベース・メーカーを取材。導入を決めた理由やGK5-KITシリーズが秘める可能性について話を伺った。

◾️ブランドが掲げるポリシー

中山 一言で言うと“本物”です。ユーザーに嘘をつかないというか、パーツ類も含めてプロがそのまま使えるようなものを目指しているのがESPブランドです。アーティストに提供するものも一般ユーザーに提供するものも同じという考えですね。

上田 ESPは1975年にカスタム・オーダーからスタートしていますが、そもそも当時はアーティスト相手にカスタムを行っているメーカーはなかったので、やはりカスタム・オーダーがポリシーではあります。

中山 ESP、E-II、EDWARDS、GRASS ROOTSなどの多くのブランドがありますが、ESPのフラグシップと言えばSNAPPERになります。日本と海外では需要が異なり、海外であればE-IIの人気が高いです。E-IIやEDWARDSは、いかにESPに追従できるかという形で作っています。SNAPPERは今年で誕生20年。ちょうど20周年モデルを出していくタイミングです。

上田 スペックで最も特徴的なのはCTヘッドです。普通であればヘッド面と指板は平行なのですが、SNAPPERは若干ヘッドの角度を落とし込むことで弦のテンションバランスを揃えつつ、テンションピンを不要とすることでチューニングの安定性が上がっています。

営業本部次長 中山智弘氏
新東京工場課長 上田哲氏

「ユーザーに嘘をつかないというか、パーツ類も含めてプロがそのまま使えるようなものを目指しているのがESPブランドです。」

◾️GK5-KITの導入について

中山 ESPは新しいものは取り入れたいという考えなので、面白いと思ったものにはついつい手を出しちゃうんです(笑)。

上田 カスタム・オーダーに注力しているので、柔軟に対応できる実績があるのも大きいです。

中山 例えば、当社がやらないと言ったとしても、フル・オーダーメイドでGK5-KITを載せたいというお客様が必ず出てくる。純粋に面白いと思ったので、過去にもレギュラー・モデル化したのもありますが、どちらにしても当社としては取り扱う製品ではあるなと。

上田 ただし、後付けで載せるのが難しいのがフロイドローズ・モデルです。フロイドローズはGKピックアップの設置場所が狭いので加工しないといけないですが、新設計するとなれば何でも対応できます。

中山 普通であればその対応も円滑にはいきませんが、ESPが他社と大きく違うのは営業本部と工場が直結していること。生産設備を持っているメーカーは意外と少なく、工場に出す手間もないですから、ここで「いいじゃん、ちょっと設計し直してよ」みたいな話があってもすぐに調整できるのが当社の強みです。

上田 今回の目玉として、GK5-KITを載せた6弦モデルのEDWARDS E-SNAPPER-GK-ALRを新たにレギュラー・モデルとして投入します。既存のモデルだと大改造になってしまうので新たに設計し直しました。設計し直した箇所はピックアップの位置や裏のザグリ。作業の中でポイントになったのはすっきりとした見た目。これまでの外付けとは違い完成品として内蔵するのであれば、ESPとして見た目のバランスやカッコ良さはすごく大事にしました。

中山 当然、見た目だけじゃなくて演奏性にも考慮しています。ただ載せるだけなら簡単ですが、ボリューム操作をしやすいようにしたり。SNAPPERは収まりが良かったので大改造なくできましたが、スイッチ位置の微調整はある程度考えました。

E-SNAPPER-GK-ALR

「見た目のバランスやカッコ良さを追求している」

◾️GK5-KITが示す新たな可能性

BIGBOSSお茶の水駅前店リペア担当 小出臨氏

小出 エレキ・ギターは進化していくものではあるけど、GK5-KITは進化系のひとつの終着点というイメージが自分の中にありました。エフェクターではなくMIDIキーボードでギターを鳴らすのが着想だと思うのですが、昨今はプラグインが主流で、音楽制作する上でもみんなMIDIキーボードを持っていて、シンセをやろうと思ったら正直プラグインでできてしまいますよね。だから“わざわざギターでやらなくても”とも思ったのですが、僕も普段はプライベートで音楽を作りますが、ギターしか弾けないんです。

確かに鍵盤は押せば鳴るけど、指板上の動きをすぐに鍵盤に落とし込めるわけではないので、それがギターでできるのがギター・シンセの大きなメリットなのかなと。あとは、ライブギアとして現場で使うことをかなり意識して作られています。当然、みんながみんなギターとキーボードとパソコンを持っていけるわけではないので、それがGK5-KITが搭載されたギター1本と音源のGM-800があれば完結するという意味ではすごく表現の幅を持たせてくれると思いました。自分の音楽の趣味にはなりますが、エレクトロニカやアンビエント、ポストロックなどの音楽ジャンルにおいても、ライブ時にキーボードに頼るのではなく人力で表現できるのも魅力です。これまでキーボードで出していた音をギターから出せるインパクトはすごくあると思うので、実際にステージに立つ人が現場で使うのがすごくいいと思いました。

上田 エレキ・ギター自体はトラディショナルで、大枠はこれ以上変わりようがないですよね。僕らは一生懸命丁寧に作り続けるしかないけれど、GK5-KITのように新しいものが出てくると可能性は広がります。若年層や斬新なアプローチでギターを考えている人たちにとってクリエイティブな道具になれば嬉しいですよね。ギター・シンセ自体は昔からあって、僕らはその“昔のほう”は知っていますけど、若い子たちにはびっくりする道具だと思うので反応が楽しみです。

中山 やろうと思えば一人でバンドができますもんね。あと、鍵盤は弾けないけどギターでコードがわかる人。要はバッキングの音を作るのにも最適なツールではあるので、今までギター・シンセを敬遠していた人も手を出しやすいんじゃないかなと思います。

上田 楽器の幅が相当広がると思うので、ぜひ新しい世界を楽しんでいただきたいですね。工場でGK5-KITを試奏していた時も、通常では出ない音がするので“何やってるんだろう?”ってスタッフ全員振り向きますから(笑)。当然、みんなすごく興味を持ちますよ。そういう意味では1回は弾いてみてほしいですね。そしたら欲しくなると思うんです。あと、前回と大きく違う点のひとつに7弦モデル用(GK5-KIT-G7)のラインナップが大きくて。昨今、特にE-IIでは7弦モデルのラインナップがすごく充実しているので、さらに可能性は広がると思っています。

小出 BIGBOSSでは予約制をとっていないので、少しでも興味を持った方はご来店いただき、ぜひお話だけでも聞きに来ていただければ。全国のBIGBOSS直営店ESPの各ショップにお気軽にお問い合わせください。

「ぜひ新しい世界を楽しんでいただきたい」

(Writing & Photography Motomi Mizoguchi)

BOSS Japan

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