Reverberations: PortisheadとBEAKのプロデューサーGeoff Barrow

Reverberations: PortisheadとBEAKのプロデューサーGeoff Barrow

アーティストが語るキャリアやサウンド理論、そしてBOSS RE-202へとつながるSpace Echoの歴史。

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伝統的なサウンド・メイクを心得えているミュージシャンを研究するということは、新しい音楽を生み出すミュージシャンにとって創造の源です。Geoff Barrowは、まさにそんなアーティストと言えるでしょう。ボーカリストのBeth GibbonsとギタリストのAdrien Utleyと共にしたPortisheadでの画期的な音楽制作から、BEAKの実験的なサウンド探求まで、Barrowは従来の枠にとらわれない表現を得意としています。そうしたシネマティックなアプローチが彼を映画音楽の世界へと導き、自身のレーベルInvadaからのレコード・リリースに至りました。Barrowは自分のキャリアやサウンドに関する理論、そしてBOSS RE-202に行き着いたSpace Echoとの長い歴史について話してくれました。

ルーツ  

Barrowはここ25年間で、音楽に多大な影響をもたらしてきた人物ですが、意外にも彼のキャリアは控えめにスタートしました。「当時、私は Hip-Hopに夢中でビート・メイクをしたり、ドラマーとして活動していました。それからCoach House Studiosというレコーディング・スタジオで働くことになり、音楽を生業にしている人達と交流を持つようになりました。そこには Hip-HopのDJの友人がいたり、レコード・コレクションをサンプリングさせてくれる仲間もいました。」これが、彼が自身のトラックを作るきっかけとなった瞬間でした。

「今、映画業界に携わっている人の多くがPortisheadを知っていて、バンドが活動していた当時はまだティーンエイジャーか、自分よりも若い世代でした」

GibbonsやUtleyと一緒にコラボレーションを重ねた後に、Portisheadを結成しました。マーキュリー賞を受賞したデビュー作『Dummy』は、今でも多くのアーティストに影響を与えています。Barrowの作曲、Utleyの演奏、Gibbonsのヴォーカルが合わさり、Portisheadは独自のサウンドを作り上げました。レコード板にダイレクト・カッティングで録音したサンプル版を作るなど、そうしたアナログ中心のアプローチが、彼らのプロダクションの要でした。

Portisheadの音楽に対する評価は、Barrowのキャリアを飛躍させました。「映画音楽への扉を開くための大きなキッカケでした。今、映画業界に携わっている人の多くがPortisheadを知っていて、バンドが活動していた当時はまだティーンエイジャーか、自分よりも若い世代でした」

「一番の目標は、アメリカのhip-hopをリミックスすることでした。誰にとっても栄誉なキャリアです」

一歩前進となるキャリア

リミックスは、プロデューサーにとっての新たなチャンスでした。BarrowはDepeche ModeやPrimal Screamといったミュージシャンの楽曲を手掛けることになります。他のアーティストの曲をリミックスすることについて、彼はこのように考えています。「リミックスという発想はイギリスの音楽シーンの一部でした。特に、しっとりとした曲をどれだけヘビーにアレンジできるかということが重要だったような気がします」

そのような背景の中で、彼がリミックスに取り掛かるのは、ある夢を叶えるためでした。「一番の目標は、アメリカのhip-hopをリミックスすることでした。誰にとってもそれは栄誉なキャリアですから」

業績を書き換える

Barrowが運営するInvada Studiosでは、映画業界におけるサウンド・トラック制作の大半を担っています。「今となっては、作曲は私の仕事です。Alex Garland監督の映画『Ex Machina』や『Annihilation』、TVドラマ『DEVS』の音楽を、全て私たちが手掛けています」  

Kyle DixonとMichael Steinの『Stranger Things』、Jonny Greenwoodの『The Power of the Dog』、Nick CaveとWarren Ellisの作品多数など、Invadaが手掛けるサウンド・トラックは高く評価されています。

映画音楽界の境界線が広がり、より多彩な音楽家たちにまで届くようになったことについて、Barrowは喜びを隠しきれません。「エクスペリメンタル・ミュージック・シーンの人たちが、この領域で活躍しています。こんなにも素晴らしい業績はありません」  

「エクスペリメンタル・ミュージック・シーンの人たちが、この領域で活躍しています。こんなにも素晴らしい業績はありません」

BEAKでのパフォーマンス

Portisheadと映画音楽の作曲は、Barrowの多彩な経歴の一部に過ぎません。彼は謎に包まれたトリオ、BEAKのメンバーでもあります。Invada recordsのクリスマス・パーティで結成されたこのグループは、見事なジャム・セッションを披露しました。BarrowはコラボレーターであるBilly Fullerについて、このように語っています。「これまで一緒にプレイしてきた人の中で、Billは最もクリエイティブで驚異的なミュージシャンです。彼の音楽は、夢のような場所からやってくるんです」

初めての即興ライブが刺激的な経験となり、Barrowは自分のスタジオでの再集合をメンバーに呼びかけました。「私たちが一番最初に演奏したものこそが、BEAKのファースト・アルバムに収録されている、あのライブ・レコーディングです。」綿密なPortisheadと自由自在なBEAKのアプローチには、明らかに対照的でした。「自由と喜びしかありません。ドラムを叩いている間、まるで子供の頃に戻ったような気分でした」

A Forest of Echoes

RolandのSpace Echoの雰囲気ある音色は、BEAKとPortisheadにとって欠かせない要素です。「本当に、たくさん持っています。Portisheadがライブする時には、ミックス卓に2台、ステージに6台のオリジナルのSpace Echoを置いています。どのバンドもそうするでしょう?」と、Barrowは言いました。BOSS RE-20もまた、彼らのお気に入りのエフェクターです。「よくバックアップ・ペダルとして使っていました。万が一、Space Echoが壊れてしまったら、BOSS RE-20に切り替えるんです。Space Echoと同じ数だけ、たくさんのペダルを使っていました」  

ツアーにおけるBOSS RE-202

現在、ライブの要となっているBOSS RE-202を、Barrowは絶賛しています。彼らは南米で開催されるPrimaveraのような人気フェスティバルにも出演するようになりました。「BEAKが演奏する時は、4台のペダルを使っています。ミックス卓に1台。BillとWillがそれぞれ1台使っていて、それから私も1台鳴らしています。BEAKのボーカルは、このエコーに包まれているんです」

「BEAKが演奏する時は、4台のペダルを使っています。ミックス卓に1台。BillとWillがそれぞれ1台使っていて、それから私も1台鳴らしています。BEAKのヴォーカルは、このエコーの中に潜んでいるんです」

操作してからすぐにエフェクトが反映されるのは、BOSS RE-202の魅力です。「ミュージシャンは、なるべく素早く音を切り替える必要があります。それを実現してくれるのがBOSS RE-202。上音を消したりベースを入れたり、そうしたいと思った時にそれができるんです。」BEAKのセットにおいて、以下の例を教えてくれました。「実際のボーカルにあまり音が被さっていない曲が、ひとつだけあります。しかしディレイのフィードバックが、ダイレクト音以上に返ってくる様にすることで、ディレイ自体がメイン・ボーカルの役割を果たします」 

そしてもうひとつ、Barrowが指摘してくれたBOSS RE-202の機能があります。「音を保存できるのは天の恵みですね。昔はいつも苦戦していました。今はただノブを回して保存して、それで完了」

「音を保存できるのは天の恵みですね。昔はいつも苦戦していました。今はただノブを回して保存して、それで完了」

Delay:必然性

Barrowにはディレイが果たす役割という、音楽におけるセオリーがあります。「私は音にも無意識と呼ばれるものがあると思っているんです。意図的ではない、そういったものが潜在的にあると思うんです。それが、私がつくっているもの。その中でもディレイは大きな役割を果たしているでしょうね。レゲエであろうと、Joe Meekのプロダクションであろうと。」

しかしながら、Barrowの栄冠はある1人のアーティストに託されました。「King Tubbyなしでは何も語れません。音色とパラメトリックEQを通じて再現される、彼のダブの中にあるラフでスピリチュアルな自然。私にとって、それこそがこの世界に存在する最も完璧な音楽です」

Ari Rosenschein

ローランドのグローバル・コンテンツ・マネジャー。妻と愛犬と共に、シアトルで生活。豊かな自然とコーヒーを満喫している。